30 / 98
8 私の目的
しおりを挟む
「成程、それで『ウィスタリア』に戻って来たかったのか?」
ジェイクが頷く。
「そうです。ここに来れば何があったのか、正確な情報が手に入るのではないかと考えたからです。それに、私の知る人たちがまだ残っている可能性もあるのではないかと思ったので」
「そうか。なら……会えて良かったな」
「はい。彼、エドモントは私が率いていた第三騎士団に所属していましたから」
「ベルンハルト家の話は聞いたことがあるよ。代々『アレス王国』の剣として国に忠誠を誓っていたのは有名な話だったからな」
頷くジェイク。
「そうです。ベルンハルト家に生まれた者は男女を問わず騎士にならなければなりません。私も例外なくそうでした。幼い頃から剣を持たされ、厳しい訓練を受けてきて戦場で戦ったこともあります。腕には自信がありました」
「なる程、ユリアナは強かったのか。だが……その割には……」
ジェイクは私の細腕をチラリと見た。彼の言いたいことは分かっている。
「はい、そうです。この身体と、以前の私の身体では……全く違います。今の身体では……恐らく剣を持つことも出来ないでしょう」
私は自分の細腕をじっと見つめる。水の入った二つの桶すら持つことが出来ないのだ。たとえ剣を持てたとしても、振るうことなど不可能だ。
「それで? ここから先はどうするんだ?」
「エドモントにはまだ自分の置かれた状況しか説明していません。これから彼に私がここへ来た目的を打ち明けるつもりです」
「君と家族を滅ぼした元凶を探し出して、報復することか?」
「……いいえ。私と家族の死に関わった者たち全員に報復します。私が別人の身体で蘇ったのは……無惨に殺された家族の無念を晴らす為に神様が与えてくれたチャンスではないかと思っています」
「そうなのか。まぁ、自分の命も家族の命も奪われたのだからな……俺には止める権利は無いが、今のその身体では剣を振るうことすら出来ないのだろう? どうするつもりなんだ?」
ジェイクはじっと私を見つめてくる。
「仲間を探します……」
「仲間?」
「はい、そうです。現に私はここでエドモントとラルフに再会することが出来ました。きっとまだ他に仲間が何処かにいると思うのです。それに、私達と共通の敵を持つ人々もここにいると思います」
「なる程……それじゃユリアナは報復をする為にこの地に残るんだな?」
「はい、そうです」
「そうか……」
ため息をつくジェイク。
「それで……ジェイクさんはどうしますか?」
「え? 俺か?」
「はい。これから私は自分の目的を達成するために危険に身を投じることになるでしょう。ときには犯罪めいた行為に手を染めるかもしれません……つまり、私といれば……」
そこから先は口を閉ざした。
本来であれば、仲間はひとりでも多いほうがいい。それにジェイクは行動的な人物だ。彼なら心強い存在になってくれるだろう。
けれど、その反面……私は命の恩人のジェイクを巻き込みたくはなかった――
ジェイクが頷く。
「そうです。ここに来れば何があったのか、正確な情報が手に入るのではないかと考えたからです。それに、私の知る人たちがまだ残っている可能性もあるのではないかと思ったので」
「そうか。なら……会えて良かったな」
「はい。彼、エドモントは私が率いていた第三騎士団に所属していましたから」
「ベルンハルト家の話は聞いたことがあるよ。代々『アレス王国』の剣として国に忠誠を誓っていたのは有名な話だったからな」
頷くジェイク。
「そうです。ベルンハルト家に生まれた者は男女を問わず騎士にならなければなりません。私も例外なくそうでした。幼い頃から剣を持たされ、厳しい訓練を受けてきて戦場で戦ったこともあります。腕には自信がありました」
「なる程、ユリアナは強かったのか。だが……その割には……」
ジェイクは私の細腕をチラリと見た。彼の言いたいことは分かっている。
「はい、そうです。この身体と、以前の私の身体では……全く違います。今の身体では……恐らく剣を持つことも出来ないでしょう」
私は自分の細腕をじっと見つめる。水の入った二つの桶すら持つことが出来ないのだ。たとえ剣を持てたとしても、振るうことなど不可能だ。
「それで? ここから先はどうするんだ?」
「エドモントにはまだ自分の置かれた状況しか説明していません。これから彼に私がここへ来た目的を打ち明けるつもりです」
「君と家族を滅ぼした元凶を探し出して、報復することか?」
「……いいえ。私と家族の死に関わった者たち全員に報復します。私が別人の身体で蘇ったのは……無惨に殺された家族の無念を晴らす為に神様が与えてくれたチャンスではないかと思っています」
「そうなのか。まぁ、自分の命も家族の命も奪われたのだからな……俺には止める権利は無いが、今のその身体では剣を振るうことすら出来ないのだろう? どうするつもりなんだ?」
ジェイクはじっと私を見つめてくる。
「仲間を探します……」
「仲間?」
「はい、そうです。現に私はここでエドモントとラルフに再会することが出来ました。きっとまだ他に仲間が何処かにいると思うのです。それに、私達と共通の敵を持つ人々もここにいると思います」
「なる程……それじゃユリアナは報復をする為にこの地に残るんだな?」
「はい、そうです」
「そうか……」
ため息をつくジェイク。
「それで……ジェイクさんはどうしますか?」
「え? 俺か?」
「はい。これから私は自分の目的を達成するために危険に身を投じることになるでしょう。ときには犯罪めいた行為に手を染めるかもしれません……つまり、私といれば……」
そこから先は口を閉ざした。
本来であれば、仲間はひとりでも多いほうがいい。それにジェイクは行動的な人物だ。彼なら心強い存在になってくれるだろう。
けれど、その反面……私は命の恩人のジェイクを巻き込みたくはなかった――
65
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる