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5章 3 彼がここにいる理由
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「何あれ…… 」
「どうして男子学生がここに……?」
リオンの姿を見て、女子学生たちがひそひそ話を始めた。それだけではない。
「あの人、どうしてヴェールを被っているのかしら?」
「何か理由があるのかも……」
「まずいわね……今の言葉がロザリンの耳に入れば大変なことになるわよ」
エイダがそっと耳打ちしてきた。
「そうよね……」
リオンとロザリンは距離の離れた場所に座っている。聞こえていなければいいのだけれど……。
しかし――
「うるさいわねっ!! 私達は見世物じゃないのよっ!!」
突如としてロザリンが立ち上がり、周囲を見渡すとヒステリックに叫んだ。
「ロザリン、落ち着いて」
リオンが慌てたように、ロザリンの腕を掴んだ。
「何よっ!! 離しなさいよ! ヴェールのことを口走ったのは誰なの! 手を上げなさいよ!!」
『……』
けれど、静まり返った教室で、手を上げる人など誰もいない。
その態度にロザリンは怒りの為か、身体を震わせている。
女子学生たちはヒステリックに叫ぶロザリンに恐れをなしてか、誰も一言も口を利かない。
まるで水を打ったかのように、教室内は静まり返っていた。
「ロザリン……とにかく、座ろう。皆さん、お騒がせしてすみませんでした」
リオンは立ち上がると、教室を見渡して謝罪の言葉を述べた。
「何よ! どうして謝らなければいけないのよ! 元はと言えば、人のことをコソコソいう人達が悪いんでしょう!!」
謝るリオンに対して、切れるロザリン。
「頼むから、落ち着いてくれよ、ロザリン。また授業に出られなくなってもいいのかい?」
「……」
その言葉にロザリンは俯くと着席した。そこでリオンも再び席に座ったのだが、すっかり教室の雰囲気は変わってしまった。
誰もが口を開くこと無く、緊張感が漂っている。
恐らく、この教室にいる誰もがロザリンのヒステリックぶりに驚いて言葉を無くしているのだろう。
――その時。
教室の扉が開き、黒いローブを羽織った女性教師が現れた。
女性教師は教壇に立つと、挨拶を始めた。
「新入生の皆さん、初めまして。私は風属性の魔術を担当する、セイラ・ワイアットです。最初に説明しておくことがあります。……リオン・ハイランドさん」
「はい」
名前を呼ばれてリオンは席を立った。すると再びクラス中の女子学生の目がリオンに集中する。
すると先生の口から驚きの言葉が飛び出した。
「本来、魔術の授業は男女別れて受けるものではありますが、特例として彼はこちらのクラスで授業を受けることになります」
その言葉に少しだけ教室がざわめいた。
え……? リオンが女子学生と一緒に魔術の授業を受ける?
しかも「風」属性なんて……本来、リオンは「炎」属性だったはずなのに。
まさか、ロザリンの為に……?
「リオン・ハイランドです。よろしくお願いします」
リオンは周囲の視線を浴びながら自己紹介すると、着席する。
「それでは、これから第1回目の『風』属性の魔術講義を始めます。まず、この魔法の特徴についてですが……」
まるで何事も無かったかのように、女性教師による魔術の授業が始まった……。
授業を受けながら、私は斜め前方の席に座っているリオンの姿をそっと伺った。
彼はまっすぐ前を向いて先生の説明を聞いている。
リオンの表情は暗い。
まるで全てを諦めきっているように見えてしまう。
彼の魔力暴走から6年……恐らくハイランド家の人々はずっとロザリンによって苦しめられてきたのだろう。
私のとった行動は、ひょっとすると間違いだったのだろうか?
授業の間……私はずっと自問自答し続けるのだった――
「どうして男子学生がここに……?」
リオンの姿を見て、女子学生たちがひそひそ話を始めた。それだけではない。
「あの人、どうしてヴェールを被っているのかしら?」
「何か理由があるのかも……」
「まずいわね……今の言葉がロザリンの耳に入れば大変なことになるわよ」
エイダがそっと耳打ちしてきた。
「そうよね……」
リオンとロザリンは距離の離れた場所に座っている。聞こえていなければいいのだけれど……。
しかし――
「うるさいわねっ!! 私達は見世物じゃないのよっ!!」
突如としてロザリンが立ち上がり、周囲を見渡すとヒステリックに叫んだ。
「ロザリン、落ち着いて」
リオンが慌てたように、ロザリンの腕を掴んだ。
「何よっ!! 離しなさいよ! ヴェールのことを口走ったのは誰なの! 手を上げなさいよ!!」
『……』
けれど、静まり返った教室で、手を上げる人など誰もいない。
その態度にロザリンは怒りの為か、身体を震わせている。
女子学生たちはヒステリックに叫ぶロザリンに恐れをなしてか、誰も一言も口を利かない。
まるで水を打ったかのように、教室内は静まり返っていた。
「ロザリン……とにかく、座ろう。皆さん、お騒がせしてすみませんでした」
リオンは立ち上がると、教室を見渡して謝罪の言葉を述べた。
「何よ! どうして謝らなければいけないのよ! 元はと言えば、人のことをコソコソいう人達が悪いんでしょう!!」
謝るリオンに対して、切れるロザリン。
「頼むから、落ち着いてくれよ、ロザリン。また授業に出られなくなってもいいのかい?」
「……」
その言葉にロザリンは俯くと着席した。そこでリオンも再び席に座ったのだが、すっかり教室の雰囲気は変わってしまった。
誰もが口を開くこと無く、緊張感が漂っている。
恐らく、この教室にいる誰もがロザリンのヒステリックぶりに驚いて言葉を無くしているのだろう。
――その時。
教室の扉が開き、黒いローブを羽織った女性教師が現れた。
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「新入生の皆さん、初めまして。私は風属性の魔術を担当する、セイラ・ワイアットです。最初に説明しておくことがあります。……リオン・ハイランドさん」
「はい」
名前を呼ばれてリオンは席を立った。すると再びクラス中の女子学生の目がリオンに集中する。
すると先生の口から驚きの言葉が飛び出した。
「本来、魔術の授業は男女別れて受けるものではありますが、特例として彼はこちらのクラスで授業を受けることになります」
その言葉に少しだけ教室がざわめいた。
え……? リオンが女子学生と一緒に魔術の授業を受ける?
しかも「風」属性なんて……本来、リオンは「炎」属性だったはずなのに。
まさか、ロザリンの為に……?
「リオン・ハイランドです。よろしくお願いします」
リオンは周囲の視線を浴びながら自己紹介すると、着席する。
「それでは、これから第1回目の『風』属性の魔術講義を始めます。まず、この魔法の特徴についてですが……」
まるで何事も無かったかのように、女性教師による魔術の授業が始まった……。
授業を受けながら、私は斜め前方の席に座っているリオンの姿をそっと伺った。
彼はまっすぐ前を向いて先生の説明を聞いている。
リオンの表情は暗い。
まるで全てを諦めきっているように見えてしまう。
彼の魔力暴走から6年……恐らくハイランド家の人々はずっとロザリンによって苦しめられてきたのだろう。
私のとった行動は、ひょっとすると間違いだったのだろうか?
授業の間……私はずっと自問自答し続けるのだった――
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