転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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5章 4 集まる女子学生

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 授業が終わると、すぐに女子学生たちが私の周りに集まってきた。

その原因は……。

「ねぇねぇ、あなた。本当は光の属性なんですって?」

「光の属性クラスは無いから、このクラスに来たのでしょう?」

「再生能力が光の属性にはあるのよね?」

「それじゃ治癒能力があるってこと?」

取り囲まれて、矢継ぎ早に質問攻めにあって私は戸惑うばかりだった。

「あ、あの……確かに光の属性ではあるけれど、まだま力不足なのよ。だからこのクラスで魔術の能力を上げようと思っているの」

何とか答えると、別の女子学生がさらに興奮気味で質問してくる。

「それじゃ、魔術の力があがれば、病気や怪我を治せるのね!?」

「はい、はい、皆そこまでにしてくれる? 昼休みの時間が無くなってしまうから。行きましょう、クラリス」

するとエイダが私の腕を掴むと立ち上がり、素早く耳打ちしてきた。

「ロザリンに捕まったら厄介でしょう? すぐに教室を出ましょう」

「え、ええ。そうね」

チラリとロザリンとエイダの様子を伺うと、ロザリンとリオンが話をしている姿が見えた。

「あら。もう行っちゃうの? 色々話しを聞きたかったのに」

私が席を立つと、1人の女子学生が残念そうな様子を見せたので謝った。

「ごめんなさい、友人を待たせているの」

「また今度にしてね、それじゃ行きましょうクラリス」

こうしてエイダに手を引かれて、2人で急ぎ足で教室を後にした――


****


「……ここまで来れば大丈夫そうね」

学生食堂へ続く渡り廊下まで来たところで、エイダが背後を振り返った。

「ええ、そうね……」

「それにしても、あの先生。ちょっと無神経だったと思わない? あんな大勢の前で光の属性を持っている学生がこのクラスにいるってことを暴露してしまうんだから」

エイダが憤慨した様子で語る。

「確かにあれにはちょっと驚いたわ」

授業開始から30分程が経過し、魔法属性の話になった。そこで先生が名指しこそしなかったものの、数百年ぶりに光の属性を持つ生徒がこの学園に誕生したという話をしてしまったのだ。

当然、風属性のクラスには私が光の属性を持っていることを知っている学生たちもいる。
そこで、授業終了後に先程の騒ぎになってしまったというわけだ。

「それにしてもロザリンに捕まらなくて良かったわ。きっと私達の周囲に大勢女子学生が集まってきたから近寄れなかったに違いないわ」

「確かに、そうかもしれないわね」

エイダの話に相槌を打ちながらも、私は不安が拭いきれなかった。そもそも何故女子学生のクラスにリオンが一緒にいたのだろう?

すると不意に、エイダがリオンのことを口にした。

「だけど、あのクラスにリオンがいたなんて意外だったわ。確かにロザリンとリオンは初等部の頃から、一度もクラスが分かれたことが無かったけど……」

「え!? そうだったの!?」

その話は驚きだ。

「そうよ。元々ロザリンは我儘なところがあったけど、リオンのせいで顔に大火傷を負ってしまって、情緒不安定になってしまったのよ。あんなふうに大きな声で怒鳴ったりして。そこでリオンが常に彼女の傍にいるようになったのよ。……何しろ、婚約者だから」

「……気の毒な話ね」

それだけ言うのが精一杯だった。家でも学校でもあのロザリンに付き合わなければならないなんて、あれでは気の休まることなど無いだろう。
ひょっとして、リオン自身が顔に火傷を負ってしまっていたほうが余程楽な人生を生きられたのではないだろうか?
私が出しゃばって余計なことをしてしまったばかりに……。

「大丈夫、クラリス。何だか顔色が悪いけど?」

エイダが心配そうに声をかけてくる。

「平気よ。それより、皆が待ってるかもしれないから急ぎましょう」

「そうね、さっきのことも報告しなくちゃいけないし」

そこで私達は4人が待つ食堂へ足早に急いだ。

この時の私は、罪悪感こそあったけれども他人事だった。
自分が近い将来、巻き込まれることになるとは思いもしていなかったのだ――
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