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1章10 60年ぶりの晩餐
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その後の婆やを説得するのが大変だった。
いくら言って聞かせても婆やは納得してくれず、しまいに自分を連れて行かないのなら死んでやるとまで言ってきたのだ。
そこで婆やを納得させる為、私はありとあらゆる手段で訴えた。
『ルーズ』に1人で行くのは自立した大人になりたいからだとか、誰にも縛られない自由を満喫したいからだと訴えても、首を縦に振らない。
そこで最終的に、私について来るのなら一生婆やとは口をきかないと宣言したところでようやく納得してくれたのだった――
「ふぅ~……疲れたわ……」
婆やが部屋からいなくなると、着ていたパーティドレスを脱ぎ捨て普段着に着替えてベッドにゴロリと寝そべった。
「……寝心地の良いベッドだわ。私って、本当に贅沢な暮らしをしていたのね……」
目を閉じると少しだけ回想に浸る。
あの村での生活は慣れるまでが本当に大変だった。
この屋敷に比べて、ずっと粗末な家。初めてあの家を見た時は物置小屋では無いかと思ったくらいだ。
ベッドは粗末で寝心地は悪かったし、食べ物だってずっと貧しい物になってしまった。
何より侯爵令嬢だったはずなのに、慣れない畑仕事や家事をしなければならないことが屈辱でたまらなかった。
それでも高いプライドは捨てられず、親切にしてくれる『ルーズ』の村人たちに冷たい態度を取り続けてしまったのだ。
そして私は結局孤立してしまった――
「もう、あんな失態は二度としないんだから」
呟き、ベッドから起き上がると既に窓から見える空はいつの間にかオレンジ色に染まっている。
「え!? やだ! もうこんな時間なの!?」
部屋に置かれた時計を見れば、もう時刻は18時を過ぎている。
「困ったわ……今日は宝石を売りに行こうかと思っていたのに」
でもまぁ、ここを出て行くまで2日間の猶予はある。明日は早起きして行動すればいいだけのことだ。
「それじゃ、今は出来ることをしないとね」
気を取り直し、ベッドから降りると早速荷造りを始めた。
もう二度とここに戻ることは無いのだから、不要な物は全て処分しなければ。
その後、チェルシーが食事の時間を知らせに訪れるまで荷造りを続けた――
****
――19時
私は今、ダイニングルームで父と向かい合わせに座っていた。
「……」
目の前に並べられた食べきれないほどの豪華な食事に私は目を奪われていた。
数えただけで、12品並べられている。
「どうした? 食べないのか?」
父が不思議そうな顔を向ける。
「い、いえ。いただきます。どれも素晴らしく美味しそうですね」
早速肉料理から口にしてみたが、やはり味は絶品だった。
60年ぶりの食事を味わっていると、不意に父が躊躇いがちに話しかけてきた。
「オフィーリア。その……荷造りの方だが……」
「荷造りですか? 大丈夫です。順調に進んでいます。なるべく早くここを出て行けるように急ぎますから」
「い、いや! そ、そうか? 別に急ぐことも無いぞ? 2日の猶予をやると言ったが……もう少し延長してもいいのだぞ?」
「え?」
父の言葉に驚き、思わずじっと見つめる。
こんな展開は60年前には無かった。もしかして今回はあっさり私が追放処分を受け入れたせいだろうか?
だけど……。
「いいえ、大丈夫です。余り『ルーズ』行を引き延ばしては王室から目をつけられてしまうでしょうから。それに、恐らく私を2日以内に追い出すように命令されているのではありませんか?」
「そ、それは……」
父が明らかに狼狽えている。
やはりそうだったのか。あの時は私を愚図って1週間近く引き伸ばしてしまった。さぞかし、父に迷惑をかけてしまったに違いない。
「お父様を困らせるわけにはいきません。必ず2日以内にここを出て行きますからご安心下さい」
「……すまない。オフィーリア」
「お父様が謝ることはありません。全て私が自分で蒔いた種ですから。そんなことよりも今は食事を楽しみましょう」
「あ、ああ。……そうだな」
父は少し寂しげに笑った――
いくら言って聞かせても婆やは納得してくれず、しまいに自分を連れて行かないのなら死んでやるとまで言ってきたのだ。
そこで婆やを納得させる為、私はありとあらゆる手段で訴えた。
『ルーズ』に1人で行くのは自立した大人になりたいからだとか、誰にも縛られない自由を満喫したいからだと訴えても、首を縦に振らない。
そこで最終的に、私について来るのなら一生婆やとは口をきかないと宣言したところでようやく納得してくれたのだった――
「ふぅ~……疲れたわ……」
婆やが部屋からいなくなると、着ていたパーティドレスを脱ぎ捨て普段着に着替えてベッドにゴロリと寝そべった。
「……寝心地の良いベッドだわ。私って、本当に贅沢な暮らしをしていたのね……」
目を閉じると少しだけ回想に浸る。
あの村での生活は慣れるまでが本当に大変だった。
この屋敷に比べて、ずっと粗末な家。初めてあの家を見た時は物置小屋では無いかと思ったくらいだ。
ベッドは粗末で寝心地は悪かったし、食べ物だってずっと貧しい物になってしまった。
何より侯爵令嬢だったはずなのに、慣れない畑仕事や家事をしなければならないことが屈辱でたまらなかった。
それでも高いプライドは捨てられず、親切にしてくれる『ルーズ』の村人たちに冷たい態度を取り続けてしまったのだ。
そして私は結局孤立してしまった――
「もう、あんな失態は二度としないんだから」
呟き、ベッドから起き上がると既に窓から見える空はいつの間にかオレンジ色に染まっている。
「え!? やだ! もうこんな時間なの!?」
部屋に置かれた時計を見れば、もう時刻は18時を過ぎている。
「困ったわ……今日は宝石を売りに行こうかと思っていたのに」
でもまぁ、ここを出て行くまで2日間の猶予はある。明日は早起きして行動すればいいだけのことだ。
「それじゃ、今は出来ることをしないとね」
気を取り直し、ベッドから降りると早速荷造りを始めた。
もう二度とここに戻ることは無いのだから、不要な物は全て処分しなければ。
その後、チェルシーが食事の時間を知らせに訪れるまで荷造りを続けた――
****
――19時
私は今、ダイニングルームで父と向かい合わせに座っていた。
「……」
目の前に並べられた食べきれないほどの豪華な食事に私は目を奪われていた。
数えただけで、12品並べられている。
「どうした? 食べないのか?」
父が不思議そうな顔を向ける。
「い、いえ。いただきます。どれも素晴らしく美味しそうですね」
早速肉料理から口にしてみたが、やはり味は絶品だった。
60年ぶりの食事を味わっていると、不意に父が躊躇いがちに話しかけてきた。
「オフィーリア。その……荷造りの方だが……」
「荷造りですか? 大丈夫です。順調に進んでいます。なるべく早くここを出て行けるように急ぎますから」
「い、いや! そ、そうか? 別に急ぐことも無いぞ? 2日の猶予をやると言ったが……もう少し延長してもいいのだぞ?」
「え?」
父の言葉に驚き、思わずじっと見つめる。
こんな展開は60年前には無かった。もしかして今回はあっさり私が追放処分を受け入れたせいだろうか?
だけど……。
「いいえ、大丈夫です。余り『ルーズ』行を引き延ばしては王室から目をつけられてしまうでしょうから。それに、恐らく私を2日以内に追い出すように命令されているのではありませんか?」
「そ、それは……」
父が明らかに狼狽えている。
やはりそうだったのか。あの時は私を愚図って1週間近く引き伸ばしてしまった。さぞかし、父に迷惑をかけてしまったに違いない。
「お父様を困らせるわけにはいきません。必ず2日以内にここを出て行きますからご安心下さい」
「……すまない。オフィーリア」
「お父様が謝ることはありません。全て私が自分で蒔いた種ですから。そんなことよりも今は食事を楽しみましょう」
「あ、ああ。……そうだな」
父は少し寂しげに笑った――
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