【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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馬鹿と気付くのが遅すぎて

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訳がわからない。

シャルム・ライプニヒは、同じ質問をずっと頭の中で、ぐるぐると繰り返していた。

失敗するはずがない。
そんなはず、なかったのに。

前回は、俺1人でやろうとしたから。
そのせいで、うまくタイミングが見つからなかった。
隙が見つけられず、それを作りだすこともできなくて。

だから、今回は単独行動をやめたんだ。
ブルンゲン卿の伝手を頼って、何人か集めてもらって。

ちょっと金はかかっても、確実に成功したかったから。
誰か1人でもターゲットに近づければいいと、そう思ったから。

前みたいにタイミングが計れなかったとしても、何人かいれば隙を誘うことだってできるはず。
ちょっと騒ぎを起こせば、そっちに注意を逸らすことができるんだから。

それでも念のためと、俺は別場所で控えることにして、状況を見て動こうと思ってた。

思ってた、のに。

7人だぞ?
俺以外に、7人。それが。

あっと言う間に捕まえられた。
騒ぎにすら、ならず。
周りの誰にも気づかれることなく。

声をあげることも、隠し持ったナイフを手にすることも出来ずに、ただ、ぽっとどっかから現れた知らない奴らに、違う場所へと静かに連れていかれて。

それが警護の奴らだと気づいたのは、そいつらだけで戻って来たとき。
ああ、きっと拘束されたのだと。

それでも、1人。
1人だけ、ターゲットまで行けるかと期待したヤツがいたが、それも結局、何メートルも手前であっさり止められて。

それで終わりだ。
俺は最後まで出るきっかけすら掴めず、そのまま退場。

何でわかった?
どうやって、潜り込ませた奴らを見分けたんだ?

ダメだ、やっぱり訳がわからない。

いくら王家の護衛もいたからって、出来が良すぎだろ。
普通、ちょっとは抵抗ぐらいできるはずなのに。

警護の人数だって、いくらなんでも多すぎだ。
あれじゃまるで、俺たちが来るのがわかってたみたいじゃないか。

ーーーその時、頭の中に光が差し込んだかの如く、閃いて。

いや、ちょっと待て。
・・・まさか、わかってたのか?

情報が、・・・漏れてた、のか?

ーーーどこから?


◇◇◇


「旦那さま。シャルムさまがお見えです。旦那さまにお会いしたいと」
「・・・通せ」

やっと来たか。

計画の成功を信じきっていたブルンゲンは、いつものようにデュールを独り楽しみながら、上機嫌でシャルムからの報告を待っていた。

あれだけの人数を揃えたんだ。
さすがに今回はうまくいっただろう。

まぁ、万が一失敗したとしても、あれを切って捨てればいいだけの話。

そう構えていたら。

怒りと困惑でドス黒く染まった顔で、その男は居室に入ってきた。

「シャルム? どうした、なんて顔をしている。首尾はどうだった。うまくいったんじゃないのか?」

今のシャルムと比べれば、前回の癇癪など可愛らしい子どもだましにすぎない、そう思えるほどの激昂ぶり。
その瞳は、狂気が宿ったかのように不気味に光っている。

「・・・どうしたんだ、シャルム? 何があったのだ?」
「・・・ブルンゲン・エイモス卿。どうしてなんでしょうねえ。まるで俺が襲撃に向かうことが分かっていたかのように、警護の者たちが待ち構えていたのは」
「・・・なっ・・?」
「ねぇ、どうしてなんでしょう。教えてくださいよ。傍系のあんたを信じて、言われるままに動いた挙句、危うく捕まりかけた、この哀れな公爵家嫡男に」
「シャ、・・ルム・・」

失敗、した、のか?
そして、それを、私のせいだと?

その手に、襲撃用にと用意させたナイフを握りしめているのが見える。

「教えろって言ってんだよ! ブルンゲンッ!!」

愚かだとは、思っていたが。
ここまでの大馬鹿だったとは。

・・・いや、愚かなのは私か。
こんな大馬鹿をうまく手懐けたと思っていたなど。

ナイフを振り上げ、こちらに向かって突進してくるシャルムの姿がブルンゲンの瞳に映る。

刹那、扉近くに控えていた執事が、大声で警護を呼ぶ声がブルンゲンの耳に響いた。
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