【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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自慢の臣下、ここにあり

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「……では、全員を捕まえることができたわけですね?」
「1人を除いてな。……捕まえた中に、シャルム・ライプニヒが入っていなかった。どうやら、命令するだけ命令して、自分はどこかに隠れていたらしい」

残念そうに語るシャールベルムの言葉に、ミハイルシュッツが眉根を寄せる。

「会場では、周囲に悟られずに犯人たちを拘束できたと聞いて安心していたのですが……」
「ああ。実際、護衛たちはうまく立ち回ってくれた。報告によると、ベルフェルトの手助けも大きかったようだが。それでも、その場にいない人間のことは、どれほど腕の立つ護衛でも捕まえようがないからな」

賢者くずれの動きがまだ詳しく掴めていない以上、今回の襲撃に関しては秘密裏に処理して、時間を稼ぎたかった……が。

シャールベルムは自らの口元に手をあて、しばし考え込む。
その場にいる者たちの間に拡がる、静寂と少しの緊張。

国王が次の決断を下すまでのわずかな時間が、永遠かと思えるほど長く感じられて。
皆はただ、静かに待った。

王は手を口元から離し、ゆっくりと口を開いた。

「1人でも逃げたとなれば、こちらが動きを探っていることを向こうにも気付かれたと考えた方がよかろうな。動きを変えるとしよう。……それでも依然、最も危険なのは……エレアーナだが」

王の言葉に、ミハイルが頷く。

「そうですね。ファーブライエンが雇ったという賢者くずれの動向に関して、まだ詳細な情報が集まっていないのは残念ではありますが、もう水面下では処理しきれないと考えてよいでしょうな。下手をすれば、シャルム・ライプニヒらが時間を置かずにまた仕掛けてくるかもしれません」
「そのシャルムが、今どこに逃げ込んでいるのかまだわからんが……」
「それは私たちが調べましょう」

それまで、王と王弟とのやり取りを横で黙って聞いていた『コウモリ』の1人が声を上げた。

王は彼らの方を向き直ると、軽く笑みを浮かべながらこう答えた。

「お前たちには感謝している。これまでたくさん働いてくれた。だが、これ以上は……頼みたくはないとも思っているのだ」

王の言葉に、王弟が軽く目を見張る。

「お前たちの力は大きかった。本当にいろいろと助けられた。……だが、これより以降は、恐らく真っ向からの正面衝突になる。ただでさえ、お前たちには危ない事をいろいろさせてきた。そして、このままいくと更に危なくなるだろう。だから、……もう役を降りてもいいのだぞ」
「……そうですね。彼らはもう十分やってくれましたしね」

これまで何の文句も言わずに『コウモリ』としてのその役を果たしてくれた2人に、ミハイルも優しく頷いた。

「もったいないお言葉にございます」

国王と王弟からの労いの言葉を受け、2人は共に深く頭を下げる。

「……ですが、気遣いは無用に願います。もとはと言えば、私たちの家門が発端となって起きた事。その始末も自らの手で行えたらと願っておりますれば。許されるならば、最後までやり遂げたいと思っております」
「だが……」
「恐れながら、陛下。我らは、陛下の『自慢の臣下』でございましょう?」

顔を上げて真っすぐな眼で言い放つその姿に、シャールベルムは驚いて軽く目を見張る。

……それから、少しばかりの苦笑。

首を軽く横に振りながら、国王は頭の中で次の言葉を探す。そんな国王の姿に、コウモリたち2人の視線は柔らかく細められて。

ミハイルシュッツも、そんな兄に温かな視線を送る。
いつもの威厳に満ちた表情とは全く違う、少し困ったような、泣き笑いのような顔で、王は口を開いた。

「そうか、『自慢の臣下』か。……違いない」
「確かにな。お前たちは私の自慢でもある」
「そうでございましょう。今いただいたお言葉通り、私たちは、陛下と王弟殿下の『自慢の臣下』にございます。されば、最後までおふたりに付き合わせていただこうかと」
「いかにも、それが筋でございます」

2人の目には、固い決意が窺えて。

「そんな覚悟を見せつけられたとあっては、こちらも甘えないわけにはいかんな。……お前たちには、これまで以上に辛い思いをさせてしまうことになるが」
「承知の上です」
「そうか。すまんな。……では、よろしく頼むぞ。リュークザイン・ライプニヒ。そして、ベルフェルト・エイモス」
「「……はっ」」

2人は再び深く頭を垂れる。
その姿から滲み出る覚悟が、強さが、壮絶なまでに美しいと、王は思った。

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