【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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告白

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レオンさまの話を、ちゃんと分かっているのかどうか自信がない。

私の耳がおかしいのかしら?

婚約の話は白紙に、・・・でも、もう一度機会を・・・?
つまり、婚約の話はなくなって、あら? でも? ちょっと待って。

同じ女性に、・・・こ、恋?

え、と、それで、レオンさまと・・・ケインさまが、・・・何をすると?

目を白黒させているエレアーナの様子に、思わず、といった感で、レオンが破顔する。

「ふふ、困ってる?」
「あ、・・ええ、と。困ってる、というか、よく話が呑み込めない、というか」
「そうかもね。・・・じゃあ、一言にまとめるね。君がお父上から聞いた前の婚約の話は一旦忘れて、改めて僕とケインから告白させてください、ってことだよ」
「こ、告白・・・。レオンさまと、・・・ケインさま、から?」
「そう」

エレアーナは、思わずケインの方に目を向ける。
ケインも未だ状況を把握しかねているのか、依然、無言のまま。

「ふふ、ごめんね、エレアーナ嬢。急にこんなことを言い出して。きっと訳が分からないよね。僕がね、ただ意地を張っているだけなんだ。・・・本当、つまらない意地を張っていると自分でも思うよ。こんな回りくどい事をしたりせずに、このまま君を確実に自分の腕の中に閉じ込めておきたいというのも本心ではあるんだけど」

そう言うと、少しだけ目を伏せた。
その指は、先ほどからずっと私の髪を愛おし気に撫でていて。

「でも、負けっぱなしっていうのも嫌なんだ。・・・結果、それで勝てなかったとしても、それでも構わないと思うくらいにはね。・・・それで、仕切り直し、しようかなって」

レオンさまは、何をおっしゃりたいのかしら。
負けるって、何に? 負けっぱなしって、どういうことかしら? 

でも、ひとつだけ、分かった。
仕切り直しって、つまり、改めて・・・告白を聞くことなのね?

レオンさまと・・・ケインさまから。

でも、なぜ、ケインさまが私に告白するの?

だって、ケインさまは。

・・・ケインさまは、レオンさまの親友で。
いつもレオンさまと一緒に仲良く行動されてて、無口だけど私にも親切にしてくださる方で。

彫刻のような端正な顔立ちには、感情が現れることがほぼないけれど、でも、よく見ると、とっても・・・優しい目をしてて。

いつも静かに話の聞き役に回っていて。
無表情に思えるけれど、よく見ると会話の最中に、時々、口角を少し上げる微かな笑みを浮かべたり、ちょっとだけ眉間にしわを寄せたり、ほんの少しの表情の変化が面白くて。

そうよ、本当に、あまり感情を顔には出さない方で。

だから。
わからない。

そんな方が、なぜ。
拳を口元にあてて、うっすらと頬を上気させて・・・なぜ、そんな困った顔をしてらっしゃるの?

喉がこくりと鳴る。なぜかしら、胸も、どきどきしてきた。

「エレアーナ嬢」

レオンさまが、そっと私の名を呼ぶ。
あわてて目線を戻す。

レオンさまがじっと私の顔を覗きこむ。
長い睫毛に縁どられた紫色の美しい瞳に、私の姿が映りこんでいるのが見える。

その眼差しは、とても、真剣で。
吸い込まれそうなほど、澄んでいて。

その王族の証である美しい紫に、すべてを一瞬忘れる。

なんて、綺麗。
そう思って、ただ見惚れていたら。

レオンさまの唇が、ゆっくりと開いた。

「・・・エレアーナ嬢」
「・・・は、い」
「僕は、・・・君が好きだよ。心から愛しいと、そう思っている。心優しく美しい君と、人生を共に歩む幸福を得られるのならば、どんなことでも成そうと心に誓うほどに」
「・・・あ・・の・・」
「・・・叶うならば、僕の妃になり、共に王座に並び立ち、君を愛し慈しむ幸福を僕に与えて欲しい。どうか、チャンスをくれないだろうか?・・・どうか、もう少しだけ、僕に時間をくれないだろうか」

レオンさまの眼が、柔らかく細められる。
その唇は、美しく弧を描いて。

「・・・君が恋に落ちてもいいと思えるような、それだけの男に、僕は必ずなってみせるから」
「レ、オンさま・・・」

声が、掠れてしまう。

レオンさまの眼差しが、いつも以上に優しくて、そしてどこか切なそうで。

思わず、問いたくなる。
なぜ、そんなに辛そうなのって。

笑んでいるのに。
この上なく柔らかく、この方は微笑んでいるのに。

私の視線に応えるかのように、レオンさまは更に目を細め、それからもう一度、私の髪に口づけを落として。

その掌から、さらりと離した。
ゆるい巻毛が、ゆっくりと落ちていく。
時が止まったかのように、静かで。

そんな静寂の時をただ黙って見届けた後、レオンさまはゆっくりと立ち上がった。

それから、君の番だよ、とケインさまに呼びかけた。
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