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リュークザインの見合いについて その3
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伸ばした手を一旦止め、リュークはまず一言、ラエラに断りを入れた。
「不快だったら言ってくれ。すぐに止める」
ラエラが頷いたのを確認して、リュークはラエラの手をそっと握った。
そして、真面目な顔でラエラを見つめ、静かに問いかけた。
「・・・どうだ?」
ラエラは表情を変えることなく「これだけではわかりません」と答える。
「夜会のダンスでも、これ以上の触れ合いはございます。手を握ったくらいでは、何も測ることが出来ませんわ」
その言葉に、リュークはうっと詰まる。
指摘した内容は尤もだ。
「では・・・顔に触れても?」
遠慮がちに尋ね、ラエラの了承を得たところで、リュークはラエラの頬をそっと掌で包んだ。
必然的に顏を至近距離で覗きこむことになり、リュークは自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
目の前にあるラエラ嬢の切れ長な空色の瞳が、真っ直ぐにリュークを見つめている。
・・・これは本当に必要なのか?
政略結婚であるからこそ、事前の確認を怠りたくないという気持ちは分かる。
分かるが、これはどうにも気恥ずかしい。
恋愛関係に陥っていないからこそ、却って恥ずかしくて堪らないのだ。
「これでどうだ?」
「まだ測りかねます。もう少しお続けくださいますか?」
これにはリュークも困ってしまった。
もともとリュークは、親友のベルフェルトと違って女性慣れしていない。
ダンスのエスコートだって、母か妹の相手しかしたことがないのだ。
「・・・わかった」
だが、当主として、どうしても結婚相手を見つけなければならない。
そして子どもを儲けるためには、妻となる女性に夫婦の営みへの不安を感じられては困るのだ。
リュークは、自分の顔が真っ赤であろうという事は、もう自覚していた。
そして、ここまで来て、今更、取り繕っても仕方がない事も分かっている。
だが。
・・・もう少し続けろと言われても、一体どこに触れればいいというのだ。
正直、もうどうしていいか分からなかった。
諜報機関の長といっても、情報を得る手段で色仕掛けなど使ったこともない。
家族以外の女性でここまで接近したこと自体、初めてなのだ。
頭の中でぐるぐると余計なことを考えつつも、身体の動きは完全に止まっている。
ラエラはそんなリュークの顔を見上げて、首を傾げた。
「リュークザインさまの方こそ、ご不快にお感じではありませんか?」
「は? はいっ?」
突然の質問に、リュークは驚いて目を大きく見開いた。
「何やら難しいお顔をなさっておいでです。わたくしに触れるのは・・・気分が悪かったでしょうか」
あまり表情には出ていないが、どうも不安に思ったらしい。
リュークは即座に否定した。
「気分が悪いなど、とんでもない。ただ、女性に触れることに慣れておらず・・・その、どこまで触っていいものかと・・・」
「そうですか」
少しほっとして見えたのは、気のせいだろうか。
「お悩みでしたら、どうかお手を背中に回して、わたくしを抱きしめてみてくださいませ」
「抱き・・・こうか?」
リュークは、ぎこちなく腕を広げてラエラの背中に回すと、ぎゅっと抱きしめた。
ラエラの身体が、すっぽりとリュークの腕の中におさまる。
その途端、ラエラの髪からふわりと花のような香りがして。
リュークはガラにもなく、胸が高鳴るのを感じた。
「・・・」
「リュークザインさま?」
胸元に顏を寄せたラエラが、視線を上げてリュークを見つめる。
「どうかなさいまして?」
「あ、いや。なんでもない。・・・それより、どうだ。不快ではないか?」
何故だか視線を合わせることが出来ず、少しずれた方向を見ながら問い返した。
「わたくしは大丈夫です。ちっとも嫌ではありませんでしたわ」
「・・・そうか。それは・・・良かった」
「・・・リュークザインさまは?」
「は?」
「リュークザインさまは、いかがでしたか? ・・・わたくしがお側にいて、お嫌ではありませんでしたか?」
多分、顔を見て答えた方がいいのだろう。
そう思いはしたが、やはり視線を合わせる気にはなれなくて。
失礼な態度だと怒りはしないだろうか。
そう不安になりながら、いつもよりも小さな声で答えた。
「嫌では、ない」
「そうですか。でしたら問題ないかもしれませんわね」
「うむ」
それから、ぎぎぎぎぎぎ、と音がしそうな程のぎこちない動きで背中に回した腕を解くと、リュークの胸元からすっとラエラが離れた。
その時、何故か少しの寂しさを覚えたような気がして。
なにを馬鹿なことを。
これは互いに立てた条件の合意に基づく、れっきとした政略結婚だぞ。
そう思ったけれど。
「本日はありがとうございました。とても有意義な時間を過ごせましたわ」
そう言って馬車に乗り込むラエラを見送った時。
リュークに背を向けたラエラの頬が、見事なまでに朱色に染まっていたことなど、リュークザインは気づいていない。
「不快だったら言ってくれ。すぐに止める」
ラエラが頷いたのを確認して、リュークはラエラの手をそっと握った。
そして、真面目な顔でラエラを見つめ、静かに問いかけた。
「・・・どうだ?」
ラエラは表情を変えることなく「これだけではわかりません」と答える。
「夜会のダンスでも、これ以上の触れ合いはございます。手を握ったくらいでは、何も測ることが出来ませんわ」
その言葉に、リュークはうっと詰まる。
指摘した内容は尤もだ。
「では・・・顔に触れても?」
遠慮がちに尋ね、ラエラの了承を得たところで、リュークはラエラの頬をそっと掌で包んだ。
必然的に顏を至近距離で覗きこむことになり、リュークは自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
目の前にあるラエラ嬢の切れ長な空色の瞳が、真っ直ぐにリュークを見つめている。
・・・これは本当に必要なのか?
政略結婚であるからこそ、事前の確認を怠りたくないという気持ちは分かる。
分かるが、これはどうにも気恥ずかしい。
恋愛関係に陥っていないからこそ、却って恥ずかしくて堪らないのだ。
「これでどうだ?」
「まだ測りかねます。もう少しお続けくださいますか?」
これにはリュークも困ってしまった。
もともとリュークは、親友のベルフェルトと違って女性慣れしていない。
ダンスのエスコートだって、母か妹の相手しかしたことがないのだ。
「・・・わかった」
だが、当主として、どうしても結婚相手を見つけなければならない。
そして子どもを儲けるためには、妻となる女性に夫婦の営みへの不安を感じられては困るのだ。
リュークは、自分の顔が真っ赤であろうという事は、もう自覚していた。
そして、ここまで来て、今更、取り繕っても仕方がない事も分かっている。
だが。
・・・もう少し続けろと言われても、一体どこに触れればいいというのだ。
正直、もうどうしていいか分からなかった。
諜報機関の長といっても、情報を得る手段で色仕掛けなど使ったこともない。
家族以外の女性でここまで接近したこと自体、初めてなのだ。
頭の中でぐるぐると余計なことを考えつつも、身体の動きは完全に止まっている。
ラエラはそんなリュークの顔を見上げて、首を傾げた。
「リュークザインさまの方こそ、ご不快にお感じではありませんか?」
「は? はいっ?」
突然の質問に、リュークは驚いて目を大きく見開いた。
「何やら難しいお顔をなさっておいでです。わたくしに触れるのは・・・気分が悪かったでしょうか」
あまり表情には出ていないが、どうも不安に思ったらしい。
リュークは即座に否定した。
「気分が悪いなど、とんでもない。ただ、女性に触れることに慣れておらず・・・その、どこまで触っていいものかと・・・」
「そうですか」
少しほっとして見えたのは、気のせいだろうか。
「お悩みでしたら、どうかお手を背中に回して、わたくしを抱きしめてみてくださいませ」
「抱き・・・こうか?」
リュークは、ぎこちなく腕を広げてラエラの背中に回すと、ぎゅっと抱きしめた。
ラエラの身体が、すっぽりとリュークの腕の中におさまる。
その途端、ラエラの髪からふわりと花のような香りがして。
リュークはガラにもなく、胸が高鳴るのを感じた。
「・・・」
「リュークザインさま?」
胸元に顏を寄せたラエラが、視線を上げてリュークを見つめる。
「どうかなさいまして?」
「あ、いや。なんでもない。・・・それより、どうだ。不快ではないか?」
何故だか視線を合わせることが出来ず、少しずれた方向を見ながら問い返した。
「わたくしは大丈夫です。ちっとも嫌ではありませんでしたわ」
「・・・そうか。それは・・・良かった」
「・・・リュークザインさまは?」
「は?」
「リュークザインさまは、いかがでしたか? ・・・わたくしがお側にいて、お嫌ではありませんでしたか?」
多分、顔を見て答えた方がいいのだろう。
そう思いはしたが、やはり視線を合わせる気にはなれなくて。
失礼な態度だと怒りはしないだろうか。
そう不安になりながら、いつもよりも小さな声で答えた。
「嫌では、ない」
「そうですか。でしたら問題ないかもしれませんわね」
「うむ」
それから、ぎぎぎぎぎぎ、と音がしそうな程のぎこちない動きで背中に回した腕を解くと、リュークの胸元からすっとラエラが離れた。
その時、何故か少しの寂しさを覚えたような気がして。
なにを馬鹿なことを。
これは互いに立てた条件の合意に基づく、れっきとした政略結婚だぞ。
そう思ったけれど。
「本日はありがとうございました。とても有意義な時間を過ごせましたわ」
そう言って馬車に乗り込むラエラを見送った時。
リュークに背を向けたラエラの頬が、見事なまでに朱色に染まっていたことなど、リュークザインは気づいていない。
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