【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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リュークザインの見合いについて その2

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ラエラとリュークザインは、会ったその日に互いの意思を確認して。

それからは細かな点のすり合わせと相性の確認のために、週に一回、お茶会と称して顔を合わせることになった。

それら確認事項に全て問題がなければ、晴れて婚約、という段取りだった。

だったのだが。

一回目の顔合わせにはシュリエラも同席し、話をしてもらった。
意見をはっきり口にするラエラに対し、シュリエラは付き合いやすいと好印象を持ったようだ。

シャルムは領地から呼び戻さねばならないので、あと少ししてから会うことになる。
それも恐らく問題ないだろう。

二回目の顔合わせ。
領地の経営方針や、王都内の邸管理についての意見を交換した。

ラエラ嬢の非常に建設的、かつ合理的な考え方に感心した。
やはり見込んだ通りの才女のようだ。

三回目の顔合わせ。
婚約、結婚となった場合の希望や意見などについて聞いてみた。
式の規模や希望する日程など、ラエラ嬢の意見も聞いて、可能な限り取り入れたいと思っていたから。

だが、彼女からは特に強く望むことはない、と言われ、ライプニヒ家の体面に傷がつかないように采配は全て私に任されることになった。

非常に理性的な対応に感心した。
この令嬢が感情的になることなどないのでは、と思うほどに。

だが、四回目の顔合わせで。
彼女は私が予想だにしなかった事を言ってきた。

「相性が心配なのです」と。

「・・・は?」

意味が分からず、少しばかり呆けた声が出てしまった。

「私の性格に、何か不安が?」
「いえ、そうではなく」
「では一体、何が心配なのだ?」

問い返す私に、一瞬、押し黙って。

・・・なんだ?
ラエラ嬢が言い淀むとは珍しい。

黙って言葉の続きを待っていると、ラエラ嬢にしては珍しく少しばかり俯いて、言いづらそうにしている。

「もし心にかかることがあるのならば、遠慮なく言ってもらいたい。このままいけば、私たちは婚約する仲なのだから」

そう伝えると、ラエラ嬢は意を決したように顔を上げ、口を開いたが、その口調はこれまでの印象とは全く違う、小さなものだった。

「夫婦生活の・・・相性が気にかかっておりまして」
「・・・は?」

私の聞き間違いだろうか。
訝し気な声で聞き返してしまった。

「リュークザインさまのお人柄や能力の高さは、よく存じ上げております。ですが、それと夫婦生活の相性とは全く別でございます。貴族間の政略結婚である以上、世継ぎを生むことは妻となる者の義務と言ってもよいでしょう。そのための夫婦生活の相性が良くなかった場合、結婚生活そのものが苦痛に感じる可能性が高いと思われ・・・」
「ちょ、ちょ、ちょっと待て」

私は思わず声を上げて話を遮った。

この女性ひとは何を言ってるんだ?
いや、話の内容は理解る。理解るけれども。

今、話し合うことか?
いや、結婚してからでは遅いのか、だから今なのか。
ここで慌てている私が可笑しいのか?

そもそもその、、相性の確認って、どうするつもりだ?
というより、結婚を考えている者であれば皆することなのか?

ラエラ嬢は黙って私の答えを待っている。

私はごくりと唾を呑んだ。

そして、努めて落ち着いた声で話し出す。
自分の理解が間違っていることを願いつつ。

「・・・つまり、そちらの方の相性の確認をしたい、と?」
「左様でございます」

間違っていなかった。
いや、待て。私の言い方が婉曲的だったのかもしれない。

もう一度、言い直してみる。

「夜の営みをするにあたり、身体の相性を確認する、という事でよろしいと?」
「はい」

脱力した。愕然とした。
ここまで合理的、かつ実際的な考え方をする女性ひとだったとは。

いや、この場合、合理的という言葉で済ませていいのか?
大体、身体の相性の確認って、どうやるんだ。

まさか。・・・まさか?

「・・・ラエラ嬢」
「はい」
「君は・・・婚前交渉を望んでいるのか?」

配偶者として理想的な女性と考えていたが、もしや、ふしだらな側面があるのかもしれない。
道徳観念が欠落しているのであれば、たとえ能力面でどれだけ優れているとしても、妻とするには危険すぎる。

そうであれば、この見合い話はここで終りにせねばならない。

しかし、ラエラ嬢はその言葉をあっさりと否定した。

「とんでもございません」
「・・・では、どうやって確認すると?」
「実際の行為に及ばずとも、触れればそれなりに相性の良し悪しが分かると聞きました」
「・・・触れる・・・」
「はい。ですからその方法で確認すればよろしいかと」
「・・・つまり、私が君に触れてみて、君が嫌だと感じるかどうかを試せ、と」
「はい」

どうやら、ふしだらな考えでそんな事を言いだした訳ではないようだ。
だがまさか、ここまで周到に確認を怠らないとは思いもしなかったが。

・・・仕方ない。

結婚後に不仲になるよりは、今、確認を、と言うのであれば、そうしてやる方がいいのだろう。

「わかった」

テーブル越しに座っていた椅子から、立ち上がり、ゆっくりとラエラ嬢の下へ行く。

触れる。
だが、どこまで触れればいいのだろうか。

まあ、それは本人の反応を見ながら考えるしかあるまい。

ラエラ嬢の席まで行き、私は座っている彼女の顔を見下ろした。
ラエラ嬢も真っ直ぐに私を見つめている。

「では・・・触れるぞ」

私は、彼女に向かってそっと手を伸ばした。
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