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夜会の堂々密会
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久しぶりに王城で開催された夜会には、大勢の人たちが集っていた。
今の時期は国内外から王都に人が集まっているため、その賑わいは一層際立っていた。
集まった人々は皆、美しく着飾り、会話をし、音楽に合わせて踊っている、
純粋に社交を楽しむ者、何か思惑があって集っている者、何らかの役割を持ってそこにいる者、とその内訳は様々だ。
「あーあ、なんでオレがこんなこと・・・」
エメラルドグリーンのドレスを着た可愛らしい少女の手を引きながら、ライナスバージ・ロッテングルムはぼやいていた。
隣の少女はハニーブロンドの後れ毛を揺らしながら、別段腹も立っていない様子で文句を言う。
「もう、相変わらず失礼ね。こんな可愛らしいレディをエスコートできて幸せだとか思わないの?」
「お前じゃなきゃそう思ってるかもしれないけどさ」
「なによ、どうせ武骨者の貴方のことだから、女の子をエスコートしたこともないんでしょ? ようやく機会が訪れたんだから、もっと素直に喜べばいいじゃないの」
ちなみに、ここまで全て小声である。
そして顔面には笑顔を貼り付けている状態だ。
だから傍目には、にこにこと笑みを浮かべながら何か話しているようにしか見えない。
「お前こそ失礼なやつだな。エスコートは、別にお前が初めてじゃねぇよ」
「へえ?」
少女の眼がきらりと輝く。
「よかったじゃない、ライナス。やっと相手してくれる女の子が現れたのね? で、その子はどこ?」
「あ?」
「だから、その子、今夜はどこにいるの?」
「・・・お前、今日、オレがお前を連れてきた目的を忘れてるんじゃないだろうな」
「忘れてないわよ。いいじゃない、顏ぐらい教えてくれたって。ね? どこにいるの、その子?」
「・・・教えねぇよ。ほら、行くぞ」
ぐい、と強く手を引かれ、話を強制的に終わらされてしまう。
そして打ち合わせ通りに、ホール奥側に歩みを進める。
「やあ、ライナス」
「ごきげんよう。あら、そちらの方は? 初めてのお顔のようですが」
「こんばんは、王太子殿下、そしてカトリアナ嬢。こちらは我が従妹にございます。辺境から今遊びに来ておりまして」
「お初にお目にかかります。ルナフレイア・ロッテングルムにございます」
優雅にカーテシーをしたところで、背後から声をかけられる。
「おや、ライナスバージではないか。お前がこのような場に女性を同伴しているとは珍しい。そちらの美しいご令嬢はどなたかな?」
「これはこれはリュークザイン。オレの従妹だよ。普段は北の辺境伯領にいるから顏を会わせるのは初めてだろう。そちらが噂の婚約者殿か?」
「はじめまして。ラエラ・カリエスと申します。剣豪と名高いライナスバージさまにお会い出来て光栄です。ルナフレイアさまも、こちらにいらっしゃる間、仲良くしていただけると嬉しいですわ」
レオンハルトとリュークザイン、そしてライナスバージがそれぞれ給仕からデュールの注がれたグラスを受け取り、各々のパートナーにも手渡す。
ルナフレイアが給仕の男に視線を巡らし、一瞬、片方の口角を上げたのをリュークザインは見逃さなかった。
「ところでルナフレイア嬢。花の如く美しいご令嬢にこのような不躾な質問をする事を許してほしいのだが」
「なんなりと。リュークザインさま」
「ロッテングルム家の者たちは皆、武術に長けていると聞く。その一員である貴女も、その可憐な容姿に似合わぬ腕をお持ちなのかな?」
「そうですね。ロッテングルムの名に恥じない程度の嗜みはございます」
「まあ、素敵。貴女のような素敵なご令嬢が武術をなさるなんて。ねえ、レオンさま?」
「そうだね」
レオンハルトの予想していた通り、このいかにもカトリアナが好きそうな話題に嬉々として喰いついたのを見て、ふ、と苦笑が漏れた。
ぷうっと頬が膨れたのに気づき、レオンが慌てて訂正する。
「ああ、ごめん。つい面白くてね、君の反応が」
「・・・だって素敵じゃないですか。こんなお可愛らしい方が剣がお強いとか」
「ふふ、そうだね。うん、ホント。・・・ええと、それで? 得意な分野はあるのかい?」
「得意・・・ですか。まあ、どれも好きなのですが、そうですね。弓が一番得意です。次は短剣でしょうか。投げナイフも結構得意ですけれど」
「そうなんだ。凄いね」
「まあ、そうは言ってますけどね、殿下。コイツはそれ以外の武器だってどれも普通に使いこなせますよ」
「・・・ちなみに好奇心から聞くが、ライナスとやり合ったことはあるのか?」
興味深げに耳を傾けていたリュークザインが、ふと思いついた疑問を口にした。
それにライナスは、思い切り嫌な顔をする。
「リューク、お前な。なに言ってるんだよ。うちはロッテングルムだぞ? あるに決まってるだろ?」
「へえ、それで? 結果はどうだったの?」
「・・・365勝35敗76引き分け、だっけ」
「うーん、真面目に数えてないからな。たぶん、そのくらいかしら?」
「ライナスに勝ったことあるんだ。本当に強いんだね」
「勝ったのは全部子ども時代の試合ですけどね」
少し残念そうにルナフレイアは謙遜した。
「いや、コイツはそう言ってますけど、実力はロッテングルムの中でもぴか一ですよ。だから叔父の家はコイツに跡を継がせようなんて話も・・・」
「ライナス」
「・・・っとゴメン」
ライナスは慌てて口をつぐみ、気まずそうに視線を泳がせた。
そんなライナスの態度を気にした様子もないルナフレイアは、レオンハルトたちの方に真っ直ぐに目を向けた。
「いかがでしたか?」
「・・・は?」
「お眼鏡には適いましたでしょうか?」
「・・・」
レオンハルトとリュークザインが視線を交わし頷きあうと、リュークザインが「殿下」と仰々しく礼をした。
「申し訳ありませんが、用を思い出したのでここで失礼いたします」
「わかった。・・・ああ、ライナス、それにルナフレイア嬢。君たちも僕に気を遣わなくていいよ。好きなところを回っておいで」
「畏まりました」
その言葉を合図に、リュークザインが、そしてレオンハルトたちがホールを去る。
ルナフレイアといえば、その後すぐにライナスに導かれるがまま、ホールを抜けて休憩用に準備された一室へと入っていった。
今の時期は国内外から王都に人が集まっているため、その賑わいは一層際立っていた。
集まった人々は皆、美しく着飾り、会話をし、音楽に合わせて踊っている、
純粋に社交を楽しむ者、何か思惑があって集っている者、何らかの役割を持ってそこにいる者、とその内訳は様々だ。
「あーあ、なんでオレがこんなこと・・・」
エメラルドグリーンのドレスを着た可愛らしい少女の手を引きながら、ライナスバージ・ロッテングルムはぼやいていた。
隣の少女はハニーブロンドの後れ毛を揺らしながら、別段腹も立っていない様子で文句を言う。
「もう、相変わらず失礼ね。こんな可愛らしいレディをエスコートできて幸せだとか思わないの?」
「お前じゃなきゃそう思ってるかもしれないけどさ」
「なによ、どうせ武骨者の貴方のことだから、女の子をエスコートしたこともないんでしょ? ようやく機会が訪れたんだから、もっと素直に喜べばいいじゃないの」
ちなみに、ここまで全て小声である。
そして顔面には笑顔を貼り付けている状態だ。
だから傍目には、にこにこと笑みを浮かべながら何か話しているようにしか見えない。
「お前こそ失礼なやつだな。エスコートは、別にお前が初めてじゃねぇよ」
「へえ?」
少女の眼がきらりと輝く。
「よかったじゃない、ライナス。やっと相手してくれる女の子が現れたのね? で、その子はどこ?」
「あ?」
「だから、その子、今夜はどこにいるの?」
「・・・お前、今日、オレがお前を連れてきた目的を忘れてるんじゃないだろうな」
「忘れてないわよ。いいじゃない、顏ぐらい教えてくれたって。ね? どこにいるの、その子?」
「・・・教えねぇよ。ほら、行くぞ」
ぐい、と強く手を引かれ、話を強制的に終わらされてしまう。
そして打ち合わせ通りに、ホール奥側に歩みを進める。
「やあ、ライナス」
「ごきげんよう。あら、そちらの方は? 初めてのお顔のようですが」
「こんばんは、王太子殿下、そしてカトリアナ嬢。こちらは我が従妹にございます。辺境から今遊びに来ておりまして」
「お初にお目にかかります。ルナフレイア・ロッテングルムにございます」
優雅にカーテシーをしたところで、背後から声をかけられる。
「おや、ライナスバージではないか。お前がこのような場に女性を同伴しているとは珍しい。そちらの美しいご令嬢はどなたかな?」
「これはこれはリュークザイン。オレの従妹だよ。普段は北の辺境伯領にいるから顏を会わせるのは初めてだろう。そちらが噂の婚約者殿か?」
「はじめまして。ラエラ・カリエスと申します。剣豪と名高いライナスバージさまにお会い出来て光栄です。ルナフレイアさまも、こちらにいらっしゃる間、仲良くしていただけると嬉しいですわ」
レオンハルトとリュークザイン、そしてライナスバージがそれぞれ給仕からデュールの注がれたグラスを受け取り、各々のパートナーにも手渡す。
ルナフレイアが給仕の男に視線を巡らし、一瞬、片方の口角を上げたのをリュークザインは見逃さなかった。
「ところでルナフレイア嬢。花の如く美しいご令嬢にこのような不躾な質問をする事を許してほしいのだが」
「なんなりと。リュークザインさま」
「ロッテングルム家の者たちは皆、武術に長けていると聞く。その一員である貴女も、その可憐な容姿に似合わぬ腕をお持ちなのかな?」
「そうですね。ロッテングルムの名に恥じない程度の嗜みはございます」
「まあ、素敵。貴女のような素敵なご令嬢が武術をなさるなんて。ねえ、レオンさま?」
「そうだね」
レオンハルトの予想していた通り、このいかにもカトリアナが好きそうな話題に嬉々として喰いついたのを見て、ふ、と苦笑が漏れた。
ぷうっと頬が膨れたのに気づき、レオンが慌てて訂正する。
「ああ、ごめん。つい面白くてね、君の反応が」
「・・・だって素敵じゃないですか。こんなお可愛らしい方が剣がお強いとか」
「ふふ、そうだね。うん、ホント。・・・ええと、それで? 得意な分野はあるのかい?」
「得意・・・ですか。まあ、どれも好きなのですが、そうですね。弓が一番得意です。次は短剣でしょうか。投げナイフも結構得意ですけれど」
「そうなんだ。凄いね」
「まあ、そうは言ってますけどね、殿下。コイツはそれ以外の武器だってどれも普通に使いこなせますよ」
「・・・ちなみに好奇心から聞くが、ライナスとやり合ったことはあるのか?」
興味深げに耳を傾けていたリュークザインが、ふと思いついた疑問を口にした。
それにライナスは、思い切り嫌な顔をする。
「リューク、お前な。なに言ってるんだよ。うちはロッテングルムだぞ? あるに決まってるだろ?」
「へえ、それで? 結果はどうだったの?」
「・・・365勝35敗76引き分け、だっけ」
「うーん、真面目に数えてないからな。たぶん、そのくらいかしら?」
「ライナスに勝ったことあるんだ。本当に強いんだね」
「勝ったのは全部子ども時代の試合ですけどね」
少し残念そうにルナフレイアは謙遜した。
「いや、コイツはそう言ってますけど、実力はロッテングルムの中でもぴか一ですよ。だから叔父の家はコイツに跡を継がせようなんて話も・・・」
「ライナス」
「・・・っとゴメン」
ライナスは慌てて口をつぐみ、気まずそうに視線を泳がせた。
そんなライナスの態度を気にした様子もないルナフレイアは、レオンハルトたちの方に真っ直ぐに目を向けた。
「いかがでしたか?」
「・・・は?」
「お眼鏡には適いましたでしょうか?」
「・・・」
レオンハルトとリュークザインが視線を交わし頷きあうと、リュークザインが「殿下」と仰々しく礼をした。
「申し訳ありませんが、用を思い出したのでここで失礼いたします」
「わかった。・・・ああ、ライナス、それにルナフレイア嬢。君たちも僕に気を遣わなくていいよ。好きなところを回っておいで」
「畏まりました」
その言葉を合図に、リュークザインが、そしてレオンハルトたちがホールを去る。
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