【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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愛情溢れるティータイム

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「レオンが情報を感謝していたよ。それからお大事にって」
「そうですか。良かった、嬉しいですわ」

ここのところ強い吐き気にずっと悩まされているエレアーナは、以前よりも少しやつれてしまって、そこはかとない儚げな色気が増している。

挨拶で軽い口づけを頬に落とし、ケインバッハは愛する妻のためにお茶を準備し始めた。

水を飲んでも吐いてしまう時がある。
それで考えたのが、グリーンティーの茶葉にミントをブレンドしたオリジナルティーだ。

これに少しだけ砂糖を加えて出すと、清涼感がある為か飲んでもエレアーナの吐き気が抑えられるのだ。

まだまだ窶れてはいるが、水分も取れずに衰弱が心配されていた頃と比べると、肌に生気が戻ってきたようで、ケインはそれが嬉しくて。
自分でも煎れ方を覚え、こうして時間を見つけては手ずから妻にお茶を煎れている。

「いい香り・・・」

受け取ったカップから立ち昇る爽やかなミントの香りを、エレアーナは深く吸い込んだ。

香りだけでもかなり吐き気が抑えられることに気づいたのは最近になってから。

お陰で今は、ずっと楽に過ごせるようになった。

「随分と痩せてしまったな・・・」
「これも勲章ですわ。お腹の子のためですもの」

いつも心配そうに側で寄り添う夫に、エレアーナはにっこりと微笑みかける。

「それに・・・」
「? それに?」
「こうやって一つ一つ覚えていけば、次のときにはきっと楽になりますもの」

頬を染め、嬉しそうにそう語る妻を見て、ケインは首を傾げた。

「次?」
「ええ」

エレアーナは、ベッドの傍に腰掛ける夫の手をそっと握った。

「次の赤ちゃんがお腹に来たとき、ですわ」

その言葉にケインが一瞬でぼっ、と赤くなる。

「二人目の赤ちゃんのときは、きっと悪阻の対処も今より出来るようになっているでしょう? きっとこの先に覚えることもそうですわ。ふふ、そう思うと楽しみじゃありません?」
「あ、ああ・・・。そう、だな」

口元を手で覆い、真っ赤になって俯いたケインは、曖昧に言葉を返すとそのまま押し黙った。

何かまずいことでも言ったのだろうか、とエレアーナが怪訝な表情を浮かべていることに気付いたケインは、一旦口を開いて、でも何も言わずにまた閉じて。

少しの間迷ってから、思い切ったように口を開いた。

「ええと、変な反応をして済まない。・・・その、そんな可愛い事を言われたら、今はちょっと困る、というか・・・」
「困る・・・のですか? ケインさまは二人目は望んでいらっしゃらないのですか?」
「いや、そうじゃなく」

エレアーナは不思議そうにケインを見つめているだけだが、ケインの方はと言えば、耳まで、いや首まで真っ赤になっている。

「その・・・今、控えてるだろ? 俺たちの・・・夫婦、生活・・・」
「え?」
「辛そうにしてるレアナの前で・・・こんな事言うのは不謹慎、なんだが・・・二人目なんて言われたら・・・ええと・・・そ」

段々と小さくなっていった声は、最後には聞こえないくらいになって、空気に溶けた。

「そ?」
「・・・そ、想像、してしまって・・・その、レアナをまた・・・抱ける、日、を・・・」

絞り出すように、小さくそれだけを言った。

「・・・まあ・・・」

ケインから告げられて初めて、その胸中を察したエレアーナは、それきり俯いて黙り込んでしまった夫を改めて見つめ返した。

「ありがとうございます、ケインさま。そう言っていただけて・・・嬉しいですわ」
「・・・」

ケインの手をずっと握っていた自分の手の指に、更にぎゅっと力を込める。

「・・・わたくしも、その日を楽しみにしておりますわ。また存分に愛して下さいませね」
「・・・今それを言わないでほしい・・・。もしかして困らせようとしていないか?」
「ふふ。あら、分かってしまいました? ケインさまの困ったお顔、わたくし大好きなんですのよ?」

悪戯っぽく笑ったエレアーナを見て、ケインバッハは苦笑する。

「・・・君は、意地悪なところがあるんだな」
「嫌われてしまいましたかしら?」
「まさか」

ケインは少し前に屈んで、エレアーナの頬に再び唇を落とした。

悪阻の刺激にならないように、と、ケインはここ最近、唇への口づけも自粛しているようだ。

そこまで気を使わなくてもいいのに、と、エレアーナはこっそりと苦笑するが、確かにそんな気遣いに助けられているのも事実で。

ゆっくりとケインの唇がエレアーナの頬から離れる。

エレアーナの顔のすぐ近くで、ケインバッハは穏やかに笑った。

「俺が君を嫌うなんてあり得ない。・・・まあ、でも、意地悪は程々にしておいて貰えると助かるかな」

そう言うと、きゅっとエレアーナを抱きしめた。

「じゃないと、我慢の限界が来てしまいそうだ」
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