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問題は
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カリューガ子爵邸へと馬車を駆るのは、ラエラ・ライプニヒ。
馬車の中では、ルナフレイアが纏っていた夜会用の華美なドレスの裾をビリリと引き裂いている。
膝より少し下くらいにまで短くなったドレスは、裾周りは悲惨なことになっているにもかかわらず、何故かルナフレイアの纏う剣呑な空気としっくり合っていて。
紺色の鬘を外し、ヒールを厚底のブーツに履き替える。
そして馬車に予め乗せておいた武器を次々と装着していった。
ルナは、御者台に座るラエラへと声を張り上げる。
「門前まで行かなくても大丈夫ですよ。少し手前で降ろしていただければそれで」
「・・・わたくしの身を案じてらっしゃるの? でしたら無用の心配ですわ。わたくしも闘える人間です」
躊躇なく返された答えに、今度はルナフレイアが迷いを見せる。
「ですが・・・」
「わたくしのライバルであるベルフェルトさまの危機ですのよ? わたくしが此処で控えて、彼に何かあったら夫に会わせる顔がありませんわ」
そう叫びながら、ラエラは更に馬をけしかける。
「えっ? ラエラさまのライバル? ええっ? それってどういう・・・」
「わたくしのつまらない焼き餅ですわ。余り悩まないでくださいませ」
「ええと、はあ・・・分かりました」
微妙な表情で頷いたルナフレイアは、がさごそと動いていたかと思えば、長剣一振りと短剣を二振りをラエラに差し出した。
「それではラエラさま、こちらを・・・これで足ります?」
「念のため、短剣をあと二振り。もし有れば、ですけれど」
「大丈夫です。たっぷり積んでおきましたから」
国境を守り続けたロッテングルムの血統故なのか、危機的な状況になればなるほど更に生き生きとする表情は、味方にとっては妙に安心感を抱かせるもので。
「今、参りますからね。ベルフェルトさま」
祈るような呟き。
だが、そう呟いた刹那、カリューガ子爵邸のある方向で数えきれない程の爆発音がした。
「ルナフレイアさま」
「ええ。・・・始まったみたいね」
ルナフレイアは、ぐっと拳を握りしめた。
「なんだっ? 何の音だっ?」
「旦那さまっ、裏口の方から火が上がりましたっ!」
「二階の客間からもの凄い爆音が・・・っ!」
「旦那さま、外に火柱が上がるのが見えましたっ」
「きゃああああっ!」
「奥さま、そちらは危険です。どうぞこちらへ・・・っ」
カリューガ子爵邸は、上に下にと大騒ぎになっていた。
ベルフェルトが用意した癇癪玉の音は凄まじく、まるで小さな爆発でも起きたかのような錯覚を起こさせる。
加えて火薬玉は、ほんの数分ではあるが盛大な火花を撒き散らし、周囲の者たちを逃げ惑わせた。
あちらこちらと逃げ回る人々の中、一人になったところを見計らって相手を確実に倒していく。
・・・家の中にいた者たちは、寧ろ簡単だ。奴らは戦闘に関しては素人だからな。
そう、問題は。
ベルフェルトは、窓からちらりと外を覗いた。
庭や邸周りを私兵たちが走り回っている。
カリューガ子爵が抱える私兵たち。
見たところ、そちらを倒せたのはまだ数名、といったところか。
そこへ、階段を駆け上がる重々しい足音がした。
どうやらベルフェルトのいる部屋に向かっているらしい。
・・・賢者くずれの保護、か。
奴らにとっては大事なカード。
王国への不忠を問われるような行為に手を染めてもいい、と、思える程の。
ベルフェルトは、先ほど脱ぎ捨てた黄土色の鬘を手に取った。
そしてベッド脇に行くと、布団を丸めてある程度の厚みを作る。
おっと、そうだ。窓を開け放っておかねばな。
侵入経路を分かりやすく提示しておかねば、あちらも簡単に騙されてはくれなくなる。
ばん、と窓を開け放ち、ベッドの横に戻って来たところで、扉を激しく叩く音がした。
「賢者さまっ! ワイジャーマさまっ! ご無事ですかっ!」
ベルフェルトは万端を整えて、だが無言のまま私兵たちの反応を待った。
足音からしておよそ十数名。
ここでなるべく大人数を引きつけねばならない。
恐らく、じきに邸内の家人および召使いたちは制圧出来る筈。
あとは私兵たちをどうやって抑えこむか、だが。
返事がないのに焦れたのか、内側から施錠していたというのに、兵たちは扉を荒々しく叩きだすと、やがて勢いよく蹴破った。
そこで兵たちが目にした光景は。
ベッドの上で、ぐるぐるに布団で巻かれて横たわっている賢者の姿と。
賢者を抱え込むようにして座る紫の髪の美男子。
そして、その男の手には短剣が握られており、横たわる賢者の首元に当てている・・・ように見えた筈だ。
「なっ? 賢者さまに何を・・・っ! お前は何者だっ? どこから入った?」
そう言いながら、ベルフェルトの背後に開け放たれた窓があるのを見て、問うのも無駄だと考えたのか。
ぎっとベルフェルトを見据えると、兵たちは腰から剣をすらりと抜いた。
「おっと、それ以上は近づくな。オレの手にあるこの剣が見えない訳でもあるまい?」
ベルフェルトはそう言うと、丸めた布団に鬘を添えただけのモノに剣を押し当てた。
馬車の中では、ルナフレイアが纏っていた夜会用の華美なドレスの裾をビリリと引き裂いている。
膝より少し下くらいにまで短くなったドレスは、裾周りは悲惨なことになっているにもかかわらず、何故かルナフレイアの纏う剣呑な空気としっくり合っていて。
紺色の鬘を外し、ヒールを厚底のブーツに履き替える。
そして馬車に予め乗せておいた武器を次々と装着していった。
ルナは、御者台に座るラエラへと声を張り上げる。
「門前まで行かなくても大丈夫ですよ。少し手前で降ろしていただければそれで」
「・・・わたくしの身を案じてらっしゃるの? でしたら無用の心配ですわ。わたくしも闘える人間です」
躊躇なく返された答えに、今度はルナフレイアが迷いを見せる。
「ですが・・・」
「わたくしのライバルであるベルフェルトさまの危機ですのよ? わたくしが此処で控えて、彼に何かあったら夫に会わせる顔がありませんわ」
そう叫びながら、ラエラは更に馬をけしかける。
「えっ? ラエラさまのライバル? ええっ? それってどういう・・・」
「わたくしのつまらない焼き餅ですわ。余り悩まないでくださいませ」
「ええと、はあ・・・分かりました」
微妙な表情で頷いたルナフレイアは、がさごそと動いていたかと思えば、長剣一振りと短剣を二振りをラエラに差し出した。
「それではラエラさま、こちらを・・・これで足ります?」
「念のため、短剣をあと二振り。もし有れば、ですけれど」
「大丈夫です。たっぷり積んでおきましたから」
国境を守り続けたロッテングルムの血統故なのか、危機的な状況になればなるほど更に生き生きとする表情は、味方にとっては妙に安心感を抱かせるもので。
「今、参りますからね。ベルフェルトさま」
祈るような呟き。
だが、そう呟いた刹那、カリューガ子爵邸のある方向で数えきれない程の爆発音がした。
「ルナフレイアさま」
「ええ。・・・始まったみたいね」
ルナフレイアは、ぐっと拳を握りしめた。
「なんだっ? 何の音だっ?」
「旦那さまっ、裏口の方から火が上がりましたっ!」
「二階の客間からもの凄い爆音が・・・っ!」
「旦那さま、外に火柱が上がるのが見えましたっ」
「きゃああああっ!」
「奥さま、そちらは危険です。どうぞこちらへ・・・っ」
カリューガ子爵邸は、上に下にと大騒ぎになっていた。
ベルフェルトが用意した癇癪玉の音は凄まじく、まるで小さな爆発でも起きたかのような錯覚を起こさせる。
加えて火薬玉は、ほんの数分ではあるが盛大な火花を撒き散らし、周囲の者たちを逃げ惑わせた。
あちらこちらと逃げ回る人々の中、一人になったところを見計らって相手を確実に倒していく。
・・・家の中にいた者たちは、寧ろ簡単だ。奴らは戦闘に関しては素人だからな。
そう、問題は。
ベルフェルトは、窓からちらりと外を覗いた。
庭や邸周りを私兵たちが走り回っている。
カリューガ子爵が抱える私兵たち。
見たところ、そちらを倒せたのはまだ数名、といったところか。
そこへ、階段を駆け上がる重々しい足音がした。
どうやらベルフェルトのいる部屋に向かっているらしい。
・・・賢者くずれの保護、か。
奴らにとっては大事なカード。
王国への不忠を問われるような行為に手を染めてもいい、と、思える程の。
ベルフェルトは、先ほど脱ぎ捨てた黄土色の鬘を手に取った。
そしてベッド脇に行くと、布団を丸めてある程度の厚みを作る。
おっと、そうだ。窓を開け放っておかねばな。
侵入経路を分かりやすく提示しておかねば、あちらも簡単に騙されてはくれなくなる。
ばん、と窓を開け放ち、ベッドの横に戻って来たところで、扉を激しく叩く音がした。
「賢者さまっ! ワイジャーマさまっ! ご無事ですかっ!」
ベルフェルトは万端を整えて、だが無言のまま私兵たちの反応を待った。
足音からしておよそ十数名。
ここでなるべく大人数を引きつけねばならない。
恐らく、じきに邸内の家人および召使いたちは制圧出来る筈。
あとは私兵たちをどうやって抑えこむか、だが。
返事がないのに焦れたのか、内側から施錠していたというのに、兵たちは扉を荒々しく叩きだすと、やがて勢いよく蹴破った。
そこで兵たちが目にした光景は。
ベッドの上で、ぐるぐるに布団で巻かれて横たわっている賢者の姿と。
賢者を抱え込むようにして座る紫の髪の美男子。
そして、その男の手には短剣が握られており、横たわる賢者の首元に当てている・・・ように見えた筈だ。
「なっ? 賢者さまに何を・・・っ! お前は何者だっ? どこから入った?」
そう言いながら、ベルフェルトの背後に開け放たれた窓があるのを見て、問うのも無駄だと考えたのか。
ぎっとベルフェルトを見据えると、兵たちは腰から剣をすらりと抜いた。
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