【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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それをいちゃついていると言う

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「ええとね、いい雰囲気を出してるところで申し訳ないけどさ」

ベルフェルトとルナフレイアの間に堂々と割って入ったのはレオンハルトだった。

「ここも君たちのお陰で早めに片が付いたみたいだし、僕もさっさと帰りたいんだよね。カトリアナが心配してるだろうからさ」

見れば捕縛はすでに終わり、全員が順々に護送され始めている。
ルナフレイアたちの活躍のお陰で元気があり余っている騎士たちは、よほど張り切って仕事をしたようだ。

「まあ、まずは関係者から事情聴取を行うとして、後でスカッチ伯にも来てもらわないとね。・・・僕のカトリアナに手を出そうとしたんだから」

おおっと、もの凄く低い声。
殿下、そんなドスの効いた声が出せるんですね。
それにしても、笑っているのに剣を突き付けられたかのような鋭い殺意を発するとは、何と器用な方だろう・・・などと呑気に思ったり出来るのは、この殺意の対象外であるルナフレイアたちだけなのだろう。

騎士たちに後ろ手に縛られ、連行されていく貴族たちは、その向けられた殺気に、恐怖で引きつった顔をしている。

レオンハルトがふう、と息を吐く。
纏う空気が、少しだけ和らいだ。

「僕もカトリアナに抱きついて無事を確認したかったところを、必死で我慢して此処に来たんだからさ、ベルフェルトたちもあまり僕の前でいちゃつかないで欲しいな。刺激されちゃうでしょ」

いちゃ、いちゃつく・・・。

まただ。また言われてしまった。
まずい、まずいわ。
いちゃつきたいのは私だけなんです、殿下。
ベルフェルトさまは何とも思ってないんです。

ああ、私が傷を確認しようとして、シャツを脱がせたりしたから。
だから、こんな誤解を招いてしまう。

ベルフェルトさまが困ってしまうのに。
約束を守りたくて、頑張ったのに。

これじゃ、また。

「・・・ああ、これはこれは失礼しました、殿下」

・・・へ? 

ふわりと肩を抱き寄せられる。
とん、と胸元に自分の体が寄せられる。

え? なに?

「では、後で存分にいちゃつかせていただくとして、ここでオレたちは、後、何をしたらいいでしょう?」

私を抱き寄せたまま、ベルフェルトさまが頭をよしよしと撫でている。

ええと、・・・ええと、これは一体、何が起こっているのかしら?

「いやいや、さっきよりももっといちゃつきが酷くなってるよね? ああ、もういいよ。城に先に戻ってて。僕も早々にここの処理を終わらせて、カトリアナを充電するから」

手を振って、しっしと追い払われてしまう。
そのやり取りも非常に新鮮だ。

・・・殿下って、カトリアナさまが絡むと本当に感情が表情に表れるのね。
いつも穏やかに笑って対応する姿しか見たことがなかった。

って、考えてるのは明らかに現実逃避よね。

いや、だって、なんかおかしい。うん、おかしいでしょ。
なんでベルフェルトさまは私の肩を抱いたまま、頭を撫で撫でし続けてるの?

しかもそのまま馬車まで歩いて行ってるし。
それから一緒に乗り込んでるし。

「・・・あの、ベルフェルト、さま?」
「落ち着いたか?」
「・・・へ?」

ベルフェルトさまが私の顔を覗き込む。
その眼は、いつもの揶揄いじゃなくて、とても心配そうで。

「あの、落ち着いたって、何を・・・」
「泣きそうな顔をしていたから」
「・・・へ?」
「さっき、すぐにでも泣きそうな顔をしていたから」
「・・・」

ベルフェルトさまがそっと手を伸ばし、私の髪や肩についた葉っぱを取ってくれる。

「もしや君も怪我をしたのか?」

そう言って、顏をぐっと近づけ、視線を巡らせる。

近い、近い、近い。
近いです、ベルフェルトさま。

「け・・・怪我はしてないです。基本、相手とは離れて闘ってましたから」
「・・・そうか?」

だったらどうして泣きそうな顔をしていたんだ、と聞きたいのだろう。
だけど、そこで踏み込まないで黙ってくれるのがベルフェルトさまだ。

近づけていた顔を離して、どさりと座席の背もたれに寄りかかる。

「何ともないのなら、いいんだ」

そう言って、ふわりと笑った。

ほらね。
気を遣いまくりのベルフェルトさまなら、きっとそう言うと思ってた。

頭を撫でてくれていた手が離れてしまったのは、正直ちょっと残念だけど。

本当、そういう優しさが、距離感が、大好き。

そんな風に心が疼いて、でもすぐに現実に引き戻される。

あと三か月。
殿下の結婚式が終わったら、私はロッテングルム領に戻らなきゃいけない。
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