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感心、狼狽、そして赤面
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「ルナの腕前は知ってたけど、ライプニヒ夫人もこんなに強かったんですね。いやぁ、噂では聞いてたんですけど、吃驚だなあ」
ライナスバージが、しきりに感心している。
リュークザインは、妻がまさかここまでするとは流石に思っていなかったようで、感心よりも心配が先に立ったようだ。
「君が強いのは聞いて知っていたが、それでもやはり心配だから、あまり無茶はしないでくれ」と、珍しく無表情を崩していた。
レオンハルトは、後発隊に指示を出して、床に転がっている者たちをどんどん拘束していっている。
些細を知らされていないであろう私兵たちは、連れて行かれても事情聴取程度で済むかもしれないが、問題はカリューガ子爵およびその手の者たち、そしてスカッチ伯爵が寄越していた者たちだ。
伯爵自身はこの場にいなかったものの、関与を否定することは不可能だろう。
まあ、素直に認めることもないだろうが。
「くそっ! せっかく賢者さまを取り返せたと思っていたのに!」
「わ、私は、私は関係ありません・・・っ!」
「言われた通りにしただけなんです・・・」
捕らえられ、連行される者たちの反応は様々だ。
それらの光景をぼんやりと眺めていたベルフェルトは、急に右腕に圧がかかるのを感じ、その方向へと目を向ける。
ルナフレイアが右腕を掴んでいた。
「怪我、したでしょう?」
「・・・ルナフレイア嬢?」
「見せてください」
「ちょっ・・・」
「肩ですね?」
止める声も耳に入らないのか、血が滲むシャツの前襟を寛げ、ばっと思い切りよく左肩をひん剥いた。
「おい、ちょっと待て・・・っ」
「待ちません。剣先に毒でも塗られていたらどうするんですか」
顔を真っ赤にして服を元に戻そうとするベルフェルトを、至って真面目な声が制する。
程よく筋肉のついた引き締まった体躯が眼前に現れるも、ルナフレイアは真剣な目つきで傷口を確認する。
傷跡の様子から、剣に毒は仕込んでいなかったと判断し、ルナフレイアは安堵の息を吐いた。
「大丈夫そうですね。どうやら毒は塗っていなかったみた・・・っ」
不安が収まったところで、ようやく自分が目の前の美青年の上半身をひん剥いたことに気づいたらしい。
ルナフレイアがぴしりと固まった。
それまで焦っていたのはベルフェルトの方だったのだが、ここに来て立場が逆転する。
ルナフレイアの顔はみるみる赤くなり、それはそれは美味しそうな林檎と見間違えるがごとく、顔から耳から首から、その見える箇所は全て真っ赤に染まり上がった。
その様子に、すっかり余裕を取り戻したベルフェルトが、ふ、と笑みを溢す。
だが、ルナフレイアはそれにすら気づかない。
ベルフェルトのシャツの襟を引き下ろした手はそのままに、ただただ固まって動けないでいる。
口は微かに動いているのだが、そこからは何の音も発していない。
「・・・ルナフレイア嬢?」
「・・・ご・・・」
「ご?」
口をぱくぱくとさせ、ようやく一言絞り出したルナフレイアに、ベルフェルトが首を傾げて問い返す。
ただでさえ美形だというのに、上半身を晒した姿で気怠げに首を傾げられたら、既にかなりのダメージを受けているルナフレイアには堪ったものではなく。
「ごっ、ごごごご・・・・ごめんなさいっ! 私っ! こんっ、こんなっ・・・!」
「・・・ああ」
こうなって仕舞えば、後はすっかりベルフェルトのベースだ。
もう自分で服は直せるだろうに、敢えてそのままの格好でにこりと、妖艶に微笑む。
「いや、構わないさ。だが君がここまで情熱的な人だったとは、流石のオレも予想がつかなかったがね」
そう言いながら前髪をかき上げて、ちらりと視線を流し、更にルナフレイアにダメージを与えていく。
「い、いやいやいや。そういうつも、つもりでは・・・」
心拍数が上がりまくりのルナフレアを見て、ベルはくすりと笑う。
「・・・残念。そういうつもりではなかったのか。じゃあ、そろそろシャツから手を離してもらっても?」
そうなのだ。
悪戯好きのベルフェルトは、勿論、トドメを刺すのを忘れない。
「うぇっ? えあっ? シャツ? 手? って、ああっ!」
ようやく自分の手がシャツを引きずり下ろしたままだったことに気がついたのか、意味不明の言葉を出しながら両手をパッとはなす。
それをベルフェルトは、落ち着いた様子で元通りに着直して。
「あ、あ、あの。ベルフェルトさま、私・・・」
「・・・ありがとう」
「ふぇ?」
この無礼をどうやって謝罪しようと慌てていたルナフレイアに、当人にとっては予想外の言葉がかけられた。
咄嗟に呆けた声を出したルナフレイアに、ベルフェルトは真剣な眼差しで語りかける。
「君とラエラ夫人が来てくれなかったら、こんな怪我では済まなかった。助かったよ。・・・本当に」
「あ・・・え、いえ、その・・・約束しましたから。それを果たしたまでです」
そう言って笑うルナフレイアは、そんなことは当然、といった感で。
そんなさりげなさもまた、ベルフェルトには好ましいものだった。
「・・・そうだったな。確か・・・オレだけが一方的に守る必要はない、・・・だったか。確かに君は全力で駆けつけてくれたようだな」
「はい、頑張りました」
・・・と笑顔で答えてから、ベルフェルトの視線が下を向いている事に気付いたルナは、ここで自分がどんな姿をしているかを思い出した。
びりびりに裾を破り取った膝丈のドレス。
背には矢筒を背負い、腰には短剣を装着したベルトを付けて。
髪には葉っぱが、ドレスのあちこちにはかぎ裂きが。
何というか、野性的で、ちぐはぐで、非常に個性的で・・・とても令嬢らしいとは言えなくて。
そうして、ルナフレイアの顔からやっと引いた赤みが、ここで再び爆発することになる。
ライナスバージが、しきりに感心している。
リュークザインは、妻がまさかここまでするとは流石に思っていなかったようで、感心よりも心配が先に立ったようだ。
「君が強いのは聞いて知っていたが、それでもやはり心配だから、あまり無茶はしないでくれ」と、珍しく無表情を崩していた。
レオンハルトは、後発隊に指示を出して、床に転がっている者たちをどんどん拘束していっている。
些細を知らされていないであろう私兵たちは、連れて行かれても事情聴取程度で済むかもしれないが、問題はカリューガ子爵およびその手の者たち、そしてスカッチ伯爵が寄越していた者たちだ。
伯爵自身はこの場にいなかったものの、関与を否定することは不可能だろう。
まあ、素直に認めることもないだろうが。
「くそっ! せっかく賢者さまを取り返せたと思っていたのに!」
「わ、私は、私は関係ありません・・・っ!」
「言われた通りにしただけなんです・・・」
捕らえられ、連行される者たちの反応は様々だ。
それらの光景をぼんやりと眺めていたベルフェルトは、急に右腕に圧がかかるのを感じ、その方向へと目を向ける。
ルナフレイアが右腕を掴んでいた。
「怪我、したでしょう?」
「・・・ルナフレイア嬢?」
「見せてください」
「ちょっ・・・」
「肩ですね?」
止める声も耳に入らないのか、血が滲むシャツの前襟を寛げ、ばっと思い切りよく左肩をひん剥いた。
「おい、ちょっと待て・・・っ」
「待ちません。剣先に毒でも塗られていたらどうするんですか」
顔を真っ赤にして服を元に戻そうとするベルフェルトを、至って真面目な声が制する。
程よく筋肉のついた引き締まった体躯が眼前に現れるも、ルナフレイアは真剣な目つきで傷口を確認する。
傷跡の様子から、剣に毒は仕込んでいなかったと判断し、ルナフレイアは安堵の息を吐いた。
「大丈夫そうですね。どうやら毒は塗っていなかったみた・・・っ」
不安が収まったところで、ようやく自分が目の前の美青年の上半身をひん剥いたことに気づいたらしい。
ルナフレイアがぴしりと固まった。
それまで焦っていたのはベルフェルトの方だったのだが、ここに来て立場が逆転する。
ルナフレイアの顔はみるみる赤くなり、それはそれは美味しそうな林檎と見間違えるがごとく、顔から耳から首から、その見える箇所は全て真っ赤に染まり上がった。
その様子に、すっかり余裕を取り戻したベルフェルトが、ふ、と笑みを溢す。
だが、ルナフレイアはそれにすら気づかない。
ベルフェルトのシャツの襟を引き下ろした手はそのままに、ただただ固まって動けないでいる。
口は微かに動いているのだが、そこからは何の音も発していない。
「・・・ルナフレイア嬢?」
「・・・ご・・・」
「ご?」
口をぱくぱくとさせ、ようやく一言絞り出したルナフレイアに、ベルフェルトが首を傾げて問い返す。
ただでさえ美形だというのに、上半身を晒した姿で気怠げに首を傾げられたら、既にかなりのダメージを受けているルナフレイアには堪ったものではなく。
「ごっ、ごごごご・・・・ごめんなさいっ! 私っ! こんっ、こんなっ・・・!」
「・・・ああ」
こうなって仕舞えば、後はすっかりベルフェルトのベースだ。
もう自分で服は直せるだろうに、敢えてそのままの格好でにこりと、妖艶に微笑む。
「いや、構わないさ。だが君がここまで情熱的な人だったとは、流石のオレも予想がつかなかったがね」
そう言いながら前髪をかき上げて、ちらりと視線を流し、更にルナフレイアにダメージを与えていく。
「い、いやいやいや。そういうつも、つもりでは・・・」
心拍数が上がりまくりのルナフレアを見て、ベルはくすりと笑う。
「・・・残念。そういうつもりではなかったのか。じゃあ、そろそろシャツから手を離してもらっても?」
そうなのだ。
悪戯好きのベルフェルトは、勿論、トドメを刺すのを忘れない。
「うぇっ? えあっ? シャツ? 手? って、ああっ!」
ようやく自分の手がシャツを引きずり下ろしたままだったことに気がついたのか、意味不明の言葉を出しながら両手をパッとはなす。
それをベルフェルトは、落ち着いた様子で元通りに着直して。
「あ、あ、あの。ベルフェルトさま、私・・・」
「・・・ありがとう」
「ふぇ?」
この無礼をどうやって謝罪しようと慌てていたルナフレイアに、当人にとっては予想外の言葉がかけられた。
咄嗟に呆けた声を出したルナフレイアに、ベルフェルトは真剣な眼差しで語りかける。
「君とラエラ夫人が来てくれなかったら、こんな怪我では済まなかった。助かったよ。・・・本当に」
「あ・・・え、いえ、その・・・約束しましたから。それを果たしたまでです」
そう言って笑うルナフレイアは、そんなことは当然、といった感で。
そんなさりげなさもまた、ベルフェルトには好ましいものだった。
「・・・そうだったな。確か・・・オレだけが一方的に守る必要はない、・・・だったか。確かに君は全力で駆けつけてくれたようだな」
「はい、頑張りました」
・・・と笑顔で答えてから、ベルフェルトの視線が下を向いている事に気付いたルナは、ここで自分がどんな姿をしているかを思い出した。
びりびりに裾を破り取った膝丈のドレス。
背には矢筒を背負い、腰には短剣を装着したベルトを付けて。
髪には葉っぱが、ドレスのあちこちにはかぎ裂きが。
何というか、野性的で、ちぐはぐで、非常に個性的で・・・とても令嬢らしいとは言えなくて。
そうして、ルナフレイアの顔からやっと引いた赤みが、ここで再び爆発することになる。
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