【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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夢のまた夢

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「・・・へ?」

どうなさったんですか? と問うたら、君に好きだと言いに来た、と返された。

これは、どういうことだろう?

私、いつのまにか寝ちゃった?
都合の良い夢でも見てるのかな?

ああ、そうか。
きっと疲れが溜まって、気がついたら寝ちゃってたってやつだ。

だってこんなの、いくら何でも都合が良すぎるもんね。

すごく素敵な夢だけどね。

こんな風にサクッと告白されるなんて、たとえ夢でも嬉しすぎる。

しかもいつもの変装した姿じゃなくて、エイモス伯爵当主そのままの見目麗しい姿だというオマケ付き。

「ルナフレイア嬢?」

ああ、ベルフェルトさまが私の返事を待っている。
首を傾げて、じっと私を見つめている。

素敵・・・なんて見惚れている場合じゃない。

こうなったら、私もサクッと応えてしまおう。

夢の中くらいは好きにしてもいいと思うし。
どうせ、領地に帰る前日には玉砕する予定だったし。

うん、その時の告白の予行演習だと思えばいい。

よし。

私はベルフェルトさまを見上げた。

・・・だけど。
なんか凄いリアルだなぁ。

それに、夢でも緊張ってするものなのね。

ベルフェルトさまの切長の瞳に、思わず吸いこまれそうな感覚を覚えて、一気に顔に熱が集まる。

うん、美形って、最強。
美形って、ずるい。

そんな事を考えていたから、まず最初に口から出てきたのは恨み節っぽくなった。

「美形で、剣の腕が立って、仕事でも有能で・・・なんかずるいですよね、ベルフェルトさまは」

ベルフェルトさまは、おや、って顔をしたけど、そこは気にしないでおこう。
だって、夢だもの。好きにしちゃおう。

「意地っ張りで、真面目で、人に助けを求めるのが下手で、いつもひとりで何とかしようとしてて・・・」
「何だそれは。いつかどこかで聞いた台詞だな」

・・・好きに言っちゃおうって思ってたのに、なんかあっさり遮られた。

首を軽く左右に振りながら、ベルフェルトは肩を竦める。

「あれは、いつだったか。確かカリエス商会からの帰りだったかな。君はオレの事を真面目で、働き者で、何事にも一生懸命で、優しい、と言ってくれた」

ベルフェルトがすっと前に屈みこんだせいで、その距離の近さに焦ったルナの鼓動は一気に速まる。

え? そんなこと言ったっけ?
何それ、言ってる内容は、もうほぼ告白じゃない。

「その顔は、忘れているな?」

ちらりと流された視線と共に、口元が意地悪く弧を描く。

「アナベラ嬢はオレの事が好きなんじゃないかって思っていた、と、そう君が言ったときのことだぞ?」

そう言いながら、ベルフェルトはルナフレイアのおでこを人差し指でぴん、とつついた。

ちょっと痛い。

・・・あれ、痛い?

ちょっと待って、これ、もしかして。

混乱するルナフレイアをよそに、ベルフェルトは再び口を開いた。

「実を言うと、あの時のオレは少しばかりショックを受けてたんだぞ?」
「・・・ショック、ですか? どうして?」
「リュークとオレとを比べて言った誉め言葉に、少~しばかり差があったからな」

そう言ってジト目で軽く睨みつける。

「・・・へ? 差なんて別につけて・・・」
「つけていた」

ルナフレイアの否定の言葉は、ベルフェルトによってあっさりと遮られる。

「生憎、オレは記憶力がいいのでな。あの時の君が言った言葉は一言一句、すべて覚えている。いいか? 君はリュークの事を、真面目で、働き者で、何事にも一生懸命で、優しくて、格好いい、と言ったんだ」
「・・・同じじゃないですか」

会話を続けながら、ルナは自分の勘違いを漸く理解した。

この会話が夢じゃないとしたら。
だったら。

「・・・オレのときにはなかった」
「え? なにがですか?」
「・・・こいいって言葉が」
「え? すみません、もう一度」
「・・・格好いい、と、オレの時には言ってくれなかったんだ」

ルナフレイアはぽかんと口を開けた。

「・・・それ、問題になります?」
「君からの言葉として考えるとなると、大いに問題になるぞ。なにせオレが好きだと言った君は、オレではなくリュークの方が格好いいと言ったのだからな」
「いっ・・・」

ルナフレイアは、思い切り両手を左右に振った。

「いやいやいやいや、別にそういう意味じゃないっ! ないですよ?」
「ほう、そういう意味じゃない、と?」
「ないです!」

慌てて全力で否定する。

「では、オレのことも格好いいとは思ってくれているんだな?」
「思ってます! 当たり前じゃないですか!」
「では、オレが君を好きだと言ったことは迷惑ではないのだろうか?」
「ないです! 寧ろとっても嬉しいです! だって私は・・・」

ここではっと我に返る。

「あ・・・」
「だって私は・・・どうした、その続きは?」

ベルフェルトさまは、悪戯が成功した子どもみたいな笑みを浮かべてこちらを見ている。

「わ、私は・・・私も、好き、だから」

どさくさ紛れの、なんともムードのない返事だったけど。

「そうか。ならば、オレは安心していいのだな」

ああ、この顔を見るのは二度目、だろうか。

ベルフェルトさまは破顔した。
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