【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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赤面

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「・・・話、進むの早すぎない?」

ルナフレイアの父ハリルが、婚約祝いと称してベルフェルトを交えての酒宴をロッテングルム邸にて催した、その次の日のことだ。
知らせを聞いたライナスバージは、何やら遠い目をしてそう言った。

「酒宴に招ばれなかったからと言って、そういじけるな」
「いじけてねぇわっ!」

ライナスバージは、そう言って笑いながらベルフェルトの肩を小突く。

「まあ、でも、おめでとさん。お前が動いてくれて安心したよ」

ライナスバージは頭をぽりぽりと掻きながら、ポツリと零す。

「ルナが領地でアリスの補佐をやるようになったのは、オレがアリスのことでウジウジしてたせいもあったと思うからさ」

しんみりとそう告げる様子に、ベルフェルトは少し真面目な顔になる。

「・・・アリス? 前にルナフレイア嬢と喧嘩した時に出た女性のことか? 確か姉君だと言っていた・・・」
「そ」

情けない、とでも言いたいのか、眉を下げてくしゃりと笑う。

「オレさ、好きな女に剣で負けた上に国境警護に関連した騒動の時に助けられて、その挙句、怪我させちゃったんだよね。しかも剣士にとって何より辛い、片腕を失くすほどの大怪我をさ」
「・・・」
「そいつ、元が双剣使いだったから、利き腕を失くしても剣を振り続けてさ、・・・しかもそれでも強いんだ。なんと現在、当代で最強、当主候補だよ」

俯いたまま話していたが、そこで不意に顔を上げてベルフェルトを見た。

「怪我させる直前、負けた腹いせでお前なんか大嫌いだって言っちゃってさ。十歳のガキがした事とはいえ・・・馬鹿すぎるだろ」

ベルフェルトからの返答など、求めてもいないのだろう。
それが分かっていたから、ベルもただ黙って聞いていた。

「そんなだったから、後になって好きだって告白したって信じてもらえなかった。腕を失くしたからって、気を遣ってそんな事言わなくていいよ、なんてさ、アイツ笑って言うんだ」
「・・・」
「そのまま拗れまくって、もう十年だ。流石に親父たちも呆れてさ、いい加減、気持ちを整理しろって、ロッテングルム家の役目を考えろって、二年くらい前だったかな、婚約させられそうになった。・・・ルナと」

ベルフェルトの眉が僅かに寄せられる。

「すぐに断ったけどさ、その話に怒り心頭だったのは寧ろルナの方だったな。親父たちにじゃなくて、オレにだけど」

その時のことを思い出したのだろうか、ライナスは少し遠い目で空を見上げた。

「あの時のルナは怖かったぜ? オレ、殺されるかと思ったもん」

空を見上げたまま、くすりと笑う。
でも眉が情けなく下がっているから、口調は明るくても、ライナスの本当の気持ちなどベルフェルトには丸わかりだ。

「その後すぐだ。ルナフレイアが領主代行権を求めてアリスティシアと闘ったのは」
「・・・は?」

ここで初めて、ベルフェルトは声を発した。

「ルナが勝ったら、領主代行としてこの縁談の変更を求める、負けたら代行権を勝ち取った者の言うことを聞くってさ」
「・・・それで?」

ライナスは苦笑する。

「ルナも強いけど、アリスには敵わない。何度も挑んだらしいけど、結局、ルナの負けで終わった。・・・でもアイツがさ、アリスティシアが、自分が勝ったんだから領主代行権を行使するって」

まだライナスの視線は空に向けたままだ。
ベルフェルトは無言で続きを促した。

「そう言って、オレとルナの婚約話を無しにしてくれた。好きな相手を自分で見つけて来いって。それまでは自分が、アリスがちゃんと領主代行として働くからって」

そして、ここで漸くライナスは視線をベルフェルトへと向けた。

「・・・殿下の婚姻の儀が終わったら、オレも領主代行権を求めて闘いを申し込むつもりだ」
「ルナフレイア嬢の姉君とか?」
「ああ。やっと決心がついたよ。十年、かかったけどな」
「・・・勝てそうか?」

見方によっては不躾な質問だが、ライナスはそれを気にすることなく笑顔で答えた。

「勝つよ。どんな手段を使っても、どれだけ時間がかかっても・・・つっても、殿下からは二週間しか休暇、もらってないんだけどさ」

それはいつもの晴れやかな、何の憂いもない明るい笑顔で。

「その間に絶対、何とかする。今度こそアイツを手に入れるんだ」

やっといつもの顔に戻ったな。

そう思ったベルフェルトが、お前なら出来るさ、と、そう声をかけようとした時。

賢者ラファイエラス、そしてリュークザインを伴ってシャガーン宮の地下に向かっていたレオンハルトが、所定の用事を終えて戻って来た。

彼らは、以前ラファイエラスがこの王国を去る前に仕掛けてくれた罠、良からぬ企みを抱く輩を引き寄せる賢者くずれという擬似餌を確認しに行っていたのだ。

「おやおや。どうやら此方では随分と話が弾んでいたようだな。幸せそうでなによりだ」

揶揄いまじりのラファイエラスの言葉に、ふたり揃って赤面したのは言うまでもない。
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