【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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罠の仕掛け

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「うむ、ちゃんと機能しているな」

シャガーン宮の地下、その最奥の部屋の前で立ち止まったラファイエラスは、満足気にそう呟いた。

彼は今、覗き窓から部屋の中を覗き見ている。

そこには、鎖に繋がれ、床に座る賢者くずれの姿があった。

「この間、侵入者が現れた時には、変装したベルフェルトがここに入っていたのだろう?」

振り返り、後ろに立っていた二人のうちのリュークザインの方に向けて話しかけた。

「はい。ラファイエラスさまがこの仕掛けを作って下さってから、後にも先にも装置を外したのはその時だけですので、再び上手く作動するか心配でしたが・・・」
「問題ないようだな」
「はい。この通り、賢者くずれの姿がちゃんと見えますので」

レオンハルトがすっと前に出て、ラファイエラスの隣に立った。

「この装置はいい罠になっていますよ。これまで何人も良からぬ企みを持つ者たちを引き寄せてくれました。・・・本当に賢者さまには感謝しかありません」

そう言って頭を下げたレオンハルトの姿に、ラファイエラスは思わず目を細めた。

「随分と立派になったものだ。前にあった時はあんなにしょげてたのにな」
「・・・そうでしたか?」
「そうとも」

ラファイエラスは、悪戯めいた視線を送る。

「ほれ、あの時はエレアーナを守れなかったと言って、泣きそうになっていたじゃないか」
「・・・ラファイエラスさま!」

一瞬で真っ赤になって焦り始めたレオンハルトを見て、済まん済まんと大声で笑う。

「意地の悪い冗談だったな。だが、あの経験があって今のお前がいる。可愛らしいご令嬢を見つけたじゃないか。エレアーナも美しく優しい娘だったが、レオンハルト、お前の隣にはカトリアナがいる方が私にはしっくりくる」
「・・・そう思われますか?」

少し拗ねたような口調で、確認するように、問いかけるその様子に、ラファイエラスは鷹揚に頷いた。

「ああ、そう思う。きっと将来、お前たちは穏やかで思慮深い国王夫妻となり、民からも深く愛されることになるだろう。・・・なによりお前自身がカトリアナを生涯手放しはしないだろうしな。この間、私に見せに来てくれた時も、相当な溺愛ぶりだったではないか。こっちは当てられっぱなしで大変だったんだぞ?」
「それは失礼しました。・・・カトリアナへの愛情は、どうにも隠そうとしても自然と漏れ出てしまうようで」

全く心のこもっていない謝罪を受け、ラファイエラスは楽しそうに喉を鳴らした。

「お前が幸せそうで良かった、と、まぁそういう事だ。それに・・・王座に就く者としての風格も出てきたしな」

ラファイエラスは優しげに微笑むと、すっと真剣な表情に戻り、再び件の部屋へと視線を戻した。

それを見たレオンハルトも、同じく表情を引き締める。

ラファイエラスは、壁にはめ込まれた蓋を開け、そこから大きめの透明な石を取り出し、その状態を確認する。
そして何の異常もないことを確かめると、元に戻して蓋をした。

「この装置は半永久的に使えるようになっている。水晶石を使用した幻覚だからな、石がある限り有効だ」
「・・・王国の守り手たちは、ここに賢者くずれがいると信じてやって来る愚か者たちを捕らえればいい、と、そういう事ですね」
「そうだ、これまで通りにな」

そして、水晶石の効果により室内に映し出された賢者くずれの姿を指で示しながら、傍に控えるリュークザインに語りかける。

「まあ、この先もコレが上手く馬鹿どもを引き寄せてくれるだろうさ。あんな危険で愚かな男をこの私が生かしておく筈もないというのに、そんな事も分からずに幻覚に騙されてのこのことやって来る奴らがいる限りな」
「そうですね。非常に簡単、且つ明確に不穏分子を見分けられるので大変助かっております」

そう答えると、リュークザインは深々と頭を下げた。

「水晶石と小さな術一つでこの国の平和を守れるなら安いものさ。・・・事実、私がこの国を去ってからのたった数年間で、かなりの数の幸せそうな恋人たちが誕生しているようだしな。・・・なあ、レオンハルトにリュークザイン、私はもしかすると、ワイジャーマであるよりも、仲人にでもなった方が良いのかもしれんぞ?」
「それはある意味、妙案かもしれませんが」

リュークザインは、あくまで真面目な顔で返答する。

「そうなると、世界中からリーベンフラウン王国が妬まれてしまいそうですね。幸せをこの国だけで独り占めにする気か、と」
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