転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第333話 デインの街の様子

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『聞いたわよぉ!あの薬屋に怪しい男達が出入りしてたの見たって!』
『前から愛想は悪いし、感じ悪いオヤジだったけどねぇ。まさか毒をばら撒くなんてねぇ』
『領都の方の流行病っていうのもまさか……』

年配の黒ローブが捕まったデインの街では、翌朝には既に噂が広がっていた。

『いやぁ。怖いっスねぇ。はい、これがルシャル商会の栄養ドリンクっス。甘くて滋養があるっスよ。
商業ギルド発行の引換証と交換っスよ』
『うちは、四人家族だから四本ちょうだい』
『引換証の通りっスね。はい、どうぞ!気に入ったら、明日以降は販売するから買ってくださいねぇ!』

年配の黒ローブの薬屋の店の位置から少し離れた、広い通りに出店のようなものが出ていて、ルシャル商会の人が支援物資の栄養ドリンクを配っていた。

栄養ドリンクのことは解毒作用があるとは言っていないけど、期間限定で無料配布にしたらすぐに街の人が並び始めたらしい。

『甥っ子が、川の毒?らしいやつで寝込んじまってねぇ』
『それは大変っスね。これ、滋養あるらしいんで、体力落ちてる時にいいらしいっス。良かったら飲ませてあげてくださいねぇ』


基本的に住民に一人一本無料配布ってことになっていて、ギルドが引換証を配っているのだそうだ。
領都のアンスにも救援物資として運んで、アンソラ男爵から配布の許可証のようなものをもらっているらしくて、街のギルドからもすぐに協力が得られたそうだ。

「昨日の夜に捕まって、もう朝には噂になってるんだね」
「ルシャル商会の人達が噂を広めたんじゃないか?そもそも、薬屋が捕まったのだって、ルシャル商会が動いてくれたからだろ。仕事早いなぁ」

「動く写し絵」でデインの街の様子を眺めながら、兄上と話をする。場所は「監視室」ではなくて僕の部屋だ。
黒ローブ達への尋問とかは、見ないようにって言われたんだ。乱暴なことが行われるかもしれないかだって。
それに護送されたりして、何か情報が得られるにしても時間がかかるだろうという話だった。

必要なことがあれば後で教えてくれるっていうから、部屋でデインの街の様子を何となく見ていたら
兄上が部屋にやってきて、一緒に「動く写し絵」を眺めることになった。

兄上は部屋に入ってくるなり、「何見てるんだ!」って呆れたような声をあげたけど、尋問を見ていたわけじゃないし、別に悪くないよね?
「街の様子だよ」って言ったら、「仕方ない」みたいな顔をして、僕の隣にどかっと腰を下ろした。
一緒に見るなら、と思って、お茶とかお菓子を「収納」から出してテーブルに並べたら、ちょっと微妙な顔をされた。

「薬屋に怪しい男達が出入りしていたっていうの、黒ローブの事かな。闇魔法で見えにくくして裏口からは言ってたのに目撃されてたのかな」
「ルシャル商会が噂で広げているだけかもな。実際見た人もいるのかもしれないけど、タイミング的に」

薬屋の年配の黒ローブを捕まえにきたのは、アンソラ男爵領の騎士だった。
アンソラの騎士達に薬屋の黒ローブを捕まえさせるために、ルシャル商会の人達が色々動いてくれたらしいんだけど、どうやったのかはよく分からない。

「ギルドが栄養ドリンクの引換証を発行しているってことは、アンソラ領主かデインの執政官に話が通ってるってことだよな。
ルシャル商会って影響力があるんだなぁ。アンスに支援物資を運んだりしたからかもしれないけど……」

壁に映し出された「動く写し絵」の中の、栄養ドリンクを配っているお兄さんの様子を眺めながら
兄上が感心したように言う。

「ルシャル商会って凄いの?アンスに支援物資を運ぶと凄くなるの?」
「アンスにはアンソラ男爵が居るからな。アンソラ男爵が『助かった!お礼にルシャル商会を優遇するよ!』って言えば
アンソラ男爵領の街とかでは、話が通りやすくなるんじゃないか?
まあ、そうでなくても、国内にも外国にもあちこち拠点があるって言うから、元々凄いんじゃないか?」

僕が首を傾げて疑問を口にすると、兄上が僕の方に顔を向けて答えてくれた。
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