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第1章
第10話 狙われている?
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「クリス、落ち着いて。」
焦って早足になった僕に兄上が声をかけた。
「で、でも……。」
「慌てると転ぶぞ。岩場を出たら一気に走ろう。」
「う。うん。」
岩場を自由自在に跳ね回っていた兄上と違って、僕は慎重に進まないと無理だ。これは運動神経の差かなぁ。
弓とかは僕の方が得意だと思うんだけどね。
誰かが、僕達を狙っているとして逃げようとして転んだら、勝手に罠にハマったようなものだ。
兄上の言う通り、足元が安定しない岩場を抜けてから走り出した方が良いだろう。
僕達が走り出した時には背後にいる人達はまだ、岩場にいるわけだし。
「ねえ、何目的かな。角兎が欲しいならそこら中にいるよね?」
「角兎が捕まらなかったとか。」
「え?僕達でも狩れるレベルの魔獣だよ。」
「だよな。じゃあ、子供が狩りして生意気な、とか。」
「ええー?理不尽。」
「今のは想像で言っただけだ。」
「うーん……。もしかして、僕達何かまずいことしちゃったとかはない?ここ、冒険者専用の狩場だったりしない?」
「冒険者専用の狩場があるとか、ボブは言ってなかったぞ。」
ボブは屋敷の使用人の一人で、引退した元冒険者だ。膝を痛めて引退をしたらしいけど時々狩りには同行してくれる。ギルドで見聞きした周辺の狩場の情報とかも教えてくれる。
今は御者と食材の買い出しだとかをやってくれているおじいちゃんだ。怖い顔をしているけど優しい。
「そもそも、立ち入ったらまずい場所に入ったとか、狩りの邪魔をしたとかだったら、もっと早く俺たちに注意してくるだろう。」
「そっか、そうだね。」
改めて注意深く耳を澄ますようにして気配を伺うと、害意がありそうな気配と何かこちらを気にするしているだけの気配とか色々入り混じっているように感じた。
「ねえ、もし絡まれたらどうしたら良い?」
「逃げる一択。」
「一択なんだ。」
「それが無難。」
兄上は、前方から視線を動かさず、ピョンと岩の上を飛びながら言った。僕は兄上そこらの冒険者ならやっつけちゃえるんじゃないかな、なんて思っていたのだけど迷わずに「逃げる」と言ったのが意外だった。
まあ、兄上がもしも怪我とかしたら嫌だけど。……そうか、兄上も僕が怪我をすることを避けたいのかもしれない。
でも、冒険者だったら逃げていて良いのだろうか。ああ、僕達冒険者じゃなかった。
僕はと言えば、大人の冒険者に絡まれて対抗できるかと言ったら、体格でも腕力でも負けると思う。
だったら逃げるのが良いのだろう。
そもそも、絡まれるとは限らないのだけど。
だけど、害意のある気配を背中にビシバシ感じるんだよね。
次の岩に飛び移ろうとして、ちょっとよろけた、慌てて体勢を立て直す。
「おい、気をつけろよ。」
「はあい。」
よろけた僕をチラリとみて兄上が少し厳しい声で言った。いけない、考えに気を取られて転けたら大変だ。
気持ちを切り替えて、ちょっとだけ急ぎめに岩場の出口に向かう。
ようやく、平らな地面が広がっている場所が目前になった。
僕と並走していた兄上がピョンと岩を蹴って前に飛び出した。
僕も続こうとした時、背後から凄い勢いで気配が迫ってきた。
「ひやぁぁぁぁ!!!」
実際は思ったより距離があったんだと思うけど、急に真後ろまで迫られたような感じがしてしまって思わず大声を上げてしまった。つんのめりそうになりながら、なんとか岩の上に足を運んで
最後は平らな地面に転がった。
「何だお前達!!」
僕が地面に手をついた時、兄上が怒鳴る声が聞こえた。
聞いたことがないくらい怒っている声だ。
見上げると炎が見えた。剣から炎が出ている。
すぐに立ち上がれないまま良くみると僕を庇うように立った兄上の持っている剣が炎に包まれている。
兄上の背中越しに岩場の方を見ると、3人の冒険者の姿が見えた。
何か気まずそうな表情をしている。
あれ?この人達からは害意を感じないぞ。
焦って早足になった僕に兄上が声をかけた。
「で、でも……。」
「慌てると転ぶぞ。岩場を出たら一気に走ろう。」
「う。うん。」
岩場を自由自在に跳ね回っていた兄上と違って、僕は慎重に進まないと無理だ。これは運動神経の差かなぁ。
弓とかは僕の方が得意だと思うんだけどね。
誰かが、僕達を狙っているとして逃げようとして転んだら、勝手に罠にハマったようなものだ。
兄上の言う通り、足元が安定しない岩場を抜けてから走り出した方が良いだろう。
僕達が走り出した時には背後にいる人達はまだ、岩場にいるわけだし。
「ねえ、何目的かな。角兎が欲しいならそこら中にいるよね?」
「角兎が捕まらなかったとか。」
「え?僕達でも狩れるレベルの魔獣だよ。」
「だよな。じゃあ、子供が狩りして生意気な、とか。」
「ええー?理不尽。」
「今のは想像で言っただけだ。」
「うーん……。もしかして、僕達何かまずいことしちゃったとかはない?ここ、冒険者専用の狩場だったりしない?」
「冒険者専用の狩場があるとか、ボブは言ってなかったぞ。」
ボブは屋敷の使用人の一人で、引退した元冒険者だ。膝を痛めて引退をしたらしいけど時々狩りには同行してくれる。ギルドで見聞きした周辺の狩場の情報とかも教えてくれる。
今は御者と食材の買い出しだとかをやってくれているおじいちゃんだ。怖い顔をしているけど優しい。
「そもそも、立ち入ったらまずい場所に入ったとか、狩りの邪魔をしたとかだったら、もっと早く俺たちに注意してくるだろう。」
「そっか、そうだね。」
改めて注意深く耳を澄ますようにして気配を伺うと、害意がありそうな気配と何かこちらを気にするしているだけの気配とか色々入り混じっているように感じた。
「ねえ、もし絡まれたらどうしたら良い?」
「逃げる一択。」
「一択なんだ。」
「それが無難。」
兄上は、前方から視線を動かさず、ピョンと岩の上を飛びながら言った。僕は兄上そこらの冒険者ならやっつけちゃえるんじゃないかな、なんて思っていたのだけど迷わずに「逃げる」と言ったのが意外だった。
まあ、兄上がもしも怪我とかしたら嫌だけど。……そうか、兄上も僕が怪我をすることを避けたいのかもしれない。
でも、冒険者だったら逃げていて良いのだろうか。ああ、僕達冒険者じゃなかった。
僕はと言えば、大人の冒険者に絡まれて対抗できるかと言ったら、体格でも腕力でも負けると思う。
だったら逃げるのが良いのだろう。
そもそも、絡まれるとは限らないのだけど。
だけど、害意のある気配を背中にビシバシ感じるんだよね。
次の岩に飛び移ろうとして、ちょっとよろけた、慌てて体勢を立て直す。
「おい、気をつけろよ。」
「はあい。」
よろけた僕をチラリとみて兄上が少し厳しい声で言った。いけない、考えに気を取られて転けたら大変だ。
気持ちを切り替えて、ちょっとだけ急ぎめに岩場の出口に向かう。
ようやく、平らな地面が広がっている場所が目前になった。
僕と並走していた兄上がピョンと岩を蹴って前に飛び出した。
僕も続こうとした時、背後から凄い勢いで気配が迫ってきた。
「ひやぁぁぁぁ!!!」
実際は思ったより距離があったんだと思うけど、急に真後ろまで迫られたような感じがしてしまって思わず大声を上げてしまった。つんのめりそうになりながら、なんとか岩の上に足を運んで
最後は平らな地面に転がった。
「何だお前達!!」
僕が地面に手をついた時、兄上が怒鳴る声が聞こえた。
聞いたことがないくらい怒っている声だ。
見上げると炎が見えた。剣から炎が出ている。
すぐに立ち上がれないまま良くみると僕を庇うように立った兄上の持っている剣が炎に包まれている。
兄上の背中越しに岩場の方を見ると、3人の冒険者の姿が見えた。
何か気まずそうな表情をしている。
あれ?この人達からは害意を感じないぞ。
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