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第1章
第9話 狩りの成果
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兄上はまだ笑いながら、僕が手にしていた角兎を見た。
「ああ。鞄に入んないんだろ。それは俺が運んでやるよ。俺の方が少ないし。」
「え、でも……。」
確かに、狩った数では兄上の方が少ないけど、一匹を持ってもらうと兄上が持ち運ぶ分が僕より多くなってしまう。それに自分で持った方が「運搬」スキルが育つ気がする。
兄上の申し出にすぐに頷かないでいたら、兄上が岩の上をヒョイと飛んで僕のすぐ隣の岩に立った。身を屈めて片手で僕のリュックを掴んで少し持ち上げた。
「十分重いじゃないか。無理して岩場で転けたら怪我するぞ。怪我したら母上が……。また治癒玉使うか?」
「あ……。わかった。」
兄上と二人で狩りに行くことを母様は今は了承してくれているけれど、最初はすごく反対された。兄上の剣術の腕前と、僕の風魔法がある程度戦えると父上のお墨付きをもらってからやっと許可が降りたんだ。
それでも「怪我しないこと!」と強く言われてしまっている。
擦り傷や切り傷は治癒玉で治せるのはわかっているから心配ないけど、治癒玉がどこまで治せるかわからない。いや、治せても服が血まみれにでもなってたら
多分アウトだ。
狩りをする場所だって、無理なく討伐できる魔獣が生息するエリアだけに絞っているのに、こんなところで転んで大怪我とか洒落にならない。
僕はちょっと項垂れて手にしていた角兎を兄上に差し出した。
兄上は僕から受け取った角兎を持つ手を上げて、心臓近くに切れ目が入っていることを確認した。
「魔石はもう取ったんだな。」
「うん。」
「よし、じゃあ、角取って首を落としてっと……。」
兄上はしゃがみ込んで、角兎を一度岩の上に置いてから慣れた手つきで角を取り除き、角兎の頭をスパンと斬る。皮一枚を残して角兎の頭がぶらんと垂れ下がる。
それから、角部分を掴んで頭から切り離して、頭部分は岩の隙間に落とした。
「わざわざ頭をとってるの?」
「食べないじゃん。角は売れるけどさ。」
「そ、そうか……。」
兄上の迷いない動作にちょっと気圧されたけど、確かに頭は食べないし、毛皮にも使えない部位なんだよなと納得しながら兄上が狩った角兎をリュックに詰めるのを手伝った。二匹分ずつ厚手の布に包むんだけど、兄上が狩った角兎の方が太っていて大きい。
僕は近くに来た角兎を大きさ構わず狩っていたけど、兄上は肉付きが良さそうな角兎を狙っていたのかもしれない。
ちょっと悔しい気持ちになってしまう。
頭を切り落とした状態でリュックにパンパンだった。頭を切ろ落としてたのは少しでも荷物を減らす為だったのかと思い至った。
尚、兄上が首を落とした角兎の角は兄上の腰にぶら下げた巾着に収まっていた。
リュックに収まりきらなかった角兎の前足と後ろ足をそれぞれロープで縛ってバッグみたいに持てるようにした。
ロープからずり落ちないようにぎゅうぎゅうに縛っていたけど、あらかじめ予備の麻袋とかを用意しておいた方が楽だったかなとも思う。
まだ解体をしていないから早く持ち帰りたいけど、一仕事終わったので休憩だ。
水魔法で出した水で血抜きで汚れた岩場を洗い流し、手も洗った。
綺麗になった岩場で、軽くおやつタイム。岩の上に腰を下ろしてドライフルーツとナッツのナッツバーみたいなのを齧る。
一仕事したからか甘いものがとても美味しく感じた。
軽く休憩した後はさっさとその場を後にする。休憩をしている時、チラチラとこちらの様子を伺っているような視線を感じたのだ。
リュックを背負うと、ふわっと何か感じた。背中がホワホワする感じ。
「あ、もしかして。」
「ん?どうした?」
「軽くなったかも。」
「おお、早かったな。おめでとう。」
「兄上のレベルには言ってないんじゃないかな。」
「それでも、おめでとうだろ。」
荷物を背負って、軽く感じるのは個人差があるから、「運搬」スキルのレベルが上がったのは確かに感じられたけれどそれが兄上が感じた「軽さ」と同等なのかは判別がつかない。
軽く感じるようになったと言ってもある程度の重さは感じているし、兄上の方はもっと軽く感じているかもしれないのだ。
そうは言っても「運搬」のスキルがアップしたのは嬉しい。顔がにやけないように気を付けて唇をモゴモゴと歪めた。
軽く感じるようになったリュックを背負いながら町がある方角に歩き出すと、周囲にも動き出す気配を感じた。
角兎じゃない、人の気配だ。岩場に点在している冒険者達だろう。
何かくるの?絡まれる?
「ああ。鞄に入んないんだろ。それは俺が運んでやるよ。俺の方が少ないし。」
「え、でも……。」
確かに、狩った数では兄上の方が少ないけど、一匹を持ってもらうと兄上が持ち運ぶ分が僕より多くなってしまう。それに自分で持った方が「運搬」スキルが育つ気がする。
兄上の申し出にすぐに頷かないでいたら、兄上が岩の上をヒョイと飛んで僕のすぐ隣の岩に立った。身を屈めて片手で僕のリュックを掴んで少し持ち上げた。
「十分重いじゃないか。無理して岩場で転けたら怪我するぞ。怪我したら母上が……。また治癒玉使うか?」
「あ……。わかった。」
兄上と二人で狩りに行くことを母様は今は了承してくれているけれど、最初はすごく反対された。兄上の剣術の腕前と、僕の風魔法がある程度戦えると父上のお墨付きをもらってからやっと許可が降りたんだ。
それでも「怪我しないこと!」と強く言われてしまっている。
擦り傷や切り傷は治癒玉で治せるのはわかっているから心配ないけど、治癒玉がどこまで治せるかわからない。いや、治せても服が血まみれにでもなってたら
多分アウトだ。
狩りをする場所だって、無理なく討伐できる魔獣が生息するエリアだけに絞っているのに、こんなところで転んで大怪我とか洒落にならない。
僕はちょっと項垂れて手にしていた角兎を兄上に差し出した。
兄上は僕から受け取った角兎を持つ手を上げて、心臓近くに切れ目が入っていることを確認した。
「魔石はもう取ったんだな。」
「うん。」
「よし、じゃあ、角取って首を落としてっと……。」
兄上はしゃがみ込んで、角兎を一度岩の上に置いてから慣れた手つきで角を取り除き、角兎の頭をスパンと斬る。皮一枚を残して角兎の頭がぶらんと垂れ下がる。
それから、角部分を掴んで頭から切り離して、頭部分は岩の隙間に落とした。
「わざわざ頭をとってるの?」
「食べないじゃん。角は売れるけどさ。」
「そ、そうか……。」
兄上の迷いない動作にちょっと気圧されたけど、確かに頭は食べないし、毛皮にも使えない部位なんだよなと納得しながら兄上が狩った角兎をリュックに詰めるのを手伝った。二匹分ずつ厚手の布に包むんだけど、兄上が狩った角兎の方が太っていて大きい。
僕は近くに来た角兎を大きさ構わず狩っていたけど、兄上は肉付きが良さそうな角兎を狙っていたのかもしれない。
ちょっと悔しい気持ちになってしまう。
頭を切り落とした状態でリュックにパンパンだった。頭を切ろ落としてたのは少しでも荷物を減らす為だったのかと思い至った。
尚、兄上が首を落とした角兎の角は兄上の腰にぶら下げた巾着に収まっていた。
リュックに収まりきらなかった角兎の前足と後ろ足をそれぞれロープで縛ってバッグみたいに持てるようにした。
ロープからずり落ちないようにぎゅうぎゅうに縛っていたけど、あらかじめ予備の麻袋とかを用意しておいた方が楽だったかなとも思う。
まだ解体をしていないから早く持ち帰りたいけど、一仕事終わったので休憩だ。
水魔法で出した水で血抜きで汚れた岩場を洗い流し、手も洗った。
綺麗になった岩場で、軽くおやつタイム。岩の上に腰を下ろしてドライフルーツとナッツのナッツバーみたいなのを齧る。
一仕事したからか甘いものがとても美味しく感じた。
軽く休憩した後はさっさとその場を後にする。休憩をしている時、チラチラとこちらの様子を伺っているような視線を感じたのだ。
リュックを背負うと、ふわっと何か感じた。背中がホワホワする感じ。
「あ、もしかして。」
「ん?どうした?」
「軽くなったかも。」
「おお、早かったな。おめでとう。」
「兄上のレベルには言ってないんじゃないかな。」
「それでも、おめでとうだろ。」
荷物を背負って、軽く感じるのは個人差があるから、「運搬」スキルのレベルが上がったのは確かに感じられたけれどそれが兄上が感じた「軽さ」と同等なのかは判別がつかない。
軽く感じるようになったと言ってもある程度の重さは感じているし、兄上の方はもっと軽く感じているかもしれないのだ。
そうは言っても「運搬」のスキルがアップしたのは嬉しい。顔がにやけないように気を付けて唇をモゴモゴと歪めた。
軽く感じるようになったリュックを背負いながら町がある方角に歩き出すと、周囲にも動き出す気配を感じた。
角兎じゃない、人の気配だ。岩場に点在している冒険者達だろう。
何かくるの?絡まれる?
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