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第1章
第8話 角兎狩り
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「角兎の肉あげたら喜ぶかなぁ」
そんなことを考えながら、屋敷を後にした。
西の荒地につくと、目が届く範囲に数組の冒険者の姿が点在していた。
角兎狩りに来た人たちだろう。西の荒地でこんなに冒険者がいるところを見たことがないのでちょっとびっくりする。
今までは見かけてもせいぜい一組くらいだったのだ。
西の荒地はゴツゴツした岩が沢山あって岩の隙間から雑草が生えているような土地だ。開拓して畑にする話も出ているそうだけど
大量の岩が邪魔になっている上にカラカラに見える。岩を退けたとしても、農作物が豊かに育ちそうに見えない。
その岩の隙間を縫って、角兎が飛び跳ねている。走って追いかけようと思っても、岩の上を伝って移動する形になるから追いかけにくい。
角兎にとっては隠れやすくて良い住処なのかもしれない。
遠くに散らばっている冒険者が気になるけど、意識を集中して角兎の気配を探る。
弓を構えてじっと待つ。追いかけるより射程圏内に角兎がくるのを待つ方が楽な気がする。
ガサッ。少し離れた場所で草木を踏むような小さい音がした。
「キュキュッ」
角兎の鳴き声。姿は見えないけど、岩の隙間に生えている雑草が不自然に揺れた。
気配を察知されないように、息を潜めながらゆっくりと角兎の進行方向に向けて弓を引く。
「ギュエ!!」
さっきまで小動物的な鳴き声だったのに、矢が突き刺さった途端、荒々しい鳴き声に変わった。
矢が突き刺さってビクビクとしているところを、慎重に岩の上を伝って近づき、止めを刺した。じわりと熱いものを浴びた感覚があった。
「まずは一匹」
角兎の首にナイフを突き立てて、岩場の狭い隙間を利用して逆さに嵌め込んで血抜きをする。
少しだけ待ってある程度血を流させてから、心臓部にもナイフを刺して魔石を取り出してしまう。
魔石の取り出しは、仕留めてすぐの方が多く魔力が残っているらしいので早く取り出した方が良いんだ。
無事魔石をとったら、血抜きを続行するように岩の間に嵌め直す。
チラリと周囲の冒険者の様子を見回して、獲物が奪われない範囲に立って、次の獲物を探した。
「早かったな」
二匹目を狩ったところで、兄上が角兎の後ろ足を持ったまま、ぴょんぴょんと岩場の上を飛んできた。
「一緒に置いておいてくれよ。見張りながら狩ろうぜ」
兄上がちょうど良い隙間を見繕って自分が狩ってきた角兎を配置した。一箇所に集めておけばどちらかが、近くで見張りながら狩りができる。
兄上が狩った角兎は剣で首を跳ねたらしくて頭がなかった。血抜きは楽そうだけど、角兎の角はどうしたんだろう。
兄上は剣術が得意だ。僕は剣術も槍も弓もそこそこという感じだけど、兄上は剣術か体術がメイン。父上と似たタイプだ。
魔法も僕みたいに風刃を飛ばすというより、剣で斬撃を飛ばすとか身体強化系を使うことが多い。
でも、剣に炎を纏わせるのがやりたいって密かに練習をしているのを知っている。炎剣は父上が使っているのを見たことがあるけど、凄く強そうだし格好良いんだ。
頭を失った角兎を仕留めたときは、斬撃かな。そう思ったけど、角兎を岩場に設置した後はぴょんぴょんと岩の上を跳ねるように飛んでいって角兎を追いかけて行ったので剣で追いついて直接きりつけている気がしてきた。
「弓、腕上げたな。風刃は使わないの?」
兄上が肩で息をしながら二匹目の角兎をぶら下げて戻ってきた時、僕は五匹目の角兎に弓を放ったところだった。
「風刃は察知されやすいみたいなんだよね」
「ああ、わかる!斬撃も察知される。殺気がわかるのかな」
「そうかも」
兄上の言葉に頷いてから、五匹目の角兎にとどめを刺しに行った。このくらいが持ち運べる限界かなと思う。
僕が、血抜き場に戻ってきて、そろそろ帰るかと兄上に聞いたら、もう一匹だけ狩ってくると言って、兄上はまた岩場の上を飛び跳ねていった。
兄上がもう一匹を狩りに行っている間に僕は帰り支度を始めた。岩場の上は安定しないからこの場では解体をしないけど、メイリに約束した魔石は取り出しておく。
敷布に角兎を二匹ずつくるみ、リュックに詰める。僕の体格にしてはかなり大きいリュックで角兎をなんとか四匹詰め込むことができた。
残りの一匹は紐で吊るしていこうかと考えていたら、兄上がまた首なしの角兎を二匹分持って戻ってきた。
「え、二匹も?」
「うん、ちょうど二匹で飛び跳ねてたから」
「一度に狩れるなんて凄い」
「尊敬しちゃう?」
「するする!流石兄上!」
「へへ」
「さす兄!」
「さす兄はなんかヤダ」
「ええー?」
二人でケラケラと笑う。楽しい。
そんなことを考えながら、屋敷を後にした。
西の荒地につくと、目が届く範囲に数組の冒険者の姿が点在していた。
角兎狩りに来た人たちだろう。西の荒地でこんなに冒険者がいるところを見たことがないのでちょっとびっくりする。
今までは見かけてもせいぜい一組くらいだったのだ。
西の荒地はゴツゴツした岩が沢山あって岩の隙間から雑草が生えているような土地だ。開拓して畑にする話も出ているそうだけど
大量の岩が邪魔になっている上にカラカラに見える。岩を退けたとしても、農作物が豊かに育ちそうに見えない。
その岩の隙間を縫って、角兎が飛び跳ねている。走って追いかけようと思っても、岩の上を伝って移動する形になるから追いかけにくい。
角兎にとっては隠れやすくて良い住処なのかもしれない。
遠くに散らばっている冒険者が気になるけど、意識を集中して角兎の気配を探る。
弓を構えてじっと待つ。追いかけるより射程圏内に角兎がくるのを待つ方が楽な気がする。
ガサッ。少し離れた場所で草木を踏むような小さい音がした。
「キュキュッ」
角兎の鳴き声。姿は見えないけど、岩の隙間に生えている雑草が不自然に揺れた。
気配を察知されないように、息を潜めながらゆっくりと角兎の進行方向に向けて弓を引く。
「ギュエ!!」
さっきまで小動物的な鳴き声だったのに、矢が突き刺さった途端、荒々しい鳴き声に変わった。
矢が突き刺さってビクビクとしているところを、慎重に岩の上を伝って近づき、止めを刺した。じわりと熱いものを浴びた感覚があった。
「まずは一匹」
角兎の首にナイフを突き立てて、岩場の狭い隙間を利用して逆さに嵌め込んで血抜きをする。
少しだけ待ってある程度血を流させてから、心臓部にもナイフを刺して魔石を取り出してしまう。
魔石の取り出しは、仕留めてすぐの方が多く魔力が残っているらしいので早く取り出した方が良いんだ。
無事魔石をとったら、血抜きを続行するように岩の間に嵌め直す。
チラリと周囲の冒険者の様子を見回して、獲物が奪われない範囲に立って、次の獲物を探した。
「早かったな」
二匹目を狩ったところで、兄上が角兎の後ろ足を持ったまま、ぴょんぴょんと岩場の上を飛んできた。
「一緒に置いておいてくれよ。見張りながら狩ろうぜ」
兄上がちょうど良い隙間を見繕って自分が狩ってきた角兎を配置した。一箇所に集めておけばどちらかが、近くで見張りながら狩りができる。
兄上が狩った角兎は剣で首を跳ねたらしくて頭がなかった。血抜きは楽そうだけど、角兎の角はどうしたんだろう。
兄上は剣術が得意だ。僕は剣術も槍も弓もそこそこという感じだけど、兄上は剣術か体術がメイン。父上と似たタイプだ。
魔法も僕みたいに風刃を飛ばすというより、剣で斬撃を飛ばすとか身体強化系を使うことが多い。
でも、剣に炎を纏わせるのがやりたいって密かに練習をしているのを知っている。炎剣は父上が使っているのを見たことがあるけど、凄く強そうだし格好良いんだ。
頭を失った角兎を仕留めたときは、斬撃かな。そう思ったけど、角兎を岩場に設置した後はぴょんぴょんと岩の上を跳ねるように飛んでいって角兎を追いかけて行ったので剣で追いついて直接きりつけている気がしてきた。
「弓、腕上げたな。風刃は使わないの?」
兄上が肩で息をしながら二匹目の角兎をぶら下げて戻ってきた時、僕は五匹目の角兎に弓を放ったところだった。
「風刃は察知されやすいみたいなんだよね」
「ああ、わかる!斬撃も察知される。殺気がわかるのかな」
「そうかも」
兄上の言葉に頷いてから、五匹目の角兎にとどめを刺しに行った。このくらいが持ち運べる限界かなと思う。
僕が、血抜き場に戻ってきて、そろそろ帰るかと兄上に聞いたら、もう一匹だけ狩ってくると言って、兄上はまた岩場の上を飛び跳ねていった。
兄上がもう一匹を狩りに行っている間に僕は帰り支度を始めた。岩場の上は安定しないからこの場では解体をしないけど、メイリに約束した魔石は取り出しておく。
敷布に角兎を二匹ずつくるみ、リュックに詰める。僕の体格にしてはかなり大きいリュックで角兎をなんとか四匹詰め込むことができた。
残りの一匹は紐で吊るしていこうかと考えていたら、兄上がまた首なしの角兎を二匹分持って戻ってきた。
「え、二匹も?」
「うん、ちょうど二匹で飛び跳ねてたから」
「一度に狩れるなんて凄い」
「尊敬しちゃう?」
「するする!流石兄上!」
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「さす兄!」
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「ええー?」
二人でケラケラと笑う。楽しい。
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