10 / 334
第1章
第10話 狙われている?
しおりを挟む
「クリス、落ち着いて。」
焦って早足になった僕に兄上が声をかけた。
「で、でも……。」
「慌てると転ぶぞ。岩場を出たら一気に走ろう。」
「う。うん。」
岩場を自由自在に跳ね回っていた兄上と違って、僕は慎重に進まないと無理だ。これは運動神経の差かなぁ。
弓とかは僕の方が得意だと思うんだけどね。
誰かが、僕達を狙っているとして逃げようとして転んだら、勝手に罠にハマったようなものだ。
兄上の言う通り、足元が安定しない岩場を抜けてから走り出した方が良いだろう。
僕達が走り出した時には背後にいる人達はまだ、岩場にいるわけだし。
「ねえ、何目的かな。角兎が欲しいならそこら中にいるよね?」
「角兎が捕まらなかったとか。」
「え?僕達でも狩れるレベルの魔獣だよ。」
「だよな。じゃあ、子供が狩りして生意気な、とか。」
「ええー?理不尽。」
「今のは想像で言っただけだ。」
「うーん……。もしかして、僕達何かまずいことしちゃったとかはない?ここ、冒険者専用の狩場だったりしない?」
「冒険者専用の狩場があるとか、ボブは言ってなかったぞ。」
ボブは屋敷の使用人の一人で、引退した元冒険者だ。膝を痛めて引退をしたらしいけど時々狩りには同行してくれる。ギルドで見聞きした周辺の狩場の情報とかも教えてくれる。
今は御者と食材の買い出しだとかをやってくれているおじいちゃんだ。怖い顔をしているけど優しい。
「そもそも、立ち入ったらまずい場所に入ったとか、狩りの邪魔をしたとかだったら、もっと早く俺たちに注意してくるだろう。」
「そっか、そうだね。」
改めて注意深く耳を澄ますようにして気配を伺うと、害意がありそうな気配と何かこちらを気にするしているだけの気配とか色々入り混じっているように感じた。
「ねえ、もし絡まれたらどうしたら良い?」
「逃げる一択。」
「一択なんだ。」
「それが無難。」
兄上は、前方から視線を動かさず、ピョンと岩の上を飛びながら言った。僕は兄上そこらの冒険者ならやっつけちゃえるんじゃないかな、なんて思っていたのだけど迷わずに「逃げる」と言ったのが意外だった。
まあ、兄上がもしも怪我とかしたら嫌だけど。……そうか、兄上も僕が怪我をすることを避けたいのかもしれない。
でも、冒険者だったら逃げていて良いのだろうか。ああ、僕達冒険者じゃなかった。
僕はと言えば、大人の冒険者に絡まれて対抗できるかと言ったら、体格でも腕力でも負けると思う。
だったら逃げるのが良いのだろう。
そもそも、絡まれるとは限らないのだけど。
だけど、害意のある気配を背中にビシバシ感じるんだよね。
次の岩に飛び移ろうとして、ちょっとよろけた、慌てて体勢を立て直す。
「おい、気をつけろよ。」
「はあい。」
よろけた僕をチラリとみて兄上が少し厳しい声で言った。いけない、考えに気を取られて転けたら大変だ。
気持ちを切り替えて、ちょっとだけ急ぎめに岩場の出口に向かう。
ようやく、平らな地面が広がっている場所が目前になった。
僕と並走していた兄上がピョンと岩を蹴って前に飛び出した。
僕も続こうとした時、背後から凄い勢いで気配が迫ってきた。
「ひやぁぁぁぁ!!!」
実際は思ったより距離があったんだと思うけど、急に真後ろまで迫られたような感じがしてしまって思わず大声を上げてしまった。つんのめりそうになりながら、なんとか岩の上に足を運んで
最後は平らな地面に転がった。
「何だお前達!!」
僕が地面に手をついた時、兄上が怒鳴る声が聞こえた。
聞いたことがないくらい怒っている声だ。
見上げると炎が見えた。剣から炎が出ている。
すぐに立ち上がれないまま良くみると僕を庇うように立った兄上の持っている剣が炎に包まれている。
兄上の背中越しに岩場の方を見ると、3人の冒険者の姿が見えた。
何か気まずそうな表情をしている。
あれ?この人達からは害意を感じないぞ。
焦って早足になった僕に兄上が声をかけた。
「で、でも……。」
「慌てると転ぶぞ。岩場を出たら一気に走ろう。」
「う。うん。」
岩場を自由自在に跳ね回っていた兄上と違って、僕は慎重に進まないと無理だ。これは運動神経の差かなぁ。
弓とかは僕の方が得意だと思うんだけどね。
誰かが、僕達を狙っているとして逃げようとして転んだら、勝手に罠にハマったようなものだ。
兄上の言う通り、足元が安定しない岩場を抜けてから走り出した方が良いだろう。
僕達が走り出した時には背後にいる人達はまだ、岩場にいるわけだし。
「ねえ、何目的かな。角兎が欲しいならそこら中にいるよね?」
「角兎が捕まらなかったとか。」
「え?僕達でも狩れるレベルの魔獣だよ。」
「だよな。じゃあ、子供が狩りして生意気な、とか。」
「ええー?理不尽。」
「今のは想像で言っただけだ。」
「うーん……。もしかして、僕達何かまずいことしちゃったとかはない?ここ、冒険者専用の狩場だったりしない?」
「冒険者専用の狩場があるとか、ボブは言ってなかったぞ。」
ボブは屋敷の使用人の一人で、引退した元冒険者だ。膝を痛めて引退をしたらしいけど時々狩りには同行してくれる。ギルドで見聞きした周辺の狩場の情報とかも教えてくれる。
今は御者と食材の買い出しだとかをやってくれているおじいちゃんだ。怖い顔をしているけど優しい。
「そもそも、立ち入ったらまずい場所に入ったとか、狩りの邪魔をしたとかだったら、もっと早く俺たちに注意してくるだろう。」
「そっか、そうだね。」
改めて注意深く耳を澄ますようにして気配を伺うと、害意がありそうな気配と何かこちらを気にするしているだけの気配とか色々入り混じっているように感じた。
「ねえ、もし絡まれたらどうしたら良い?」
「逃げる一択。」
「一択なんだ。」
「それが無難。」
兄上は、前方から視線を動かさず、ピョンと岩の上を飛びながら言った。僕は兄上そこらの冒険者ならやっつけちゃえるんじゃないかな、なんて思っていたのだけど迷わずに「逃げる」と言ったのが意外だった。
まあ、兄上がもしも怪我とかしたら嫌だけど。……そうか、兄上も僕が怪我をすることを避けたいのかもしれない。
でも、冒険者だったら逃げていて良いのだろうか。ああ、僕達冒険者じゃなかった。
僕はと言えば、大人の冒険者に絡まれて対抗できるかと言ったら、体格でも腕力でも負けると思う。
だったら逃げるのが良いのだろう。
そもそも、絡まれるとは限らないのだけど。
だけど、害意のある気配を背中にビシバシ感じるんだよね。
次の岩に飛び移ろうとして、ちょっとよろけた、慌てて体勢を立て直す。
「おい、気をつけろよ。」
「はあい。」
よろけた僕をチラリとみて兄上が少し厳しい声で言った。いけない、考えに気を取られて転けたら大変だ。
気持ちを切り替えて、ちょっとだけ急ぎめに岩場の出口に向かう。
ようやく、平らな地面が広がっている場所が目前になった。
僕と並走していた兄上がピョンと岩を蹴って前に飛び出した。
僕も続こうとした時、背後から凄い勢いで気配が迫ってきた。
「ひやぁぁぁぁ!!!」
実際は思ったより距離があったんだと思うけど、急に真後ろまで迫られたような感じがしてしまって思わず大声を上げてしまった。つんのめりそうになりながら、なんとか岩の上に足を運んで
最後は平らな地面に転がった。
「何だお前達!!」
僕が地面に手をついた時、兄上が怒鳴る声が聞こえた。
聞いたことがないくらい怒っている声だ。
見上げると炎が見えた。剣から炎が出ている。
すぐに立ち上がれないまま良くみると僕を庇うように立った兄上の持っている剣が炎に包まれている。
兄上の背中越しに岩場の方を見ると、3人の冒険者の姿が見えた。
何か気まずそうな表情をしている。
あれ?この人達からは害意を感じないぞ。
405
あなたにおすすめの小説
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜
ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが……
この世界の文明レベル、低すぎじゃない!?
私はそんなに凄い人じゃないんですけど!
スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!
何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。
くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。
しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた!
しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!?
よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?!
「これ…スローライフ目指せるのか?」
この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる