転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
21 / 334
第1章

第21話 絵のリクエスト

しおりを挟む
その日の夕食は、父上と母様、兄上だけが来客と同席して食べて、僕とメイリは離れの食堂で食べた。

明日、散策に同行するなら殿下にも挨拶をしておいた方が良いのかと思ったけど、
今日は色々あって、落ち着いてないだろうからって挨拶は明日になったんだ。

夕食のメニューは僕のリクエストが通って、角兎のクリームシチューになった。
ジンジャーソテーも美味しいけどね。

灰色猫さんにも角兎の肉をあげようと思って、角兎の肉を焼いたものをお皿に乗せて、祠のところに持っていった。
生肉でなくて焼いたお肉にしたのは、焼いた方が腐りにくいかなと思ったからだ。
猫さんの姿は見えなかったけど、また祠のところに戻ってくる気がしたので祠の前にお皿を置いておいた。
食べてくれると良いなぁ。

「クリームシチューは『秘密』のメニューなのよね。」

口に含むとふんわりと食感が程よい角兎の肉をスプーンで救って美味しそうに口に含んだ後にメイリが言った。

「そうだね。『秘密』メニューのやつだけど、匂いが出ないから作ってもらえたよ。」

「秘密」メニューは、男爵家の外に出さないとされているメニューだ。
唐揚げ、カツ、クリームシチュー、スパイスシチューとかがそうだ。

揚げ物やカツは大量に油を使う。クリームシチューに使うミルクはこの地では希少だ。
スパイスシチューに使う香草類の中には、滅多に来ない行商人からしか買えないものがある。

「秘密」にしているのは材料が手に入りにくいからと言うのもあるんだろうな。。
角兎のジンジャーソテーは広まっているけど、食材の角兎も生姜も比較的手に入りやすいもんね。

ゲンティアナ男爵領が美味しいものばかりって、領民が増えていくなら良いのだろうけど他所の貴族家が押し寄せてくるのはどうなんだろう。
領の評判が上がるってメリットはあるのかな。

「緑の魔石は採れた?」
「取れたよ。後であげるね。」
「風の魔石だからクリス兄様も、持っていてね。」
「うん。」
「オオトカゲは水色?」
「そうだよ。」
「水色は母様に少しあげてほしいの。母様ちょっとお疲れみたいだったから。」
「わかった。」

母様がお疲れだったのは来客の対応があるからだと思うから、魔石水が効くかはよくわからないけどね。

「あ、クリス兄様。お食事が終わったら、お絵描きしてね!」
「そうだったね。」

角兎狩りに行く前は、夕食前に絵を描く時間があるかと思ってたんだけど、バタバタしていて描けなかった。

「王子様?」
「うん!王子様とお姫様……みたいな令嬢!

王子様は、金色のクリクリ頭で青い瞳なの。それでね、左の目の下にホクロがあるのよ。」

「金髪かぁ。」

絵の具は何を使おうか、と考える。日中に拾ってきた黄色い石を試しに使ってみようか……。

「令嬢はね!青い色のドリルヘアよ!」
「ドリル……。」
「あ、ドリルって……。くるくると渦巻きみたいなのよ。こんな感じで。」

メイリがそう言いながらクルクルと空中で螺旋を描いた。うん、ドリルのイメージは僕が想像したもので合っているな。

「ちょっときつい目付きをした美少女なの。……それとね。」

メイリが少し身を乗り出して言う。楽しそうに目をキラキラさせている。可愛い。

「他にもあるの?」
「深緑色の髪のインテリメガネも描いて!」
「え……?」

メイリの言葉で、ハロルド君の姿が頭に浮かんで僕は一瞬固まってしまった。
「インテリメガネ」って……。

僕もハロルド君に会う前から、「インテリメガネ」ってイメージしてたな。もしかして、有名人なのかな。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...