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第1章
第29話 離れのお風呂
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離れのお風呂は本館のお風呂に比べるとちょっと狭い。でも壁にあるレバーをガラガラと回すと天井部分が開くんだ。夜空を見ながらお風呂に入れるから気に入っている。
本館のお風呂も離れのお風呂の父上と母上が集めてきた石を敷き詰めた作りなんだけど、本館は灰色系の渋い色で、
離れのお風呂は本館のより後から作られたからか、赤や黄色の石を使って明るい雰囲気にしたり、水魔石で水を足したりできるようにしたりと色々新しいことを試しているらしい。
僕としてはお湯が出るようになると良いと思っている。
水魔石で出した水を火魔石で温めるような装置を作ったら良いんじゃないかと思ったんだけど、火魔石の消費量が凄く多そうなので作れていない。
水の方は僕が水魔法で出したって良いんだけど、僕は火属性は少ないからね。
ふと、冷たーい水のことを思い出した。氷魔法じゃないから氷は出せなくても水の温度を下げることはできるんじゃないかって思ったんだった。
もしも冷たい水を出すことができれば、逆に暖かい水も出せてもおかしくない。
水の温度を指定する魔法陣とかないかな。温度を変える方法がわかれば色々できそうな気がする。今度試してみようかな。
お風呂から上がって、着替え終わってホカホカしながら浴室の入り口近くにぶら下がっている紐を引く。
カランカランと音が響き渡った。僕がお風呂から上がった合図だ。
メイリはもうお風呂に入ったから次は兄上の番だな。
父上と母様はまだ本館にいるのだろうか。
様子をみようと本館に続く方の出入り口に向かうと、本館の方からこちらに向かって歩いてくる人影が見えた。ランプを手にしていてすっかり日が沈んだ暗がりの中で姿が照らし出されている。顔はよく見えなくてもシルエットでわかる。
「母様!」
「あら、クリス?どうしたの?」
母様は少し早足になってこちらに向かって歩いてきた。
通用口から離れの建物に入ってきた母様は、手にしていたランプを壁際の台に一度置くと、棚から大きめのランプを取り出して、ランプの火を大きいランプの蝋燭に移した。
室内が明るく照らされる。
「お風呂から上がったばかり?湯冷めしちゃうわよ。」
僕の髪がまだ湿っているのでお風呂上がりだとわかったんだろう。
風魔法で髪を乾かすのは部屋に戻ってからしようと思っていてまだ乾かしていなかったんだ。
「うん。部屋で乾かすよ。母様達が気になってたんだ。父上は?」
「辺境伯様達とお酒を飲んでいるわ。今夜はこのまま本館で過ごすと思うわよ。」
「そうなんだ。大変だね。接待……ってやつ?」
「あら。難しい言葉を知っているのね。」
母様がふふふと笑った。そして僕の肩に手を置いた。
「お父様なら大丈夫よ。辺境伯様と親しいから。」
「え、でも舐められてるって。」
「まあ。それは誰が言ったの?」
母様が少し目を見開いた。笑ってない目だ。どうしよう。
兄上って言ったら、兄上が怒られちゃうかな。でも、兄上が間違ってたとも思わないんだけどな。
「……ちゃんとお知らせせずに大勢で押しかけてくるのって、うちが大事に思われてないんでしょう?」
僕は兄上の名前を出さずに言ってみた。だって、僕だってそう思うもの。
母様は僕がそういうとフッと目を細めて、僕の頭をポンポンと撫でた。
「そうね……。辺境伯様は多分あまり考えてなかったのよ。びっくりしたわね。」
「うん。」
「クリスよりちょっとお兄さんやお姉さんな人達が来たので、クリスにもお客様のお世話のお手伝いをお願いすることになるかもしれないわ。
でも、もしも、危ないことや怖いことをやれって言われたら、無理して従わなくて良いわよ。」
「危ないことって……、コブラオオトカゲの群れに突っ込むとか?」
「……やめてね。そんなことは絶対!」
「コブラオオトカゲの苦手な匂いを撒いたりすれば良いんだよね?」
「やろうとしないの!どうしてそんなに具体的なの?もしかしてやったことあるの?」
「……ないよ……。」
「……後でローレンに聞かないと。」
なんだか兄上が怒られそうな雰囲気。コブラオオトカゲは頭が大きくて、口を開けると丸呑みされそうなくらいなんだけど、お肉は普通のオオトカゲより柔らかくて美味しいんだけどなぁ。
「群れに突っ込んだことはないよ。匂い袋で牽制したことはあるだけだよ。」
「そう……。でも、コブラオオトカゲが出るのは森のちょっと奥の方よね。」
「……ギリギリの場所だったんだ。黎明の泉のほとりだった。」
森の中に「黎明の泉」と呼ばれる場所がある。名前の通り、明け方の光が水面に当たるとキラキラして綺麗な場所だ。大きめの池という感じで不思議とこの泉から手前には大きな魔獣は出ないし
魔獣も泉を超えてこようとしない。泉の水は飲んでいるみたいだから、泉の水を魔獣が嫌っているってわけではないみたいなんだけど。
本館のお風呂も離れのお風呂の父上と母上が集めてきた石を敷き詰めた作りなんだけど、本館は灰色系の渋い色で、
離れのお風呂は本館のより後から作られたからか、赤や黄色の石を使って明るい雰囲気にしたり、水魔石で水を足したりできるようにしたりと色々新しいことを試しているらしい。
僕としてはお湯が出るようになると良いと思っている。
水魔石で出した水を火魔石で温めるような装置を作ったら良いんじゃないかと思ったんだけど、火魔石の消費量が凄く多そうなので作れていない。
水の方は僕が水魔法で出したって良いんだけど、僕は火属性は少ないからね。
ふと、冷たーい水のことを思い出した。氷魔法じゃないから氷は出せなくても水の温度を下げることはできるんじゃないかって思ったんだった。
もしも冷たい水を出すことができれば、逆に暖かい水も出せてもおかしくない。
水の温度を指定する魔法陣とかないかな。温度を変える方法がわかれば色々できそうな気がする。今度試してみようかな。
お風呂から上がって、着替え終わってホカホカしながら浴室の入り口近くにぶら下がっている紐を引く。
カランカランと音が響き渡った。僕がお風呂から上がった合図だ。
メイリはもうお風呂に入ったから次は兄上の番だな。
父上と母様はまだ本館にいるのだろうか。
様子をみようと本館に続く方の出入り口に向かうと、本館の方からこちらに向かって歩いてくる人影が見えた。ランプを手にしていてすっかり日が沈んだ暗がりの中で姿が照らし出されている。顔はよく見えなくてもシルエットでわかる。
「母様!」
「あら、クリス?どうしたの?」
母様は少し早足になってこちらに向かって歩いてきた。
通用口から離れの建物に入ってきた母様は、手にしていたランプを壁際の台に一度置くと、棚から大きめのランプを取り出して、ランプの火を大きいランプの蝋燭に移した。
室内が明るく照らされる。
「お風呂から上がったばかり?湯冷めしちゃうわよ。」
僕の髪がまだ湿っているのでお風呂上がりだとわかったんだろう。
風魔法で髪を乾かすのは部屋に戻ってからしようと思っていてまだ乾かしていなかったんだ。
「うん。部屋で乾かすよ。母様達が気になってたんだ。父上は?」
「辺境伯様達とお酒を飲んでいるわ。今夜はこのまま本館で過ごすと思うわよ。」
「そうなんだ。大変だね。接待……ってやつ?」
「あら。難しい言葉を知っているのね。」
母様がふふふと笑った。そして僕の肩に手を置いた。
「お父様なら大丈夫よ。辺境伯様と親しいから。」
「え、でも舐められてるって。」
「まあ。それは誰が言ったの?」
母様が少し目を見開いた。笑ってない目だ。どうしよう。
兄上って言ったら、兄上が怒られちゃうかな。でも、兄上が間違ってたとも思わないんだけどな。
「……ちゃんとお知らせせずに大勢で押しかけてくるのって、うちが大事に思われてないんでしょう?」
僕は兄上の名前を出さずに言ってみた。だって、僕だってそう思うもの。
母様は僕がそういうとフッと目を細めて、僕の頭をポンポンと撫でた。
「そうね……。辺境伯様は多分あまり考えてなかったのよ。びっくりしたわね。」
「うん。」
「クリスよりちょっとお兄さんやお姉さんな人達が来たので、クリスにもお客様のお世話のお手伝いをお願いすることになるかもしれないわ。
でも、もしも、危ないことや怖いことをやれって言われたら、無理して従わなくて良いわよ。」
「危ないことって……、コブラオオトカゲの群れに突っ込むとか?」
「……やめてね。そんなことは絶対!」
「コブラオオトカゲの苦手な匂いを撒いたりすれば良いんだよね?」
「やろうとしないの!どうしてそんなに具体的なの?もしかしてやったことあるの?」
「……ないよ……。」
「……後でローレンに聞かないと。」
なんだか兄上が怒られそうな雰囲気。コブラオオトカゲは頭が大きくて、口を開けると丸呑みされそうなくらいなんだけど、お肉は普通のオオトカゲより柔らかくて美味しいんだけどなぁ。
「群れに突っ込んだことはないよ。匂い袋で牽制したことはあるだけだよ。」
「そう……。でも、コブラオオトカゲが出るのは森のちょっと奥の方よね。」
「……ギリギリの場所だったんだ。黎明の泉のほとりだった。」
森の中に「黎明の泉」と呼ばれる場所がある。名前の通り、明け方の光が水面に当たるとキラキラして綺麗な場所だ。大きめの池という感じで不思議とこの泉から手前には大きな魔獣は出ないし
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