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第1章
第40話 殿下達の魔法
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ハロルド君以外とは初対面なので、名乗ってご挨拶をしてから訓練場に向かう。一応お名前呼びの許可はいただけた。
それぞれに護衛の人がついてきていて、メイド姿の人も2人いる。思った以上に大人数での大移動だった。
訓練場に向かう途中で、ゴーシュさんが戻ってきて合流した。
ゾロゾロゾロゾロ護衛がどんどん強化されて大行列になっているいるけど、ただの男爵家の敷地内移動ですよ。
訓練場が見えてくると、殿下がぼそりと不満そうな声を上げた。
「なんだ。どこに連れていってくれるのかと思ったら。」
「訓練場は見慣れているものね。」
青色の髪のシェリル・ナスタチウム辺境伯令嬢が殿下の言葉を聞いて、面白そうに笑う。
ハロルド君が小さく肩を竦めた。
「実際に魔獣の討伐に行く前に、練習ができる場所は助かる。」
「……まあ、確かに、魔法の試し撃ちできる場所は必要だな。」
不満そうだったけど、納得いただけたようだ。訓練場の中に入って、キョロキョロと興味深げに見回し始めた。
「あれが的か。……随分素朴だな。」
「的として機能していれば良いと思いますよ。」
殿下の言葉にハロルド君がフォローを入れてくれる。訓練場に入ってそうそうに奥にある的に早速注目が集まったので、兄上が手を軽く上げて言った。
「小さい場所ですので、的の感覚も他より狭いかもしれません。弟が試し撃ちをして見せます。」
兄上はそう言って僕をチラリと見て、指先を縦に動かした。
僕は頷いて前に一歩でた。殿下が待ったの声を上げた。
「試し撃ちなら僕がやってみたいな。」
「……。」
ええ?って言葉を思わず飲み込んでしまった。
いくらでも撃てるのになんで試し撃ちをしたがるの?一番に撃ちたいだけ?一番が良いの?
「ふふ。久しぶりに殿下の魔法を拝見できますね。」
「ああ。この所は剣術の稽古に力を入れていたからな。でも魔法だって衰えてはいないぞ。」
シェリル嬢とネイサン殿下がそんな会話をする。
ネイサン殿下が上着を脱いで、後ろに控えていたメイドに持たせた。
シャツの袖を肘まで捲り上げる。
「火で焦げたら嫌だからな。」
「お気をつけて。」
「よし!では!」
ネイサン殿下が片手を突き出して掌を的に向けた。
「火よ。燃え上がる火の精霊よ。我に力を貸したまえ。その先にある的に偉大なる炎を打ちつけ給え。」
「?」
殿下が片手を突き出したまま、何かブツブツと言い始めた。これってもしかして詠唱というやつ?
「ハ!」
最後に気合いの入った声を上げると殿下の掌あたりからひゅっと火の玉が出た。
ジュ、とかすかに音がして、炎が的の端に当たって消えた。
「お見事!」
「流石です!」
「素晴らしいです。殿下!」
ハロルド君、シェリル嬢、リネリア嬢がネイサン殿下を賞賛する。
うん。ちゃんと的に当たったもんね。
多分だけど、立ち位置からすると隣の的を狙ったのかなと思ったけど、狙い通りだったのかもしれない。
「うむ!」
殿下が得意げな顔をして手をひらひらとさせた。
シェリル嬢がニコニコとしてハロルド君の方を見た。
「次はハロルドかしら。」
「……わかった。」
ハロルド君は一瞬だけ間をおいて頷いた。
そして、的に相対するように立つと腕を前に突き出した。
「風よ。吹き荒ぶ風の精霊よ。我に力を貸したまえ。その先にある的に偉大なる風を打ちつけたまえ。はぁ!」
ハロルド君まで詠唱を。クールインテリメガネなのに!
ハロルド君の出した風魔法がシャッと的の中央部を掠めた。
殿下が手を目の上に添えて、遠くを覗き見た。
「うん?よくわからなかったぞ。当たったか?」
「風は見えないですものね。きっと当たっていますわ。」
シェリル嬢も的を見つめて目を細めている。
「当たった……と思うが……?」
ハロルド君が静かに言った。
リネリア嬢が頷く。
「はい。的が揺らぐのが見えました!」
「おお!見てこよう!」
リネリア嬢の言葉を聞いて、ネイサン殿下が的を立てている場所に向かって駆け出す。
すぐに、ハロルド君がネイサン殿下の後を追いかけ、一瞬遅れてシェリル嬢とリネリア嬢、護衛の人達が移動を始めた。
僕と兄様は、出遅れた感じだ。
それぞれに護衛の人がついてきていて、メイド姿の人も2人いる。思った以上に大人数での大移動だった。
訓練場に向かう途中で、ゴーシュさんが戻ってきて合流した。
ゾロゾロゾロゾロ護衛がどんどん強化されて大行列になっているいるけど、ただの男爵家の敷地内移動ですよ。
訓練場が見えてくると、殿下がぼそりと不満そうな声を上げた。
「なんだ。どこに連れていってくれるのかと思ったら。」
「訓練場は見慣れているものね。」
青色の髪のシェリル・ナスタチウム辺境伯令嬢が殿下の言葉を聞いて、面白そうに笑う。
ハロルド君が小さく肩を竦めた。
「実際に魔獣の討伐に行く前に、練習ができる場所は助かる。」
「……まあ、確かに、魔法の試し撃ちできる場所は必要だな。」
不満そうだったけど、納得いただけたようだ。訓練場の中に入って、キョロキョロと興味深げに見回し始めた。
「あれが的か。……随分素朴だな。」
「的として機能していれば良いと思いますよ。」
殿下の言葉にハロルド君がフォローを入れてくれる。訓練場に入ってそうそうに奥にある的に早速注目が集まったので、兄上が手を軽く上げて言った。
「小さい場所ですので、的の感覚も他より狭いかもしれません。弟が試し撃ちをして見せます。」
兄上はそう言って僕をチラリと見て、指先を縦に動かした。
僕は頷いて前に一歩でた。殿下が待ったの声を上げた。
「試し撃ちなら僕がやってみたいな。」
「……。」
ええ?って言葉を思わず飲み込んでしまった。
いくらでも撃てるのになんで試し撃ちをしたがるの?一番に撃ちたいだけ?一番が良いの?
「ふふ。久しぶりに殿下の魔法を拝見できますね。」
「ああ。この所は剣術の稽古に力を入れていたからな。でも魔法だって衰えてはいないぞ。」
シェリル嬢とネイサン殿下がそんな会話をする。
ネイサン殿下が上着を脱いで、後ろに控えていたメイドに持たせた。
シャツの袖を肘まで捲り上げる。
「火で焦げたら嫌だからな。」
「お気をつけて。」
「よし!では!」
ネイサン殿下が片手を突き出して掌を的に向けた。
「火よ。燃え上がる火の精霊よ。我に力を貸したまえ。その先にある的に偉大なる炎を打ちつけ給え。」
「?」
殿下が片手を突き出したまま、何かブツブツと言い始めた。これってもしかして詠唱というやつ?
「ハ!」
最後に気合いの入った声を上げると殿下の掌あたりからひゅっと火の玉が出た。
ジュ、とかすかに音がして、炎が的の端に当たって消えた。
「お見事!」
「流石です!」
「素晴らしいです。殿下!」
ハロルド君、シェリル嬢、リネリア嬢がネイサン殿下を賞賛する。
うん。ちゃんと的に当たったもんね。
多分だけど、立ち位置からすると隣の的を狙ったのかなと思ったけど、狙い通りだったのかもしれない。
「うむ!」
殿下が得意げな顔をして手をひらひらとさせた。
シェリル嬢がニコニコとしてハロルド君の方を見た。
「次はハロルドかしら。」
「……わかった。」
ハロルド君は一瞬だけ間をおいて頷いた。
そして、的に相対するように立つと腕を前に突き出した。
「風よ。吹き荒ぶ風の精霊よ。我に力を貸したまえ。その先にある的に偉大なる風を打ちつけたまえ。はぁ!」
ハロルド君まで詠唱を。クールインテリメガネなのに!
ハロルド君の出した風魔法がシャッと的の中央部を掠めた。
殿下が手を目の上に添えて、遠くを覗き見た。
「うん?よくわからなかったぞ。当たったか?」
「風は見えないですものね。きっと当たっていますわ。」
シェリル嬢も的を見つめて目を細めている。
「当たった……と思うが……?」
ハロルド君が静かに言った。
リネリア嬢が頷く。
「はい。的が揺らぐのが見えました!」
「おお!見てこよう!」
リネリア嬢の言葉を聞いて、ネイサン殿下が的を立てている場所に向かって駆け出す。
すぐに、ハロルド君がネイサン殿下の後を追いかけ、一瞬遅れてシェリル嬢とリネリア嬢、護衛の人達が移動を始めた。
僕と兄様は、出遅れた感じだ。
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