転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第39話 殿下と令嬢、令息登場

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玄関ホールに着くと、長椅子に令嬢が一人腰を下ろしていた。蜂蜜色の髪の令嬢だ。令嬢の後ろに騎士が二人立っている。

「おはようございます。」

僕達の姿を見て、蜂蜜色の髪をした令嬢が長椅子から立ち上がり、膝を折り曲げて挨拶をした。

「おはようございます。ローレン・ゲンティアナです。こちらは弟のクリストファーです。」

兄上が僕を紹介してくれた。
僕もご挨拶をしなきゃ。
胸に手を当てて、お辞儀をする。

「ゲンティアナ男爵家次男、クリストファー・ゲンティアナです。クリスと呼んでください。」

うまくご挨拶できた!と思う。
蜂蜜色の髪の令嬢は微笑んで挨拶を返してくれた。

「リネリア・オーキッドです。リネリアとお呼びください。今日はよろしくお願いしますね。ローレン様、クリス様。」
「様は不要です。」
「では、ローレン君とクリス君って呼ぶわね。」

ふふふと、蜂蜜色の髪をしたリネリア嬢が微笑んだ。色白で人形のような美少女だ。

美少女だから、と言うより、僕は昨晩、脳裏に浮かんだ絵の中の令嬢にそっくりに見えて凝視してしまった。
夕食後にメイリのリクエストで描いた絵にも確かに似ている。その時の絵は何年か後という感じで少しお姉さんだった。
寝る前に思い浮かべた絵は、ほとんど今のリネリア嬢だ。

どうしよう。昨晩思い浮かんだことが、本当だったら?

「他の方達は、もう少ししたらいらっしゃると思いますわ。」

リネリア嬢がニコニコとして言う。

「リネリア嬢はお父上と一緒にいらしたんですか?」

確か、オーキッド伯爵も屋敷に来ていると聞いた。

「はい。父と一緒に来ました。兄も来たがっていたんですけど。」
「お兄上がいらっしゃるんですね。」
「はい。四つ年上の兄がいます。兄も訓練には興味があると言っていたのですけど、今回は学園入学の準備の訓練なので兄は母とお留守番になりました。」
「お母上、とお留守番……。」
「はい。お留守番って言うとちょっと子供っぽいですわね。」

リネリア嬢がくすくすと笑った。僕は昨晩の絵の中の母親を思い浮かべてしまっていて、お元気みたいなのでちょっとホッとしていた。
お母上がお元気ということは、妄想の中のこととは違うということだろう。
……いや、……これから起きることかもしれない?

ドクドクと心臓の鼓動の音が聞こえる。どうしよう。これから本当に起きてしまったら。

兄上とリネリア嬢が何か会話をしていたけど、僕は心臓の鼓動がうるさくてあまり聞き取れなかった。
ふと玄関の扉が開いて、男性二人が玄関ホールに入ってきた。

「あ、お父様。おはようございます。」

玄関から入ってきた男性を見て、リネリア嬢が微笑む。髭の男性だ。昨晩の絵のイメージに似ている。リネリア嬢のお父上だからオーキッド伯爵だろう。
オーキッド伯爵の隣の大柄な男性はナスタチウム辺境伯様だ。以前にも何度か会ったことがある、ゴリゴリマッチョな人だ。

僕と兄上もオーキッド伯爵と辺境伯様に挨拶をした。つい、じっとオーキッド伯爵の顔を見つめてしまったけれど。特に何も言われなかった。

辺境伯様とオーキッド伯爵が玄関ホールから通路の方に去っていったすぐ後に、話し声と共に3人が姿を現した。

「やあ。お待たせしてしまったかな。おはよう。」
朝日を浴びてキラキラ輝く金髪をした少年。目の下にホクロがある。昨晩僕が描いた絵の人物を少し幼くしたみたいに見えるし、
さっき、ゴーシュさんとあった時に浮かんだ絵のイメージとそっくりだ。

「リネリアはもう来ていたのね。」

青色の髪をした令嬢が言う。剣帯を身につけていて腰に剣を刺している。ワンピース姿で靴は乗馬の時のようなブーツを履いていた。
髪はメイリが言った通りドリルヘアだ。
本当にイメージ通りだった。
ハロルド君は昨日会っているから、驚かないけれど。
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