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第1章
第38話 妄想と食欲
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「ありがとう。なかなか良い設備だね。こじんまりしているけど、必要なものが揃っていて機能的で清潔だ。」
ゴーシュさんがニコニコしながら近づいてきた。そして、僕の顔を見てちょっと怪訝な顔をした。目が赤くなっているのに気がついたんだろう。
「おや?どうしたんだい?」
ゴーシュさんがしゃがみ込んで僕の顔を覗き込んだ。目線の高さを合わせてくれるなんて良い人なんだな。
「何でもないで……、あ……、あのっ……。」
「うん?どうしたんだい?」
「解毒……、解毒薬を持ち歩いてください。」
「毒?」
ゴーシュさんが怪訝そうな表情になる。
あああ!何か変なことを言う子供だと思われた!
急に解毒とか言って、簡単に理解してもらえるわけないじゃん!
そもそも僕の妄想の世界だけのことかもしれないんだし。
だけど……、もしも本当に毒でやられちゃうなんてことがあったら……。
レオノールさんは僕達を助けてくれたんだ。レオノールさんが辛い思いをして死んじゃうなんてことがあったら嫌だ。
ゴーシュさんはちょっと首を傾げながら、僕の頭の上にポンと手を置いた。重っ。
「この辺は毒を持った魔獣が多いのかな?ありがとう。気をつけるよ!」
「あ……。はい……。」
毒というか、「呪いの毒」なんですって、うまく言えない。
「呪いの毒」というのが僕自身がよく分かってない。普通の解毒剤じゃ効かないんじゃないかってことくらいしか想像できない。
「大丈夫さ。お兄さんはこう見えて結構強いからね。ハハハ……。」
そう言ってゴーシュさんが立ち上がった。
お兄さん……?ってチラッと思ったけど、ツッコマなかった。
ゴーシュさんはまた来ると言って、訓練場から去っていった。
呪いの毒の話はできなかった。
どうしよう。本当のことになってしまったら?
そもそも「呪いの毒」というものが本当にあるの?まずはそれを確認しよう。
「ねえ。兄上?」
ゴーシュさんが出て行ったドアの方を見ていた兄上に僕は話しかけた。
「うん?」
「ねえ、呪いの毒ってあるの?」
「は?何だいきなり。」
「ちょっと思い浮かんじゃったんだ。何だか解毒が難しそうな感じで。」
「呪いとか物騒だな。毒は、母上がちょっと詳しいかも。」
「じゃあ、後で母様に聞いてみる。」
「おう。それより、そろそろ殿下達を迎えに行かないと。」
兄上に言われて少し隙間が開いている入り口から外の様子を見ると、だいぶ日が高くなっているみたいに見えた。
急いで壊れかけた剣とかを片付けて、訓練場の扉に一旦鍵をかけ、本館の方に向かった。
歩きながら兄上に話しかける。
「ねえ。兄上。」
「うん?」
「お腹空かない?」
「……朝食はもうちょっと後だぞ。」
兄上がちょっと怪訝そうな顔をした。でも色々頭の中が忙しくなっていたからか、緊張がおさまったら急に空腹を感じてしまったんだ。
僕が訴えるように兄上を見つめたら、兄上はわかってくれたのか本館の厨房に寄ってくれた。厨房ではジャックが忙しそうに朝食の支度をしていた。
兄上がジャックに声をかける。
「おはよう。ジャック。リンゴ一個持っていっても良い?」
「おはようございます。坊っちゃん達。はい、どうぞ。」
ジャックは少しの間だけ手を止めてこちらを見てニコリとして言った。兄上は、厨房の隅に積み重ねておいてあった木箱の中のリンゴを一つ手にし水瓶の水をかけてさっと洗ってから、手で半分に割った。そしてリンゴの半分を僕に差し出した。
「ほれ。急いで食べろ。」
「兄上もお腹空いていたの?」
「早起きしたからな。」
シャクシャクと二人でリンゴを齧る。酸っぱさが強いリンゴだけど香りが良くて美味しい。空腹感も治った。
食べ終わって、少しベタつく手を洗ってから、玄関ホールに向かった。ハロルド君や殿下と玄関ホールで待ち合わせることになっているそうだ。
ゴーシュさんがニコニコしながら近づいてきた。そして、僕の顔を見てちょっと怪訝な顔をした。目が赤くなっているのに気がついたんだろう。
「おや?どうしたんだい?」
ゴーシュさんがしゃがみ込んで僕の顔を覗き込んだ。目線の高さを合わせてくれるなんて良い人なんだな。
「何でもないで……、あ……、あのっ……。」
「うん?どうしたんだい?」
「解毒……、解毒薬を持ち歩いてください。」
「毒?」
ゴーシュさんが怪訝そうな表情になる。
あああ!何か変なことを言う子供だと思われた!
急に解毒とか言って、簡単に理解してもらえるわけないじゃん!
そもそも僕の妄想の世界だけのことかもしれないんだし。
だけど……、もしも本当に毒でやられちゃうなんてことがあったら……。
レオノールさんは僕達を助けてくれたんだ。レオノールさんが辛い思いをして死んじゃうなんてことがあったら嫌だ。
ゴーシュさんはちょっと首を傾げながら、僕の頭の上にポンと手を置いた。重っ。
「この辺は毒を持った魔獣が多いのかな?ありがとう。気をつけるよ!」
「あ……。はい……。」
毒というか、「呪いの毒」なんですって、うまく言えない。
「呪いの毒」というのが僕自身がよく分かってない。普通の解毒剤じゃ効かないんじゃないかってことくらいしか想像できない。
「大丈夫さ。お兄さんはこう見えて結構強いからね。ハハハ……。」
そう言ってゴーシュさんが立ち上がった。
お兄さん……?ってチラッと思ったけど、ツッコマなかった。
ゴーシュさんはまた来ると言って、訓練場から去っていった。
呪いの毒の話はできなかった。
どうしよう。本当のことになってしまったら?
そもそも「呪いの毒」というものが本当にあるの?まずはそれを確認しよう。
「ねえ。兄上?」
ゴーシュさんが出て行ったドアの方を見ていた兄上に僕は話しかけた。
「うん?」
「ねえ、呪いの毒ってあるの?」
「は?何だいきなり。」
「ちょっと思い浮かんじゃったんだ。何だか解毒が難しそうな感じで。」
「呪いとか物騒だな。毒は、母上がちょっと詳しいかも。」
「じゃあ、後で母様に聞いてみる。」
「おう。それより、そろそろ殿下達を迎えに行かないと。」
兄上に言われて少し隙間が開いている入り口から外の様子を見ると、だいぶ日が高くなっているみたいに見えた。
急いで壊れかけた剣とかを片付けて、訓練場の扉に一旦鍵をかけ、本館の方に向かった。
歩きながら兄上に話しかける。
「ねえ。兄上。」
「うん?」
「お腹空かない?」
「……朝食はもうちょっと後だぞ。」
兄上がちょっと怪訝そうな顔をした。でも色々頭の中が忙しくなっていたからか、緊張がおさまったら急に空腹を感じてしまったんだ。
僕が訴えるように兄上を見つめたら、兄上はわかってくれたのか本館の厨房に寄ってくれた。厨房ではジャックが忙しそうに朝食の支度をしていた。
兄上がジャックに声をかける。
「おはよう。ジャック。リンゴ一個持っていっても良い?」
「おはようございます。坊っちゃん達。はい、どうぞ。」
ジャックは少しの間だけ手を止めてこちらを見てニコリとして言った。兄上は、厨房の隅に積み重ねておいてあった木箱の中のリンゴを一つ手にし水瓶の水をかけてさっと洗ってから、手で半分に割った。そしてリンゴの半分を僕に差し出した。
「ほれ。急いで食べろ。」
「兄上もお腹空いていたの?」
「早起きしたからな。」
シャクシャクと二人でリンゴを齧る。酸っぱさが強いリンゴだけど香りが良くて美味しい。空腹感も治った。
食べ終わって、少しベタつく手を洗ってから、玄関ホールに向かった。ハロルド君や殿下と玄関ホールで待ち合わせることになっているそうだ。
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