転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第59話 殿下とレオノールさん

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どうやらゴーシュさんからも魔魚を釣る許可は貰えたようだった。ウキウキしてしまう。
スライム狩りをある程度やってから、休憩タイムに魔魚釣りのデモンストレーションをするという流れになったようだ。ゴーシュさんと話をした後にレオノールさんが僕達のところに戻ってきて、「しばらくしたらスライム狩りを休憩するから、その頃に魔魚を釣ってみせて欲しい。」と言ってきた。

是非、焚き火もしてください!って言ってしまった。
その場で焼いて食べると美味しいんだよ!
僕の熱意が伝わったのか、騎士の人達が木の枝とかを集め始めたよ。

ポカ!
ぽよん
ポカ!
ぽよん

自発的には跳ねないファンゴスライムが跳ねる。ネイサン殿下が振り下ろした剣がファンゴスライムの身体に当たるとファンゴスライムが跳ねられたように飛ぶのだ。

「ああー!」
「殿下、核を良く見て、狙いを定めてください。」

剣が核に当たらず、ファンゴスライムが逃げてしまうようだ。

「思ったより難しいのだな。」

剣を杖のように立てて、ネイサン殿下が軽く額の汗を拭った。


ーーーあの頃、僕はマッドキャタピラ一匹倒すのも苦戦していて……。
ーーーえええ?ネイサン様にそんな頃があったんですか?
ーーーああ、後ろから跳ねてきたジャンピングラットにも気が付かなくて、レオンに助けられた。
ーーーレオン様って……。ネイサン様を庇って亡くなったっていう方ですか?
ーーーああ。レオンにはいつも助けてもらってばかりだった。だから、僕はもっと強くならないといけないって思ったんだ。
ーーーそうだったんですね。ネイサン様は大変な努力をなさったんですね。

また、脳裏に絵が浮かんだ。夕暮れに染まる街並みを眺めながら語り合う男女。一人はネイサン殿下でもう一人はピンク髪の令嬢だった。

レオノールさんがネイサン殿下を庇って亡くなった?
呪いの毒の件の続き?

「あ!」

続きを知りたいと思ったら、ネイサン殿下の声が聞こえて、脳裏の絵が掻き消えた。

パシュ!
ポーン!

小さく鈍い音が響いて何かが茂みの方に飛んでいく。
ネイサン殿下の後ろにレオノールさんが立っていた。小さい盾を手に構えていた。

「あ、レオン!」

後ろを振り向いたネイサン殿下がレオノールさんの事を見て驚いたように言った。ちょっと声が嬉しそうだ。

「え?今って、何かあったのか?」
「後ろからスライムが来ていましたよ。跳ねてくるスライムもいるようなのでお気をつけくださいね。」

ネイサン殿下が目を瞬かせて周囲をキョロキョロしてレオノールさんに尋ねた。レオノールさんは、盾の状態をチラリと確認するように目をやってからニコリとした。パッとネイサン殿下の顔が明るくなる。

「そうだったんだ。ありがとう!レオンにはいつも助けてもらってばかりだね。」
「仕事ですので。」
「ううーん……。ねえ、レオンは男爵邸には泊まらないの?」

ネイサン殿下が目を輝かせながらレオノールさんに話しかけている。レオノールさんは、微笑みを浮かべて静かに受け答えしている。

「部下がおりますから。でも、宿泊場所に限らず護衛は致してますからご安心ください。」
「朝の訓練とか見てもらえないじゃないかぁ!」

ネイサン殿下は少し大きな声を出して、地団駄踏むようにドンドンと足踏みをした。
レオノールさんと話している時のネイサン殿下は少し子供っぽく見える。兄上と喋っている時は、余裕な感じなのにね。
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