転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第106話 「収納」スキル練習

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ごめんなさい!森が火事になったらいけないと思って……」
「責めたりしていないわよ。火事を防いでくれてありがとう。状況の確認をしていただけよ」

僕が水魔法で水をかけまくって余計に現場を荒らしてしまったんじゃないかと思って慌てて謝ると、母様は首を横に振った。

「でも、犯人の手がかりとかが分かりにくくなっちゃったんじゃない?」
「森林火災が起きるよりずっと良いわよ」

沼地で水魔法を使いまくったことについては特に注意されたりとかないようだった。ちょっとホッとする。

「母上。キノコの件はどうなりましたか?」

少し会話が途切れたタイミングで兄上が母様に尋ねた。
母様は「うーん……」とちょっと考えているように首を傾けた。

「ゴーシュ様に調査していただくようにお願いしたわ。ローレンとクリスにお願いよ。その件は他で話さないでね。メイリも何か聞いていたら、秘密にしておいてね」
「なあに?……キノコ?」
「聞いてなかったなら良いわ」

メイリが不思議そうに首を傾げた。「他で話さないで」って言われたけど母様はメイリにも内緒にしておくってことみたいだ。

ゴーシュさんはあの灰色キノコがわざと持ち込まれたものだと思ったんだろうか。母様がゴーシュさんとどんな話をしたのか分からないけど、ちょっと深刻なことなのかもしれない。

「収納」スキルの練習をしたいから、絵を見せるだけってことにしたのに母様に昼間の背びれイタチ討伐訓練の時の報告とかもしていたら結構遅い時間になってしまった。

メイリが絵を見て喜んでくれたから良かったかな。
また浮かんできたことを絵に描きたい。メイリや兄上を描くのも良いなぁ。メイリは可愛いし、兄上は格好いいからなぁ。

絵も描きたいけど今日は「収納」を試すって決めていたので、部屋に戻ったら早速「収納」を試すことにした。

どのくらいの量が収納できるのか気になるけど、まずはちゃんと何度も出し入れができるかを試すところから始める。
手短なところで先程食堂に見せに行った絵を収納してみる。

「収納」を意識をすると小さい魔法陣が浮き上がり、手にしていた絵がスッと消えた。そして魔法陣も同時に消えた。

昼間に最初に出てきた魔法陣よりずっと小さい。
「収納」から絵を取り出してみると、同じ位の大きさの魔法陣が浮かび上がった。

「収納する物の大きさとか?」

絵よりも大きいものを試してみる。部屋を見回して、椅子が目についたので椅子を収納した。
先ほどよりも大きめの魔法陣が浮かび上がった。
取り出す時の魔法陣の大きさは同じだ。

今度は、絵より小さい羽ペンを「収納」してみた。予想通り小さい魔法陣が出てきた。

どうも「収納」する大きさによって浮かび上がる魔法陣の大きさが違ってくるみたいだった。予想だけど、収納する物の大きさによって消費する
魔力の量が違っていてそれが魔法陣の大きさに反映されているんじゃないかと思う。

「魔法陣、見えないようにできないかな……」

ポケットとか鞄に物を入れるふりをして「収納」にしまおうとした時に魔法陣が浮かび上がってしまったらバレバレだ。
「収納」のスキルを内緒にするかどうかって言うところもあるけど、ささっと他の人から分からないように「収納」してみたいなぁ。

試しにすごくゆっくりと「収納」をしてみることにした。ジワジワジワジワと収納する倉庫の扉が少しずつ開いていく様子をイメージする。

ジワジワ、ジワジワ……

細い光の筋みたいな線が僕の手元近くに現れた。それが「収納」の入り口に見えた。

ジワジワ、ジワジワ……。

光の筋の周りに光が集まっていく。そして光の筋に見えてみたものが口を開き始めた。
光の筋の口から何かが出てきた。出てくる瞬間は煙のように形がなかったものが、小さい円になる。魔法陣だ。
魔法陣はほとんど広がらずにスゥッと消えた。

ジワジワと進めていたのに魔法陣が消えるのは早かった。「収納」しなかったからかな。

今度は、またゆっくりジワジワと進めながら、実際に「収納」もするように羽ペンを手に準備をしておいた。
そうしたら、ちゃんとゆっくりと魔法陣が浮かび上がって空気の中に溶け込むように消えていった。

「よし。もう一回!」

今度は絵筆を手にして、再度ジワジワ「収納」。
光の筋から魔法陣が出始めたところで、魔法陣を押し留めることに挑戦をする。
魔法陣が見え始めたところで、絵筆で魔法陣を押し込むように意識をしながら、「収納」に絵筆を入れた。

絵筆が光の筋の中に消え、魔法陣も広がらずに光の筋の中に見えなくなった。
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