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第1章
第112話 解毒剤の活躍
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兄上は腕組みをして眉を顰め少し考えている様子だった。
「……母上に話をしてくるか」
「昨日、母様に毒キノコの話はしたよね」
「対策の話はあまりしていなかったからな。……ちょっと行ってくる!」
兄上は一人で厨房を飛び出して行ってしまった。「行ってくる」っていうことは僕は厨房で待っていたら良いんだろうか。
どうしよう。まだ朝食前なのに美味しそうな匂いがしているとお腹が減っちゃうよ?
竈門の上では大きい鍋が湯気を立てている。パンの香ばしい香りも立ち込めている。今日のパンは何パンかな?
「今日はゴマ入りパンですよ」
じっとオーブンを見つめていたらジャックがオーブンを開けてパンの乗った鉄板を引き出した。まんまるの狐色に焼けたパンが見えた。ちょっと表面に黒い点が見えるのがゴマだろうか。美味しそう。
「味見なさいますか?」
「え?良いの?」
ジャックがゴマ入りパンの一つを切ってくれた。小さく切ったパンの一切れを指で摘もうとしたら背後から声がかかった。
「あ!クリスだけで食べてる!」
「味見だよー!」
「ローレン坊ちゃんも、奥様もどうぞ」
振り向くと兄上が母様と並んで厨房の入り口に立っていた。
兄上と母様とジャックも一緒に焼きたてのゴマ入りパンの味見をした。熱々でふかふかのゴマ入りパンは美味しい。
ゴマ入りパンの味見をした後、厨房の近くの部屋に入って母様と話をすることになった。
「屋敷の外で野営をしていた騎士さん達の中に毒キノコを食べちゃった人達がいるんだって」
「ええ!?」
長椅子に腰を下ろすとすぐに兄上が重々しく口を開いた。
「どうして?木箱に入ったキノコは捨てたんだよね?」
「厨房に差し入れで持ってきた以外に自分達で調理して食べた人がいるらしいんだよ」
昨晩のうちに厨房の差し入れに毒キノコが混じっていたことはゴーシュさんに伝えていたはずなんだけど、ゴーシュさんがキノコのことを部下の騎士さん達に伝える前にキノコを調理して食べちゃった人がいたそうだ。
「……毒キノコを食べた騎士さん達は、大丈夫だったの?」
「大丈夫よ。良い解毒剤があったのですって。」
「解毒剤?」
「ええ。……ねえ、クリス。誰かにあの水を渡さなかった?」
「渡したよ!……もしかして?」
光水の小瓶を二本、昨日レオノールさんに渡した。
「解毒剤を持っていた人」と言うのは、もしかしてレオノールさんの事なのかな。
僕がそう考えて聞き返すと、母様が小さく頷いた。
「ええ。食後に体調を崩した騎士達の症状を見て毒ではないかと判断して、試しに使ってみたそうなの」
「効いたんだね!よかった!」
「そうね。ほとんどの人は解毒剤を飲んだら、症状が軽くなってきて回復したと言うことよ。その点はよかったわ」
「……うん?」
母様が何か言葉を濁した風に感じた。
でも怒っているとかではないみたいだ。
何かあるのかなと不思議に思っていると、兄上が口を開いた。
「タイミングが良すぎるとかって話が出たらしい。
毒が出てからすぐに解毒剤で。その解毒剤も当日手に入れた物だからって」
「えええ!?……もしかして、僕、犯人だって思われた?」
ジャンジャンジャーン!という音と共に脳裏に、崖っぷちの絵が浮かんできた。
なんで崖っぷちなのかよくわからないけど。
「クリス、心配ないわ」
「で、でも!」
「疑われたりとかしてないからね」
動揺していたら、兄上がポンポンと僕の背中を叩いた。
「そもそも、食材の提供すらしていないんだから、全く関係がないのは明白なんだし。タイミングは本当に偶然だったって話に落ち着いたようだよ」
「そっかぁ~」
僕は疑われてはいないと聞いてほっとした。
「……母上に話をしてくるか」
「昨日、母様に毒キノコの話はしたよね」
「対策の話はあまりしていなかったからな。……ちょっと行ってくる!」
兄上は一人で厨房を飛び出して行ってしまった。「行ってくる」っていうことは僕は厨房で待っていたら良いんだろうか。
どうしよう。まだ朝食前なのに美味しそうな匂いがしているとお腹が減っちゃうよ?
竈門の上では大きい鍋が湯気を立てている。パンの香ばしい香りも立ち込めている。今日のパンは何パンかな?
「今日はゴマ入りパンですよ」
じっとオーブンを見つめていたらジャックがオーブンを開けてパンの乗った鉄板を引き出した。まんまるの狐色に焼けたパンが見えた。ちょっと表面に黒い点が見えるのがゴマだろうか。美味しそう。
「味見なさいますか?」
「え?良いの?」
ジャックがゴマ入りパンの一つを切ってくれた。小さく切ったパンの一切れを指で摘もうとしたら背後から声がかかった。
「あ!クリスだけで食べてる!」
「味見だよー!」
「ローレン坊ちゃんも、奥様もどうぞ」
振り向くと兄上が母様と並んで厨房の入り口に立っていた。
兄上と母様とジャックも一緒に焼きたてのゴマ入りパンの味見をした。熱々でふかふかのゴマ入りパンは美味しい。
ゴマ入りパンの味見をした後、厨房の近くの部屋に入って母様と話をすることになった。
「屋敷の外で野営をしていた騎士さん達の中に毒キノコを食べちゃった人達がいるんだって」
「ええ!?」
長椅子に腰を下ろすとすぐに兄上が重々しく口を開いた。
「どうして?木箱に入ったキノコは捨てたんだよね?」
「厨房に差し入れで持ってきた以外に自分達で調理して食べた人がいるらしいんだよ」
昨晩のうちに厨房の差し入れに毒キノコが混じっていたことはゴーシュさんに伝えていたはずなんだけど、ゴーシュさんがキノコのことを部下の騎士さん達に伝える前にキノコを調理して食べちゃった人がいたそうだ。
「……毒キノコを食べた騎士さん達は、大丈夫だったの?」
「大丈夫よ。良い解毒剤があったのですって。」
「解毒剤?」
「ええ。……ねえ、クリス。誰かにあの水を渡さなかった?」
「渡したよ!……もしかして?」
光水の小瓶を二本、昨日レオノールさんに渡した。
「解毒剤を持っていた人」と言うのは、もしかしてレオノールさんの事なのかな。
僕がそう考えて聞き返すと、母様が小さく頷いた。
「ええ。食後に体調を崩した騎士達の症状を見て毒ではないかと判断して、試しに使ってみたそうなの」
「効いたんだね!よかった!」
「そうね。ほとんどの人は解毒剤を飲んだら、症状が軽くなってきて回復したと言うことよ。その点はよかったわ」
「……うん?」
母様が何か言葉を濁した風に感じた。
でも怒っているとかではないみたいだ。
何かあるのかなと不思議に思っていると、兄上が口を開いた。
「タイミングが良すぎるとかって話が出たらしい。
毒が出てからすぐに解毒剤で。その解毒剤も当日手に入れた物だからって」
「えええ!?……もしかして、僕、犯人だって思われた?」
ジャンジャンジャーン!という音と共に脳裏に、崖っぷちの絵が浮かんできた。
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「クリス、心配ないわ」
「で、でも!」
「疑われたりとかしてないからね」
動揺していたら、兄上がポンポンと僕の背中を叩いた。
「そもそも、食材の提供すらしていないんだから、全く関係がないのは明白なんだし。タイミングは本当に偶然だったって話に落ち着いたようだよ」
「そっかぁ~」
僕は疑われてはいないと聞いてほっとした。
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