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第1章
第119話 逃げるが勝ち?
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「何ですか?貴方達は!?」
兄上が警戒しながら馬を僕と男性二人の間に移動させたて近づいてくる男性達をきっと睨みつけた。
僕達の方に向かって歩いてきた男性達が顔を歪ませて口の端を上げた。
「ああん?俺たちはなぁ~。偉いんだぞぉ。お貴族様の騎士だぁ!」
少し呂律が回らないような口調で言いながらゆらゆら揺れる。よくみると顔も赤い。酔っ払っているのかな?
昼間なのに……。
騎士なのか。言われてみれば、胸元とかだらしない感じでシャツがはだけているけど、羽織っている上着は騎士服っぽいかもしれない。
袖のあたりに見たことがあるような刺繍が入っている。どの家かはっきりわからないけど、誰かの護衛で来ている人達だと思う。
「兄上……」
そっと兄上の様子を伺うと兄上は腰の剣の柄に手を添えていつでも斬れるように身構えているみたいに見えた。
「……クリス。逃げろ」
「え?」
「俺が引き付けておくから、早く逃げろ」
戦うのかなって思ったけど、兄上は囮になるつもりみたいだ。兄上を置いて僕だけ逃げるというのは嫌だけど、逃げるなら別に囮はいらない気がする。
「兄上、こっちは馬だよ」
「あ、そうか」
向こうは徒歩でこっちは馬なんだから、逃げるならさっさと馬を走らせば良いと思う。念の為、兄上が手綱を握り直したタイミングで、風魔法を発動させて地面から砂を巻き上げるように風を起こした。
「う?」
「む?」
酔っ払い騎士達は砂埃を浴びて顔を顰めた。それを合図にして僕と兄上は同時に馬を方向転換させて町に向かって走らせた。
「あ!コラ!」
「待て!」
後方で呼び止めるような声が聞こえてきたけど、無視だ。「害意」を背中に感じる。火魔法が発動した気配も感じたけど、届かない距離だと思うから構わず馬を進めた。
怒鳴り声が小さくなっていく。
暫く走ってから振り返り追いかけられていない事を確認してから馬の速度を落とした。
「ねえ。あの騎士服、護衛の人達で来ている人がいたよね。……ハロルド君のところかなぁ」
「河岸のは、な。焚き火の近くにいた方は、違った気がする。……辺境伯様のとこかも」
「そうなの?」
「とりあえず。急いで帰ろう」
兄上が再び馬の速度を上げた。僕も兄上の後ろを追いかけて馬を走らせる。
「戦うのかと思ったよ」
「相手が騎士だと、色々ややこしくなるかもしれないだろ」
相手が騎士だからって兄上が言うのは、「騎士だから強い」って言いたいんじゃなくて、家同士の問題に発展するかもしれないからなんだろうな。でも、放置していて良いのかって気持ちもある。
「あの人達、火魔法撃ちまくってたよね。もしかして沼地を荒らした人達かも」
「その可能性はあるな。家に戻って報告しよう」
屋敷まで一気に馬を走らせて帰り、母様に報告した。
僕達の報告を聞いた母様は、ちょっと動揺した様子に見えた。
相手が、訪問客のところの騎士らしいという報告に戸惑ったみたいだった。
「……他家の騎士だと争いに発展しそうね。でも、放っておいても火事を起こしそうだわ。」
仕方ないと言った感じで、母様は騎士に現場に向かうように指示を出しに向かった。
兄上が警戒しながら馬を僕と男性二人の間に移動させたて近づいてくる男性達をきっと睨みつけた。
僕達の方に向かって歩いてきた男性達が顔を歪ませて口の端を上げた。
「ああん?俺たちはなぁ~。偉いんだぞぉ。お貴族様の騎士だぁ!」
少し呂律が回らないような口調で言いながらゆらゆら揺れる。よくみると顔も赤い。酔っ払っているのかな?
昼間なのに……。
騎士なのか。言われてみれば、胸元とかだらしない感じでシャツがはだけているけど、羽織っている上着は騎士服っぽいかもしれない。
袖のあたりに見たことがあるような刺繍が入っている。どの家かはっきりわからないけど、誰かの護衛で来ている人達だと思う。
「兄上……」
そっと兄上の様子を伺うと兄上は腰の剣の柄に手を添えていつでも斬れるように身構えているみたいに見えた。
「……クリス。逃げろ」
「え?」
「俺が引き付けておくから、早く逃げろ」
戦うのかなって思ったけど、兄上は囮になるつもりみたいだ。兄上を置いて僕だけ逃げるというのは嫌だけど、逃げるなら別に囮はいらない気がする。
「兄上、こっちは馬だよ」
「あ、そうか」
向こうは徒歩でこっちは馬なんだから、逃げるならさっさと馬を走らせば良いと思う。念の為、兄上が手綱を握り直したタイミングで、風魔法を発動させて地面から砂を巻き上げるように風を起こした。
「う?」
「む?」
酔っ払い騎士達は砂埃を浴びて顔を顰めた。それを合図にして僕と兄上は同時に馬を方向転換させて町に向かって走らせた。
「あ!コラ!」
「待て!」
後方で呼び止めるような声が聞こえてきたけど、無視だ。「害意」を背中に感じる。火魔法が発動した気配も感じたけど、届かない距離だと思うから構わず馬を進めた。
怒鳴り声が小さくなっていく。
暫く走ってから振り返り追いかけられていない事を確認してから馬の速度を落とした。
「ねえ。あの騎士服、護衛の人達で来ている人がいたよね。……ハロルド君のところかなぁ」
「河岸のは、な。焚き火の近くにいた方は、違った気がする。……辺境伯様のとこかも」
「そうなの?」
「とりあえず。急いで帰ろう」
兄上が再び馬の速度を上げた。僕も兄上の後ろを追いかけて馬を走らせる。
「戦うのかと思ったよ」
「相手が騎士だと、色々ややこしくなるかもしれないだろ」
相手が騎士だからって兄上が言うのは、「騎士だから強い」って言いたいんじゃなくて、家同士の問題に発展するかもしれないからなんだろうな。でも、放置していて良いのかって気持ちもある。
「あの人達、火魔法撃ちまくってたよね。もしかして沼地を荒らした人達かも」
「その可能性はあるな。家に戻って報告しよう」
屋敷まで一気に馬を走らせて帰り、母様に報告した。
僕達の報告を聞いた母様は、ちょっと動揺した様子に見えた。
相手が、訪問客のところの騎士らしいという報告に戸惑ったみたいだった。
「……他家の騎士だと争いに発展しそうね。でも、放っておいても火事を起こしそうだわ。」
仕方ないと言った感じで、母様は騎士に現場に向かうように指示を出しに向かった。
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