転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第199話 魔獣置き場を見に行きたい

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団子兎を引き連れてきた「騎士見習い」のキャスパーさんについては、
ゲンティアナ領を出るまでは謹慎で、王都に戻ってから解雇ということだ。
実は、王都からの往復の時の護衛の補充要員として冒険者を「騎士見習い」として雇った人なのだそうだ。

「冒険者上がり」って言ってたけど、冒険者を辞めたと言うわけでもないみたいだ。

王宮騎士団は冒険者を護衛として雇うって形にはしたくないらしくて「騎士見習い」っていう肩書きにしているんだって。レオノールさんがこっそり教えてくれた。
だから、キャスパーさんは、肩書きは「騎士見習い」だけど実態は冒険者らしい。

「賠償金の一部は、問題の『騎士見習い』の護衛料から差し引いて、騎士団からのものと合わせて支払うことになるわ」
「え、賠償金……?」
「迷惑料よ。沼地の件は他の者も絡んでいて、支払額が決まるのが遅くなりそうだから今回の件の分は、すぐに支払うことになったの」
「……お金で有耶無耶にするってわけではないですよね?魔獣を屋敷に持ち込もうとしたこととか」

兄上がジトっとレオノールさんを睨んだ。レオノールさんは少し首を傾けて口元に笑みを浮かべた。

「大丈夫よ。有耶無耶にはしないわ。……ただ、既に指示を受けた騎士が全員戻ってくるまで魔獣が東の林の前に運び込まれることになるわ」
「東の林の前に運んで、その後どうするんですか?」
「適切に処理する予定よ。門の前で揉めるのを避けるために一時的に置き場所にしただけだから」

適切に処理、とは、仕留めちゃうってことかな。

団子兎がいた平原以外でも、魔獣を生捕りにしていたってことなのかな。
騎士が全員戻ってくるまでって、どの位魔獣が集まるんだろう。僕が知らない魔獣もいるかな?
ちょっと見てみたいなぁ。

「魔獣の一時置き場のところ、見に行って良いですか?」

レオノールさんに尋ねてみたら、少し目を見開いた。

「管理状態が心配なのかしら。万一の事を考えて、町や屋敷に魔獣が来ないように騎士を配置しているわよ」
「いえ、どんな魔獣が集まっているのか気になって」
「魔獣よ?近寄ったら危ないかもしれないわよ」
「騎士の人が見張ってるんでしょう?」
「そうねぇ……」

レオノールさんは顎に指を添えて少し考えるような仕草をした後に目線を兄上の方に向けた。

「元々、ゲンティアナ家の領地内だし、騎士団の機密を扱っているわけでもないから
見に行くなと言う権限もないのだけど、檻に近づいたりしたら爪を伸ばして攻撃してくるような魔獣もいるかもしれないし、安全とは言い切れないのよ。
見たいと言うなら止めないけれど、気をつけるのよ。ローレン君、クリス君をしっかり見ていてくれる?」
「もちろんです。弟の事は僕が守ります。ただ、確認したい事があります。
もし、危険だと判断したら、こちらの判断で魔獣を倒しても問題ないですか?」

レオノールさんに尋ねられて、兄上は頷いた後、魔獣を倒しちゃっても良いかなんて確認をした。レオノールさんの細い眉がぴょんと持ち上がった。

「うーん……。どういった状況を想定しているかしら。魔獣が檻から逃げ出したりした時とか?」
「魔獣が逃げた場合に倒すのには許可は求めません。……例えば、魔獣が檻を壊しかけているとか、毒の霧を吐くとか、他の魔獣を呼び寄せるとか放っておいたら、被害が出そうな時です」
「それは問題ないわ。ただ、トラブルを避けるために緊急時以外は、見張りをしている騎士に理由を伝えて欲しいわ。状況がわからない騎士だと止めようとするだろうから」
「わかりました」

兄上とレオノールさんが話はまとまったみたいだけど、話をしている時、なんだか緊迫した空気が流れていた。
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