転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第209話 土壁を消した

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ふと、魔獣置き場は大丈夫なのか気になってきて、土壁の囲いの入り口から、魔獣置き場の様子を覗き見ると、見張りの騎士が増えていた。

一番手前のダークファングコヨーテの檻のところには二人の騎士が張り付いている。
闇魔法連発とかはしていないようで、檻はまだ無事だ。
闇魔法の魔法陣、ちょっと見てみたい気もする。
捕まっている中では一番凶暴そうな魔獣だから逃げ出したら困るけど。

魔獣置き場の檻を見ていなかった間に、カウントダウンが進んでいっちゃったりしていないかも気になるけど
もしも檻の鍵が開いても、騎士さんが待機しているから大丈夫そうだ。

背後で気配が動いた。
振り向くと「トウッ」って感じで父上が土壁から飛び降りたところだった。
降り方と着地が格好いい!真似したいけど、今、土壁に乗ったら「遊ぶな」って
怒られちゃう気がする。

……もう土壁消しちゃって良いかな。
土壁を消す方の魔法陣に魔力を通して、土壁に当てた。

ゴゴゴゴゴゴ……

触れたところから土壁が崩れていく。崩れた破片は細かくなった後、霧散して消えた。

「よーし!成功だ!」
「クリスが土壁を作ったのか」

父上が僕の近くまで来ていた。
僕が頷くと頭をグシャグシャと撫でられた。

「良く頑張ったな。でも、危険なことはするんじゃないぞ。何かあったらすぐに相談しろ」
「はあい」

父上に褒められたのか注意されたのか微妙だけど褒められたってことにしておこう。

「もう、屋敷に戻っていなさい」
「え?」

檻の鍵の事とか、魔獣逃げちゃった事件の事とか何か聞かれるかと思ったら
「帰れ」って言われちゃった。
父上の少し後ろで兄上が頷いている。兄上から報告が済んでいるからもうお役御免ってことか。
いや、特に「お役」もなかったね。

魔獣置き場の魔獣はどうするんだろうとか、檻の鍵の真相とか色々気になるけど
兄上ももう屋敷に戻るつもりみたいなので一緒に戻ることにした。

木に繋いでいた馬をボブが連れて来てくれて馬に乗り、父上に手を振った。
父上は軽く手を上げて応えてくれた後、ゴーシュさんとレオノールさんとで話を始めたようだ。

屋敷に戻る途中、兄上に話しかけた。

「ねえ、あの魔獣置き場の魔獣ってどうなるだろう」
「すぐ始末されるだろうな」
「え?」
兄上がキッパリと言い切ったことにちょっとびっくりしてしまった。

「騎士さん達が苦労して集めて来たみたいなのに?」
「魔獣を生捕りした場所まで戻しに行くとも思えないし、
いつ、檻が開くかわからないだろ。殿下達の訓練に使うのも無理だろうし」
「そうかぁ」

言われてみれた確かにその通りだ。

「ダークファングコヨーテを見たのが初めてだったから、討伐するところをちょっと見てみたかったな」
「……あの狼系魔獣に殿下を襲わせる気だったんじゃないかな……」
「魔法で檻の鍵をカウントダウンさせてってこと?
 でも護衛の人が周りにいるよね。護衛の人がやっつけちゃうと思うけど」
「護衛がしっかり守っていれば……、な」
「護衛だから守るでしょ?」
「あんな檻を用意したのも王宮騎士なんだぞ」
「怪しい人もいるかもってことかぁ……」

ダークファングコヨーテが生息するファンガン峠まで行って狼系魔獣を狩ってこいって命令した人は捕まるのかな。
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