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第1章
第210話 お茶の提案
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「そうだ。戻ったら殿下達をお茶にでも誘おうか」
「え?急に?」
ダークファングコヨーテの事を考えていたら、兄上から急にお茶会を提案された。
驚いて兄上の方を見ると兄上は、前を向いて馬を進めながら少し難しそうな顔をした。
「あんな事件があったんだ。父上がもう出てけって言うかもしれない。
そうなったら明日の朝イチで出発とかもあり得るだろう?挨拶する間もないかもしれないからな」
「父上は『出てけ』って言えちゃうの?」
王族と高位貴族には文句言えないのかと思っていた。
兄上は騎士さん達へは文句言ってたけどね……。
「流石に、敷地内に魔獣をばら撒くところだったからな。言えるんじゃないかな。
文句言えなかったとしても、敷地内に篭っていても狙われるんだったら
安全とは言えないから移動した方が良いとか進言はするんじゃないかと思う」
兄上が父上に報告した時、父上はかなり怒っていたように見えたそうだ。
兄上は「ふぅ」と深く息を吐いた。
「まあ、どっちみちもう外での訓練は出来てないし、近日中には帰るって話だっただろう?出発ってなったら慌ただしくなるだろうからね」
「……僕、お茶会のお作法とか良くわからないよ?」
段々になったところにお菓子が飾られていて、ドレスを着た令嬢が
扇子を口元に当てて、「オーホッホッホ」とか言うんじゃないか?
前にメイリに「令嬢のお茶会」をテーマにした絵をリクエストされたけど、その時の絵みたいな感じじゃないかと思う。
「イベント的なやつじゃないよ。単に紅茶とか飲んでちょっと話をするだけ。
……ジャックにお菓子を用意してもらってさ」
「ジャックのお菓子!良いね!……でも、もう夕食の仕度中じゃない?」
「ジャックに確認しよう。まあ、お菓子メインじゃないし。
殿下達もお誘いしてみないとわからないんだけどね」
もう空が赤く染まって来ている。これからお誘いしてお茶をするとしても夕食後かな。
ちょっと時間があるから何か作ろうかな……。
さっきちょっと思いついたものがあるんだよね。
あの蛇魔獣が放っていた風魔法。螺旋を描くみたいに風を吹き出してた。
風刃みたいに鋭く切り裂くような威力があるものじゃなくて、
強い風を吹き付けて吹き飛ばすって感じだった。
殿下のちょっとした護身用にどうかなって思ったんだ。
風刃だと、相手を切り裂いちゃうから取り扱いを間違うと、関係ない人を怪我させて
しまうかもしれない。風で吹き飛ばすだけだったら、そこまで殺傷能力が高くない。
例えば檻に向かって魔法を撃ちつけている時に、急に檻の鍵が開いて
ダークファングコヨーテが襲いかかって来たとしたら
護衛が間に合わないかもしれないタイミングだけ、風を起こすとかどうだろう。
あの螺旋の風魔法、名前あるのかな。「螺旋の風」で良いかな。
「……クリス?何か考えてる?」
兄上が僕の顔を覗き込むようにして声をかけてきた。
「うん。『螺旋の風』はどうかなって思って」
「は?」
急に魔法名を言っても通じるわけはなかったので、殿下の護身用の魔法陣魔石を作ろうかと思っていると言う話をした。
兄上はちょっと眉を顰めた。
「……クリスが作ったって言うなよ?あと、やりすぎるなよ?
出来上がったらまず俺と母上に見せるんだぞ」
「ええ……、わかったよぉ」
もう王都に帰っちゃうなら、何か贈り物をと思ったのにダメ出しをされてしまった。
手軽で、誰が作ったか分からないけど、どこにでもありそう。でも便利、って感じの
ものが良いんじゃないかと思っているんだけどなぁ。
ハロルド君やシェリル嬢、リネリア嬢にも作る予定だ。
お揃いのアクセサリーみたいなのどうかな。
「え?急に?」
ダークファングコヨーテの事を考えていたら、兄上から急にお茶会を提案された。
驚いて兄上の方を見ると兄上は、前を向いて馬を進めながら少し難しそうな顔をした。
「あんな事件があったんだ。父上がもう出てけって言うかもしれない。
そうなったら明日の朝イチで出発とかもあり得るだろう?挨拶する間もないかもしれないからな」
「父上は『出てけ』って言えちゃうの?」
王族と高位貴族には文句言えないのかと思っていた。
兄上は騎士さん達へは文句言ってたけどね……。
「流石に、敷地内に魔獣をばら撒くところだったからな。言えるんじゃないかな。
文句言えなかったとしても、敷地内に篭っていても狙われるんだったら
安全とは言えないから移動した方が良いとか進言はするんじゃないかと思う」
兄上が父上に報告した時、父上はかなり怒っていたように見えたそうだ。
兄上は「ふぅ」と深く息を吐いた。
「まあ、どっちみちもう外での訓練は出来てないし、近日中には帰るって話だっただろう?出発ってなったら慌ただしくなるだろうからね」
「……僕、お茶会のお作法とか良くわからないよ?」
段々になったところにお菓子が飾られていて、ドレスを着た令嬢が
扇子を口元に当てて、「オーホッホッホ」とか言うんじゃないか?
前にメイリに「令嬢のお茶会」をテーマにした絵をリクエストされたけど、その時の絵みたいな感じじゃないかと思う。
「イベント的なやつじゃないよ。単に紅茶とか飲んでちょっと話をするだけ。
……ジャックにお菓子を用意してもらってさ」
「ジャックのお菓子!良いね!……でも、もう夕食の仕度中じゃない?」
「ジャックに確認しよう。まあ、お菓子メインじゃないし。
殿下達もお誘いしてみないとわからないんだけどね」
もう空が赤く染まって来ている。これからお誘いしてお茶をするとしても夕食後かな。
ちょっと時間があるから何か作ろうかな……。
さっきちょっと思いついたものがあるんだよね。
あの蛇魔獣が放っていた風魔法。螺旋を描くみたいに風を吹き出してた。
風刃みたいに鋭く切り裂くような威力があるものじゃなくて、
強い風を吹き付けて吹き飛ばすって感じだった。
殿下のちょっとした護身用にどうかなって思ったんだ。
風刃だと、相手を切り裂いちゃうから取り扱いを間違うと、関係ない人を怪我させて
しまうかもしれない。風で吹き飛ばすだけだったら、そこまで殺傷能力が高くない。
例えば檻に向かって魔法を撃ちつけている時に、急に檻の鍵が開いて
ダークファングコヨーテが襲いかかって来たとしたら
護衛が間に合わないかもしれないタイミングだけ、風を起こすとかどうだろう。
あの螺旋の風魔法、名前あるのかな。「螺旋の風」で良いかな。
「……クリス?何か考えてる?」
兄上が僕の顔を覗き込むようにして声をかけてきた。
「うん。『螺旋の風』はどうかなって思って」
「は?」
急に魔法名を言っても通じるわけはなかったので、殿下の護身用の魔法陣魔石を作ろうかと思っていると言う話をした。
兄上はちょっと眉を顰めた。
「……クリスが作ったって言うなよ?あと、やりすぎるなよ?
出来上がったらまず俺と母上に見せるんだぞ」
「ええ……、わかったよぉ」
もう王都に帰っちゃうなら、何か贈り物をと思ったのにダメ出しをされてしまった。
手軽で、誰が作ったか分からないけど、どこにでもありそう。でも便利、って感じの
ものが良いんじゃないかと思っているんだけどなぁ。
ハロルド君やシェリル嬢、リネリア嬢にも作る予定だ。
お揃いのアクセサリーみたいなのどうかな。
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