転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第231話 披露会スタート

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ゾロゾロゾロゾロ。気のせいというか自意識過剰ってやつなんだと思うんだけど、
僕が行列の先頭になっている。的の前に向かっていくと皆がついてくるんだ。
正確には殿下の移動に合わせているだけなんだってわかっているけどね。
ちょっと、面白い。

訓練場は結構広いんだけど、警備についている騎士さん以外は的場に集まっているので、もの凄く沢山の人が集結しているみたいに
見える。緊張するなぁ。

「えーと……、昨日、少しお話ししましたが、まずブローチの基本的な使い方からご説明をしますね」

目の前にいる殿下達に、ブローチを片手で押さえながら、もう一方の手でブローチの魔石に触れて魔力を流すという方法を説明する。
使う前に金具を押し込まないと魔法が発動しないということと、魔法が向かわせたい報告にブローチの表面を向けるのだということとか
実際には魔力を流さないように気をつけながら説明をした。

僕の声は殿下達に聞こえれば良いはずなんだけど、全員に聞こえた方が良いのかな。
風魔法で声を拡散しようかなってちょっと考えたけど、警戒して警備している人もいるから余計な魔法は使わないでおこう。

殿下達はちゃんと僕の説明を聞いてくれているようで、胸につけたブローチの魔石に指を触れる動作を真似してくれている。

「誤動作するといけないから、真ん中の金具を押し込むのは魔法を発動させる直前にしてください。
魔石の魔法については、昨日も説明があった通り、緑が風魔法、オレンジが土魔法、赤が火魔法、水色が水魔法ですがどれもちょっとした程度の魔法です。これで魔獣を倒せるというようなものではないです」

効果とかの説明内容は昨日兄上が説明したのと同じだ。知られない方が良いこともあるから、思いつきで付け加えないようにって言われている。

魔法陣魔石を作ったってことも秘密なんだって。どこかの誰かが作って、どこかの行商人が売りに来たのを買ったってことになっている。
だから、魔道具の使い方以上のことは知らないし、もっと欲しいって言われても「無い」って答えるんだ。

的に向き直りブローチに手をそえる。

「それでは実際に使ってみます。まずは風魔法です。螺旋状の風が吹きます。近くにいるとかなり強めの風を感じると思います。

カチッと真ん中の金具を押し込んで、緑の石に触れた。

ブワッと風が発生して、的と立ち位置の中間位置くらいに突き刺してあった板を吹き飛ばした。後方の的が少し揺れる。

周囲がちょっとざわついた気がした。キョロキョロと周囲の様子を伺うと、殿下達は風で吹き飛ばされた板や的の方をみていた。

「吹き飛ばされた板が立っていた辺りに一番強い風が当たります。
もしも、魔獣が向かってきて詠唱が間に合わなそうな時とかに、ちょっと弾き飛ばして時間稼ぎ、というような使い方ができます」

フッ

一瞬、誰か笑ったような気がした。何か可笑しいことあったっけ。
まだまだ説明が残っているから続けよう。

「次は、オレンジの魔石です。これは、小さい土の山がボコっと出ます。気を付ける点は、土の山を作る場所にブローチの正面を向ける必要があるということです」

先程、風魔法で吹き飛ばした板を置いていた場所の地面にブローチを向けて魔力を流した。

ボコっと土が膝丈より少し低いくらいの高さで盛り上がった。

フッ

また誰か笑った?土魔法の結果を見て笑ったのかな。
土魔法で小さい山ができるのって、結構地味だからなぁ。

その後、火魔法の説明をした時も「フッ」っていうのがあった。
でも、水魔法の説明をしたときは、なかった。来るぞ来るぞ!って思ったのに外れちゃった。
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