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第1章
第232話 実践タイム
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一通り使い方の説明をした後、殿下達に実際に使ってみてもらう。
殿下達がブローチの装着をしていると、先程まで腕組みして見物していた辺境伯様がザッと一歩踏み出した。
「私も試したいのだが」
「え?」
びっくりして、恐る恐る辺境伯様を見上げた。
青い瞳が射るように鋭く僕を見る。
圧が凄い。「害意」とかは感じないけど冷気みたいな圧がある。
「閣下」
黒と赤の色彩が、視界を遮った。父上が僕の前に立った。黒と赤は父上のマントだ。
黒いマントで裏地が赤いんだよ。格好良いよね。
「息子に何か?」
ゴォォっと今にも燃え上がりそうな気配だ。
「あの魔道具の治癒の機能を試したいのだ。我が娘が身につけるのなら、
どの程度の治癒効果があるのか確認をしたい」
「ご自分で使ってみたい、と?効果は他の者が使用するのを見れば確認可能では」
「使用感はわからないであろう。一つ買い取ろう」
「数に限りがあります。先程説明があったと思いますが?」
父上の後ろで、父上と辺境伯様の話す内容を聞いていたら、ぐいっと腕を引っ張られた。
「クリス、あっちのことは父上に任せよう。殿下達が待っているよ」
殿下達はもう的の前にスタンバイしていた。
シェリル嬢はチラチラと辺境伯様と父上の様子を見ている。
「お父様はどうしたのかしら」
「ブローチの機能に興味をお持ちのようだね。わざわざ見物にこられたようだし」
ちょっと戸惑った様子で、シェリル嬢とハロルド君がヒソヒソと話をしている。
ネイサン殿下はあまり気にした様子もなく的に向かって立った。
「さあ、試すよ!もう撃ってしまって良い?」
ニコニコ笑顔で言うネイサン殿下にゴーシュさんが進み出た。
「殿下、まずは私が試しに撃ちましょう」
「ええ?今、クリス君が撃ったじゃないか」
「殿下が手にされている魔道具に対しても確認致しませんと」
「ええーっ……」
ネイサン殿下は不満そうにむぅっと唇を尖らせたけど、粘ることはせずに手にしていたブローチをゴーシュさんに差し出した。
「では……」
ゴーシュさんは大きな手でちょっとやりにくそうにブローチを手にして、魔石から魔法を撃った。
四種類の魔法を一通り発して、納得したように頷いて、ネイサン殿下にブローチを返した。
「問題ないようです」
「うん」
ネイサン殿下はブローチを受け取ると的に向かって立地、ブローチの正面を的に向けた。
僕はちょっとドキドキした。魔石の残魔力が心配だ。魔石が小さいから魔石一つにつき魔法を発動できる回数は一回か二回。
あと一回分ちゃんと残っているかが微妙だ。
先に魔力を補充すれば大丈夫だと思うんだけど。
「あ、あの……」
声をかけたら、ギンッと周囲の視線が僕に集中してしまった。
右手の指で魔石に触れる直前だったネイサン殿下が手を止めて、僕の方を振り向いた。
「どうしたの?」
「一度魔法を発動しているから魔石の残魔力が残り少ないかもしれません。魔力を補充した方が良いと思います」
「魔力の補充ってどうやるの?」
「少し時間がかかるかもしれないですけど……」
「時間がかかるのは嫌だなぁ。残魔力が少ないとどうなるの?」
「……えーと……。発動できる魔力が不足していたら、何も起きないですけど。発動する分の魔力はあって、残魔力が少ないときは
魔法の規模が小さくなると思います……」
「じゃあ、やるだけやってみるよ!」
ニコッと爽やかな笑顔を見せるネイサン殿下。
魔力の補充をする場合、一回分に足りない程度の補充で良いから、数分もあれば補充できると思うんだけどネイサン殿下はすぐに魔道具を使ってみたいようだ。それなら、使ってみてもらった方が良いよね。
「魔力不足で使った時に危険は……「それ!!」」
ゴーシュさんが何か言いかけたタイミングで、ネイサン殿下は魔石に魔力を通したようだ。
ブワッと螺旋状の風が起きた。
先程ゴーシュさんが使った時より、少しだけ規模が小さい気がする。でも問題なく的の手前に配置した板を吹き飛ばした。
「おお!発動したぞ!」
ネイサン殿下が嬉しそうな声を上げた。喜んでくれたみたいで良かったぁ。
殿下達がブローチの装着をしていると、先程まで腕組みして見物していた辺境伯様がザッと一歩踏み出した。
「私も試したいのだが」
「え?」
びっくりして、恐る恐る辺境伯様を見上げた。
青い瞳が射るように鋭く僕を見る。
圧が凄い。「害意」とかは感じないけど冷気みたいな圧がある。
「閣下」
黒と赤の色彩が、視界を遮った。父上が僕の前に立った。黒と赤は父上のマントだ。
黒いマントで裏地が赤いんだよ。格好良いよね。
「息子に何か?」
ゴォォっと今にも燃え上がりそうな気配だ。
「あの魔道具の治癒の機能を試したいのだ。我が娘が身につけるのなら、
どの程度の治癒効果があるのか確認をしたい」
「ご自分で使ってみたい、と?効果は他の者が使用するのを見れば確認可能では」
「使用感はわからないであろう。一つ買い取ろう」
「数に限りがあります。先程説明があったと思いますが?」
父上の後ろで、父上と辺境伯様の話す内容を聞いていたら、ぐいっと腕を引っ張られた。
「クリス、あっちのことは父上に任せよう。殿下達が待っているよ」
殿下達はもう的の前にスタンバイしていた。
シェリル嬢はチラチラと辺境伯様と父上の様子を見ている。
「お父様はどうしたのかしら」
「ブローチの機能に興味をお持ちのようだね。わざわざ見物にこられたようだし」
ちょっと戸惑った様子で、シェリル嬢とハロルド君がヒソヒソと話をしている。
ネイサン殿下はあまり気にした様子もなく的に向かって立った。
「さあ、試すよ!もう撃ってしまって良い?」
ニコニコ笑顔で言うネイサン殿下にゴーシュさんが進み出た。
「殿下、まずは私が試しに撃ちましょう」
「ええ?今、クリス君が撃ったじゃないか」
「殿下が手にされている魔道具に対しても確認致しませんと」
「ええーっ……」
ネイサン殿下は不満そうにむぅっと唇を尖らせたけど、粘ることはせずに手にしていたブローチをゴーシュさんに差し出した。
「では……」
ゴーシュさんは大きな手でちょっとやりにくそうにブローチを手にして、魔石から魔法を撃った。
四種類の魔法を一通り発して、納得したように頷いて、ネイサン殿下にブローチを返した。
「問題ないようです」
「うん」
ネイサン殿下はブローチを受け取ると的に向かって立地、ブローチの正面を的に向けた。
僕はちょっとドキドキした。魔石の残魔力が心配だ。魔石が小さいから魔石一つにつき魔法を発動できる回数は一回か二回。
あと一回分ちゃんと残っているかが微妙だ。
先に魔力を補充すれば大丈夫だと思うんだけど。
「あ、あの……」
声をかけたら、ギンッと周囲の視線が僕に集中してしまった。
右手の指で魔石に触れる直前だったネイサン殿下が手を止めて、僕の方を振り向いた。
「どうしたの?」
「一度魔法を発動しているから魔石の残魔力が残り少ないかもしれません。魔力を補充した方が良いと思います」
「魔力の補充ってどうやるの?」
「少し時間がかかるかもしれないですけど……」
「時間がかかるのは嫌だなぁ。残魔力が少ないとどうなるの?」
「……えーと……。発動できる魔力が不足していたら、何も起きないですけど。発動する分の魔力はあって、残魔力が少ないときは
魔法の規模が小さくなると思います……」
「じゃあ、やるだけやってみるよ!」
ニコッと爽やかな笑顔を見せるネイサン殿下。
魔力の補充をする場合、一回分に足りない程度の補充で良いから、数分もあれば補充できると思うんだけどネイサン殿下はすぐに魔道具を使ってみたいようだ。それなら、使ってみてもらった方が良いよね。
「魔力不足で使った時に危険は……「それ!!」」
ゴーシュさんが何か言いかけたタイミングで、ネイサン殿下は魔石に魔力を通したようだ。
ブワッと螺旋状の風が起きた。
先程ゴーシュさんが使った時より、少しだけ規模が小さい気がする。でも問題なく的の手前に配置した板を吹き飛ばした。
「おお!発動したぞ!」
ネイサン殿下が嬉しそうな声を上げた。喜んでくれたみたいで良かったぁ。
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