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第1章
第233話 治癒のブローチ
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「初めて風魔法を発動させたぞ!それも無詠唱だ!ハロルドの魔法より凄いんじゃないか?」
「いや、僕だって負けませんよ」
ネイサン殿下がハロルド君に向かってドヤ顔をしたら
ハロルド君が、片方の眉を上げて目を細めた。
そしてズンズンと的の前に立って、ブローチに手を触れた。一瞬動きを止め、指を引っ込めてから別の魔石に触れる。
ボッ!
火魔法が発動して、火の玉がポーンと飛んでいった。
「ほら、火魔法ですよ!」
「ああ!ずるいぞ!その魔石はまだ試してないのに!」
ネイサン殿下は、急いで的の方を向くと、火魔法、土魔法、治癒魔法を連続で発動させた。
「どうだ!」
「お見事です!でも、僕だって!」
ハロルド君はそう言って、治癒魔法、土魔法、風魔法を発動させた。ネイサン殿下の時と違う順番で魔法を発動させているのはわざとかな。
「おお!」
風魔法を発動させた途端、ハロルド君は感嘆の声を上げた。
「自分で発動させて見てわかった。グルグル渦巻きみたいな風なんだな!」
「僕は自分で発動させてもわからなかったよ」
ハロルド君は風魔法が「螺旋の風」だと言うことに気がついたみたいだ。グルグル、格好いいよね!
ハロルド君とネイサン殿下が楽しそうに話していると
後ろの方でシェリル嬢の不満気な声が聞こえてきた。
「ええ!? ブローチを?嫌よ!私だってまだ使ってないのに!」
振り返ると、シェリル嬢は、辺境伯様と水色の髪の騎士と話をしていた。
「全部じゃない、治癒だけダリルに使わせてみろと言っておるのだ」
「そうです。シェリルお嬢様。他の魔石を使用していただいた後で結構ですから」
サラサラした水色の髪の騎士は、優し気な微笑みをシェリル嬢に向けているけれど、シェリル嬢は不機嫌そうに二人を睨んでいる。
「シェリル……」
「あ!ごめんなさい!先にリネリアが試していてね!」
ハロルド君が心配そうに声をかけたら、シェリル嬢はパッと振り返って、笑顔を見せた。
リネリア嬢はブローチを両手で握りしめて、戸惑っている様子だ。
進めちゃっていて良いのかな。
ブローチはもうシェリル嬢に贈ったものなので、誰が使うかはシェリル嬢が決めれば良いと思う。
別に使用者の制限はしていないんだし。
あ、決まった人しか使用できない魔道具っていうのも面白いな。
そういえば、「お話」の魔道具は使う人は決まっている前提だから、決まった人しか使えないような機能があった方が良い気がしてきた。
魔力で識別するようにすれば良いかな。後で考えよう。
リネリア嬢はチラチラとシェリル嬢の様子を気にしながらこちらに歩いてきた。
シェリル嬢の方は、ハロルド君とネイサン殿下も話し合いに参加し始めたようだ。
「あ、あの……」
「どうぞ。的に向かって立ってください」
風魔法の確認用に近い位置に板を配置し終わったのを見て、リネリア嬢を案内する。
尚、的の中間位置に板を設置する係は最初兄上がやってくれてたんだけど、途中からゲンティアナの騎士が担当してくれていた。
土魔法が得意な人らしくて、砂地みたいにサクッと板を立てて、ピクリともしないように固定してくれるんだ。
「どれから使ったら良いかしら」
「順番は決まっていませんよ。気になる魔法からで良いと思います」
「一番気になるのは……、水魔石の、なんですけど……」
リネリア嬢は少し抑えめの声で言って、チラリとシェリル嬢と辺境伯様達が話している方に目線を動かした。
「ああー、使いたかったやつ!って思われちゃうかもしれないですね」
「ええ……」
リネリア嬢は「ふぅ」と息を吐いてブローチに目を落として、水魔法が埋め込まれている葉の縁を指で一撫でした。
「いや、僕だって負けませんよ」
ネイサン殿下がハロルド君に向かってドヤ顔をしたら
ハロルド君が、片方の眉を上げて目を細めた。
そしてズンズンと的の前に立って、ブローチに手を触れた。一瞬動きを止め、指を引っ込めてから別の魔石に触れる。
ボッ!
火魔法が発動して、火の玉がポーンと飛んでいった。
「ほら、火魔法ですよ!」
「ああ!ずるいぞ!その魔石はまだ試してないのに!」
ネイサン殿下は、急いで的の方を向くと、火魔法、土魔法、治癒魔法を連続で発動させた。
「どうだ!」
「お見事です!でも、僕だって!」
ハロルド君はそう言って、治癒魔法、土魔法、風魔法を発動させた。ネイサン殿下の時と違う順番で魔法を発動させているのはわざとかな。
「おお!」
風魔法を発動させた途端、ハロルド君は感嘆の声を上げた。
「自分で発動させて見てわかった。グルグル渦巻きみたいな風なんだな!」
「僕は自分で発動させてもわからなかったよ」
ハロルド君は風魔法が「螺旋の風」だと言うことに気がついたみたいだ。グルグル、格好いいよね!
ハロルド君とネイサン殿下が楽しそうに話していると
後ろの方でシェリル嬢の不満気な声が聞こえてきた。
「ええ!? ブローチを?嫌よ!私だってまだ使ってないのに!」
振り返ると、シェリル嬢は、辺境伯様と水色の髪の騎士と話をしていた。
「全部じゃない、治癒だけダリルに使わせてみろと言っておるのだ」
「そうです。シェリルお嬢様。他の魔石を使用していただいた後で結構ですから」
サラサラした水色の髪の騎士は、優し気な微笑みをシェリル嬢に向けているけれど、シェリル嬢は不機嫌そうに二人を睨んでいる。
「シェリル……」
「あ!ごめんなさい!先にリネリアが試していてね!」
ハロルド君が心配そうに声をかけたら、シェリル嬢はパッと振り返って、笑顔を見せた。
リネリア嬢はブローチを両手で握りしめて、戸惑っている様子だ。
進めちゃっていて良いのかな。
ブローチはもうシェリル嬢に贈ったものなので、誰が使うかはシェリル嬢が決めれば良いと思う。
別に使用者の制限はしていないんだし。
あ、決まった人しか使用できない魔道具っていうのも面白いな。
そういえば、「お話」の魔道具は使う人は決まっている前提だから、決まった人しか使えないような機能があった方が良い気がしてきた。
魔力で識別するようにすれば良いかな。後で考えよう。
リネリア嬢はチラチラとシェリル嬢の様子を気にしながらこちらに歩いてきた。
シェリル嬢の方は、ハロルド君とネイサン殿下も話し合いに参加し始めたようだ。
「あ、あの……」
「どうぞ。的に向かって立ってください」
風魔法の確認用に近い位置に板を配置し終わったのを見て、リネリア嬢を案内する。
尚、的の中間位置に板を設置する係は最初兄上がやってくれてたんだけど、途中からゲンティアナの騎士が担当してくれていた。
土魔法が得意な人らしくて、砂地みたいにサクッと板を立てて、ピクリともしないように固定してくれるんだ。
「どれから使ったら良いかしら」
「順番は決まっていませんよ。気になる魔法からで良いと思います」
「一番気になるのは……、水魔石の、なんですけど……」
リネリア嬢は少し抑えめの声で言って、チラリとシェリル嬢と辺境伯様達が話している方に目線を動かした。
「ああー、使いたかったやつ!って思われちゃうかもしれないですね」
「ええ……」
リネリア嬢は「ふぅ」と息を吐いてブローチに目を落として、水魔法が埋め込まれている葉の縁を指で一撫でした。
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