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第1章
第244話 リネリア嬢との挨拶
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おずおずと俯き加減でリネリア嬢が近づいてきた。
「あ、あの。本当にありがとうございます。訓練の時に色々サポートしてくれたし、素敵な魔道具も……」
上目遣いに言いながらリネリア嬢は胸につけていたブローチに手を添えた。兄上が微笑んでお辞儀をする。
「お役に立てたなら何よりでした。道中、気をつけてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
ニコニコと微笑みあっている兄上とリネリア嬢を眺めながら、僕は脳裏で見たリネリア嬢のお母上が事故に遭ってしまった出来事を思い出していた。
一度、お母上だけで出かけさせないでって伝えたけど、覚えていてくれているかな。
「……リネリア嬢、気をつけてください」
「はい。クリス君もお世話になったわね。ありがとう」
「あの……」
変に思われちゃうかなと思ったけど、気になるのでもう一度伝えておくことにした。
「馬車での移動、気をつけてください。ご家族も……、あの……」
「え?もしかして……」
リネリア嬢の顔がさっと青ざめた。僕、まだ何も言ってないのに。
伸ばして揃えた細い指で口元を隠し、小声になる。
「私……、世間的に見たらネイサン殿下の親しい友人と思われて狙われてしまっていたりするのかしら。
父も一緒に滞在していたし……。オーキッド伯爵家がネイサン殿下の後ろ盾と思われて、私も父も……。母や兄は大丈夫かしら」
「……えーと……。分からないですけど……」
オーキッド伯爵家の人達が何者かに狙われているなんて話は、脳裏の光景にも出てきていないので何とも言えない。
「父は、いつも大丈夫だって言うけれど、毒事件の魔獣の檻の件も結果的に大丈夫だっただけだと思いますわ。本当に用心しなければ……。父だけじゃなく、母や兄にも気をつけるよう伝えますわ!」
リネリア嬢が真剣な表情で話す。
脳裏の光景では見ていないけど、リネリア嬢は、他にも怖い目に遭ったことがあるのかな。学園は王都にあるらしいし、王都は怖いところらしいからなぁ。
「そうですね!用心するに越したことはないです!」
「ええ!」
リネリア嬢は、何か決意したように瞳をキラキラと輝かせた。
ご家族も皆、無事に過ごせると良いなぁ。
ご挨拶を終えた後、訓練場の外に出ると、正門の近くに馬車が整列し始めていた。
本当にもう出発らしい。
情報漏洩防止の為に急に通達したらしくて、まだ馬車に荷物を積んだり慌ただしい様子だった。
殿下達は少し時間に猶予があるなら朝食を軽く食べてから出発するらしい。元々近日中に出発ということになっていたから荷造りは、だいたい済んでいたのだそうだ。
「あ!レオノールさーん!」
正門に集まってきた騎士の中にレオノールさんの姿を見つけた。
呼びかけて手を振ったら気が付いてくれたので駆け寄る。
「出発ですね。道中気をつけてくださいね」
「ありがとう。クリス君もローレン君も、元気でね」
レオノールさんは僕を見た手から後ろから僕を追いかけてきたらしい兄上にも微笑み掛けた。
「お世話になりました」
「こちらこそ。色々と希少なものを提供いただいて……。あの水瓶の魔道具ご紹介もありがとう。早速手配したわ」
毒耐性の水瓶は無事、薬師のおばあちゃんのところで買ってもらったようだ。出発ギリギリだったけど、間に合って良かった。
「あ、あの。本当にありがとうございます。訓練の時に色々サポートしてくれたし、素敵な魔道具も……」
上目遣いに言いながらリネリア嬢は胸につけていたブローチに手を添えた。兄上が微笑んでお辞儀をする。
「お役に立てたなら何よりでした。道中、気をつけてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
ニコニコと微笑みあっている兄上とリネリア嬢を眺めながら、僕は脳裏で見たリネリア嬢のお母上が事故に遭ってしまった出来事を思い出していた。
一度、お母上だけで出かけさせないでって伝えたけど、覚えていてくれているかな。
「……リネリア嬢、気をつけてください」
「はい。クリス君もお世話になったわね。ありがとう」
「あの……」
変に思われちゃうかなと思ったけど、気になるのでもう一度伝えておくことにした。
「馬車での移動、気をつけてください。ご家族も……、あの……」
「え?もしかして……」
リネリア嬢の顔がさっと青ざめた。僕、まだ何も言ってないのに。
伸ばして揃えた細い指で口元を隠し、小声になる。
「私……、世間的に見たらネイサン殿下の親しい友人と思われて狙われてしまっていたりするのかしら。
父も一緒に滞在していたし……。オーキッド伯爵家がネイサン殿下の後ろ盾と思われて、私も父も……。母や兄は大丈夫かしら」
「……えーと……。分からないですけど……」
オーキッド伯爵家の人達が何者かに狙われているなんて話は、脳裏の光景にも出てきていないので何とも言えない。
「父は、いつも大丈夫だって言うけれど、毒事件の魔獣の檻の件も結果的に大丈夫だっただけだと思いますわ。本当に用心しなければ……。父だけじゃなく、母や兄にも気をつけるよう伝えますわ!」
リネリア嬢が真剣な表情で話す。
脳裏の光景では見ていないけど、リネリア嬢は、他にも怖い目に遭ったことがあるのかな。学園は王都にあるらしいし、王都は怖いところらしいからなぁ。
「そうですね!用心するに越したことはないです!」
「ええ!」
リネリア嬢は、何か決意したように瞳をキラキラと輝かせた。
ご家族も皆、無事に過ごせると良いなぁ。
ご挨拶を終えた後、訓練場の外に出ると、正門の近くに馬車が整列し始めていた。
本当にもう出発らしい。
情報漏洩防止の為に急に通達したらしくて、まだ馬車に荷物を積んだり慌ただしい様子だった。
殿下達は少し時間に猶予があるなら朝食を軽く食べてから出発するらしい。元々近日中に出発ということになっていたから荷造りは、だいたい済んでいたのだそうだ。
「あ!レオノールさーん!」
正門に集まってきた騎士の中にレオノールさんの姿を見つけた。
呼びかけて手を振ったら気が付いてくれたので駆け寄る。
「出発ですね。道中気をつけてくださいね」
「ありがとう。クリス君もローレン君も、元気でね」
レオノールさんは僕を見た手から後ろから僕を追いかけてきたらしい兄上にも微笑み掛けた。
「お世話になりました」
「こちらこそ。色々と希少なものを提供いただいて……。あの水瓶の魔道具ご紹介もありがとう。早速手配したわ」
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