243 / 334
第1章
第243話 挨拶で安全の念押し
しおりを挟む
「クリス君にもお世話になったね。ブローチの解説、立派だったよ」
「どういたしまして……。あの……」
「うん?」
ネイサン殿下と握手をしながら、僕は脳裏で見た光景を思い出していた。街中でネイサン殿下が刺されそうになってレオノールさんが殿下を庇って刺される光景だ。
「……あのブローチの機能は、護衛の人が側にいる前提のものですから、途中の街とかお気をつけください。お一人歩きは危ないです。本当に色々危険が多いですから」
「うん。そうだね……。街歩きは憧れるけど、護衛と一緒に行動するようにするよ。ありがとう」
殿下は独り歩きをしないと言ってくれた。これで大丈夫そうかな。
「本当ですよ?いざとなったら、砂でも何でも使って身を守ってくださいね」
まだちょっと心配で念を押してしまう。殿下はパッと顔を明るくした。
「あの砂ね!是非真似したいよ!隠し持っていたの?」
「これです。宜しければ……」
僕が兄上に手渡した砂入りの皮袋がネイサン殿下に渡された。
「あ、じゃあ、これもよかったらどうぞ……」
僕は、赤い粉が入った小さい皮袋を差し出した。大戦の時にいざとなった時に兄上にすぐ渡せるように用意しておいたんだ。
「それは……?」
僕が差し出した皮袋を見て、ネイサン殿下が首を傾げた。
「赤い粉で「それはダメだって!」」
僕が答えようとしたら被せるように兄上が焦った声で言う。
不思議そうな顔をする殿下に、兄上が赤い粉はとても刺激が強くて、ダメージが大きいから無闇に使うべきではないものだと説明をした。
「今日のような模擬戦などで使うべきではないものです」
「では、魔獣相手なら使っても良いものかな?」
「魔獣にもよります。刺激で暴れて返って危険になる場合もあると思います」
「なるほど」
ネイサン殿下は、ヒョイと僕の手から赤い粉が入った皮袋をつまみ上げた。
「受け取っておくよ。使う場面がないと良いんだけど。道中、魔獣が多い場所も通るし」
「味方にかけないようにお取り扱いに気をつけてくださいね」
ネイサン殿下が受け取ってくれたので、赤い粉の皮袋はそのまま投げれば良いとか取り扱いの説明をしておいた。
その間、兄上は眉間に皺を寄せてたんだけど、万一目に入った時の注意とか、説明はちゃんとしておいた方が良いよね?
ハロルド君とは魔力水の話をした。
妹さんの病気の対策として魔力水を送ったけど、効果があったようだと返事が来たそうだ。
返事が届くのが早い。
「僕がゲンティアナに滞在している間に、追加注文をしておけって父から商業ギルド経由で連絡が来たんだ。早速、教えてもらった薬師に注文をしたよ」
商業ギルドを経由すると連絡が凄く早くできるらしい。何か魔道具を使っているのかな。
「お話」の魔道具をもっともっと強力にしたみたいなやつだろうか。
そういうの作れると良いなぁ。音を遠くまでそのまま運ぶのは難しいかなぁ。
後で研究しようっと。
それにしても、ハロルド君の妹さんの病状が改善しそうで良かった!
シェリル嬢は、ハロルド君と婚約できるように頑張るのだそうだ。
「背中を押してくれてありがとう。次に会った時には良い報告ができるようにするわ」
晴れやかな笑顔を浮かべ、途中でチラリとハロルド君と目線を交わしていた。仲良さそう!
「それより、父やナスタチウム家の騎士がごめんなさいね。
治癒の魔石に何だか拘っていて……。もしかしたら今日出発だったからフランクリンだとか負傷している騎士の回復を間に合わせたかったのかもしれないわ。」
「フッ」の騎士は、ゲンティアナに到着するまでの道中で遭遇した魔獣との戦いの時に負傷したのだそうだ。
ゲンティアナに到着するまでかなり無理をしたらしくて、怪我が悪化してなかなか治らなかったらしい。
足を引きずってたから、訓練場に来ていたのも治療してもらう目的だったのかな。
それなら治癒玉を使うとかすれば良いのに、と思ったけど治癒玉は希少だって聞いたし用意できなかったのかな。
辺境伯様は、最初、シェリル嬢が使うのではなくて、自分で治癒魔石を使いたいって言っていたみたいだから、単純に、あの「フッ」の騎士の怪我を治したかったってだけじゃないんじゃないのかもしれない。
リネリア嬢が言っていたみたいに、何か治癒魔法が気になっていたのかもしれないし、便利そうなものならもっと寄越せって言いたくて、効果を確認したかったのかもしれないな。
「どういたしまして……。あの……」
「うん?」
ネイサン殿下と握手をしながら、僕は脳裏で見た光景を思い出していた。街中でネイサン殿下が刺されそうになってレオノールさんが殿下を庇って刺される光景だ。
「……あのブローチの機能は、護衛の人が側にいる前提のものですから、途中の街とかお気をつけください。お一人歩きは危ないです。本当に色々危険が多いですから」
「うん。そうだね……。街歩きは憧れるけど、護衛と一緒に行動するようにするよ。ありがとう」
殿下は独り歩きをしないと言ってくれた。これで大丈夫そうかな。
「本当ですよ?いざとなったら、砂でも何でも使って身を守ってくださいね」
まだちょっと心配で念を押してしまう。殿下はパッと顔を明るくした。
「あの砂ね!是非真似したいよ!隠し持っていたの?」
「これです。宜しければ……」
僕が兄上に手渡した砂入りの皮袋がネイサン殿下に渡された。
「あ、じゃあ、これもよかったらどうぞ……」
僕は、赤い粉が入った小さい皮袋を差し出した。大戦の時にいざとなった時に兄上にすぐ渡せるように用意しておいたんだ。
「それは……?」
僕が差し出した皮袋を見て、ネイサン殿下が首を傾げた。
「赤い粉で「それはダメだって!」」
僕が答えようとしたら被せるように兄上が焦った声で言う。
不思議そうな顔をする殿下に、兄上が赤い粉はとても刺激が強くて、ダメージが大きいから無闇に使うべきではないものだと説明をした。
「今日のような模擬戦などで使うべきではないものです」
「では、魔獣相手なら使っても良いものかな?」
「魔獣にもよります。刺激で暴れて返って危険になる場合もあると思います」
「なるほど」
ネイサン殿下は、ヒョイと僕の手から赤い粉が入った皮袋をつまみ上げた。
「受け取っておくよ。使う場面がないと良いんだけど。道中、魔獣が多い場所も通るし」
「味方にかけないようにお取り扱いに気をつけてくださいね」
ネイサン殿下が受け取ってくれたので、赤い粉の皮袋はそのまま投げれば良いとか取り扱いの説明をしておいた。
その間、兄上は眉間に皺を寄せてたんだけど、万一目に入った時の注意とか、説明はちゃんとしておいた方が良いよね?
ハロルド君とは魔力水の話をした。
妹さんの病気の対策として魔力水を送ったけど、効果があったようだと返事が来たそうだ。
返事が届くのが早い。
「僕がゲンティアナに滞在している間に、追加注文をしておけって父から商業ギルド経由で連絡が来たんだ。早速、教えてもらった薬師に注文をしたよ」
商業ギルドを経由すると連絡が凄く早くできるらしい。何か魔道具を使っているのかな。
「お話」の魔道具をもっともっと強力にしたみたいなやつだろうか。
そういうの作れると良いなぁ。音を遠くまでそのまま運ぶのは難しいかなぁ。
後で研究しようっと。
それにしても、ハロルド君の妹さんの病状が改善しそうで良かった!
シェリル嬢は、ハロルド君と婚約できるように頑張るのだそうだ。
「背中を押してくれてありがとう。次に会った時には良い報告ができるようにするわ」
晴れやかな笑顔を浮かべ、途中でチラリとハロルド君と目線を交わしていた。仲良さそう!
「それより、父やナスタチウム家の騎士がごめんなさいね。
治癒の魔石に何だか拘っていて……。もしかしたら今日出発だったからフランクリンだとか負傷している騎士の回復を間に合わせたかったのかもしれないわ。」
「フッ」の騎士は、ゲンティアナに到着するまでの道中で遭遇した魔獣との戦いの時に負傷したのだそうだ。
ゲンティアナに到着するまでかなり無理をしたらしくて、怪我が悪化してなかなか治らなかったらしい。
足を引きずってたから、訓練場に来ていたのも治療してもらう目的だったのかな。
それなら治癒玉を使うとかすれば良いのに、と思ったけど治癒玉は希少だって聞いたし用意できなかったのかな。
辺境伯様は、最初、シェリル嬢が使うのではなくて、自分で治癒魔石を使いたいって言っていたみたいだから、単純に、あの「フッ」の騎士の怪我を治したかったってだけじゃないんじゃないのかもしれない。
リネリア嬢が言っていたみたいに、何か治癒魔法が気になっていたのかもしれないし、便利そうなものならもっと寄越せって言いたくて、効果を確認したかったのかもしれないな。
356
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる