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第1章
第245話 (第一章エピローグ)見送り
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遠ざかっていく馬車の列を見つめて、兄上が呟いた。
「……ふぅ~……。大騒動だったけど、最後はあっさりだな」
「あっという間だったね……」
「ああ……」
ふぅーっと兄上がもう一度深く息を吐いた。
兄上はお食事も一緒にしたりして気を遣ってたりしたから大変だったよね。
「兄上、お疲れ様でした」
「おう……。クリスもお疲れさん……、って言いたいところだけど」
頭をぐわっと手で掴まれてガシガシと捏ねられた。
「全く!赤い粉出しちまうし!危ないから使うなって言っただろうが!」
「殿下は命を狙われてるんだったら、本当に危険な時のために一応持ってた方が良いかもって思ったんだよ」
脳裏で見た光景では、ネイサン殿下が呪いの毒がついたナイフで襲い掛かられて、殿下を庇ったレオノールさんがナイフで刺されてしまった。
レオノールさんに光水や解毒治癒玉を渡しておいたけど、それは刺された後の対策だ。
ナイフを持って襲いかかってきた奴ごと跳ね除けて欲しい。元々ブローチの魔法はその状況を考慮して作ったものだけど、
更に協力に防御できないかなって思ったんだよ。
「あのスパイスに興味を持たれてもっとよこせって言われても困るだろう」
「スパイス料理のことは言ってないよ? あのスパイス売りの人って王都では売ってないの?欲しかったら行商人の人から買って貰えば良いんじゃないのかな」
「……あの商人が王都まで行っているかは、知らないけどさぁ……」
兄上はふぅーっと大きく息を吐いた。
ちょっと疲れたみたいな呆れたみたいな感じだ。
「……ごめんなさい……」
「うん?」
「赤い粉は危ないって兄上が言ってたのに。殿下に渡して良いか兄上に訊かなかったから」
「ん」
トンっと僕の背中を兄上が掌で軽く叩いた。
「……殿下は、無事に王都に帰れると良いね」
「うん……。多分、一旦、辺境伯領に向かったんじゃないかな」
「そうなの?どうして知ってるの?」
「いや、知らないけど。そんな案も出てたみたいだからさ。
各家バラバラで帰るとか。王都まで揃っていくかとか。ここからだと辺境伯領が一番近いから、まずは辺境伯領に向かったんじゃないかと思う」
「じゃあ、父上も辺境伯領に一緒に行くの?」
父上もゲンティアナの騎士と一緒に同行して行ったんだ。町外れまで見送るのかなと思ってたんだけど、もしかして辺境伯領まで一緒に向かったのかと思ってしまった。
「父上は、領境まで同行してるんだろう。ゲンティアナ領内で何かあっても対応できるようにさ」
「そうなんだ。あ!じゃあ、「お話」魔道具がどこまで繋がるか試せるかな」
父上がゲンティアナ領の端っこまで行くんだったら、その途中に何度か「お話」魔道具で連絡をしてみたら、どこまで繋がるかが確認できそうな気がする。
「なるほど……。そんな暇ないとか言われそうだけど……。ちょっと繋げてみるか」
兄上は早速「お話」の魔道具を繋げたらしい。
「もしもし?遠くまで行くなら、この会話の魔道具がどこまで繋がるか試したいって、クリスが提案したんです。
会話しなくても良いから、時間を開けて何回か連絡しても良いですか?はーい。じゃあ!」
兄上が「お話」の魔道具で父上に連絡を取ってくれたようだ。会話を切ってから、僕の方を見て親指を立てた。
「今、町を出るところらしい。周囲にわからないように、場所名だけ呟いてくれるみたいだぞ」
「やった!どこまで繋がるのか確認できるね!」
父上が「お話」の魔道具の性能検証に協力してくれそうなのでほっとしていたら、僕の「お話」魔道具が振動した。
『クリス兄様?朝食は召し上がらないの?ローレン兄様も……』
「あ!メイリ!もうこの魔道具使いこなしてる!朝食、今向かうよ!」
メイリからの連絡だった。直接使い方の説明をしていないのに、もう使いこなしていて凄いなあ!
朝食って聞いたら、急にお腹が空いてきた。
朝食前にすごく沢山のことをした気がする。
朝食を食べたら、また狩りに行くかな?ああ、もうそんなに大量の肉は必要ないんだった。
黎明の泉に毒耐性のある魔獣を狩りに行くのも、終わり?いや、毒耐性はまだまだ必要だよね。
それでも、ここ最近、狩りをしまくっていた要因のお客様が、今日帰られたんだ。
そう思うと、ちょっと寂しいような気もしてきた。
辺境伯領に寄った後は、ネイサン殿下達は王都や領地にそれぞれ戻るんだろうけれど、
学園入学の時期になったら皆王都に集まるんだよね。
王都が怖そうなところなのはおいておいて、皆無事、王都に着くと良いなぁ。
道の先にはもう殿下達が乗った馬車は見えなくなっていたけれど、彼らの無事を願いながら、道の先を見つめてからメイリと一緒に朝食を食べる為に離れに引き返した。
「……ふぅ~……。大騒動だったけど、最後はあっさりだな」
「あっという間だったね……」
「ああ……」
ふぅーっと兄上がもう一度深く息を吐いた。
兄上はお食事も一緒にしたりして気を遣ってたりしたから大変だったよね。
「兄上、お疲れ様でした」
「おう……。クリスもお疲れさん……、って言いたいところだけど」
頭をぐわっと手で掴まれてガシガシと捏ねられた。
「全く!赤い粉出しちまうし!危ないから使うなって言っただろうが!」
「殿下は命を狙われてるんだったら、本当に危険な時のために一応持ってた方が良いかもって思ったんだよ」
脳裏で見た光景では、ネイサン殿下が呪いの毒がついたナイフで襲い掛かられて、殿下を庇ったレオノールさんがナイフで刺されてしまった。
レオノールさんに光水や解毒治癒玉を渡しておいたけど、それは刺された後の対策だ。
ナイフを持って襲いかかってきた奴ごと跳ね除けて欲しい。元々ブローチの魔法はその状況を考慮して作ったものだけど、
更に協力に防御できないかなって思ったんだよ。
「あのスパイスに興味を持たれてもっとよこせって言われても困るだろう」
「スパイス料理のことは言ってないよ? あのスパイス売りの人って王都では売ってないの?欲しかったら行商人の人から買って貰えば良いんじゃないのかな」
「……あの商人が王都まで行っているかは、知らないけどさぁ……」
兄上はふぅーっと大きく息を吐いた。
ちょっと疲れたみたいな呆れたみたいな感じだ。
「……ごめんなさい……」
「うん?」
「赤い粉は危ないって兄上が言ってたのに。殿下に渡して良いか兄上に訊かなかったから」
「ん」
トンっと僕の背中を兄上が掌で軽く叩いた。
「……殿下は、無事に王都に帰れると良いね」
「うん……。多分、一旦、辺境伯領に向かったんじゃないかな」
「そうなの?どうして知ってるの?」
「いや、知らないけど。そんな案も出てたみたいだからさ。
各家バラバラで帰るとか。王都まで揃っていくかとか。ここからだと辺境伯領が一番近いから、まずは辺境伯領に向かったんじゃないかと思う」
「じゃあ、父上も辺境伯領に一緒に行くの?」
父上もゲンティアナの騎士と一緒に同行して行ったんだ。町外れまで見送るのかなと思ってたんだけど、もしかして辺境伯領まで一緒に向かったのかと思ってしまった。
「父上は、領境まで同行してるんだろう。ゲンティアナ領内で何かあっても対応できるようにさ」
「そうなんだ。あ!じゃあ、「お話」魔道具がどこまで繋がるか試せるかな」
父上がゲンティアナ領の端っこまで行くんだったら、その途中に何度か「お話」魔道具で連絡をしてみたら、どこまで繋がるかが確認できそうな気がする。
「なるほど……。そんな暇ないとか言われそうだけど……。ちょっと繋げてみるか」
兄上は早速「お話」の魔道具を繋げたらしい。
「もしもし?遠くまで行くなら、この会話の魔道具がどこまで繋がるか試したいって、クリスが提案したんです。
会話しなくても良いから、時間を開けて何回か連絡しても良いですか?はーい。じゃあ!」
兄上が「お話」の魔道具で父上に連絡を取ってくれたようだ。会話を切ってから、僕の方を見て親指を立てた。
「今、町を出るところらしい。周囲にわからないように、場所名だけ呟いてくれるみたいだぞ」
「やった!どこまで繋がるのか確認できるね!」
父上が「お話」の魔道具の性能検証に協力してくれそうなのでほっとしていたら、僕の「お話」魔道具が振動した。
『クリス兄様?朝食は召し上がらないの?ローレン兄様も……』
「あ!メイリ!もうこの魔道具使いこなしてる!朝食、今向かうよ!」
メイリからの連絡だった。直接使い方の説明をしていないのに、もう使いこなしていて凄いなあ!
朝食って聞いたら、急にお腹が空いてきた。
朝食前にすごく沢山のことをした気がする。
朝食を食べたら、また狩りに行くかな?ああ、もうそんなに大量の肉は必要ないんだった。
黎明の泉に毒耐性のある魔獣を狩りに行くのも、終わり?いや、毒耐性はまだまだ必要だよね。
それでも、ここ最近、狩りをしまくっていた要因のお客様が、今日帰られたんだ。
そう思うと、ちょっと寂しいような気もしてきた。
辺境伯領に寄った後は、ネイサン殿下達は王都や領地にそれぞれ戻るんだろうけれど、
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王都が怖そうなところなのはおいておいて、皆無事、王都に着くと良いなぁ。
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