245 / 334
第1章
第245話 (第一章エピローグ)見送り
しおりを挟む
遠ざかっていく馬車の列を見つめて、兄上が呟いた。
「……ふぅ~……。大騒動だったけど、最後はあっさりだな」
「あっという間だったね……」
「ああ……」
ふぅーっと兄上がもう一度深く息を吐いた。
兄上はお食事も一緒にしたりして気を遣ってたりしたから大変だったよね。
「兄上、お疲れ様でした」
「おう……。クリスもお疲れさん……、って言いたいところだけど」
頭をぐわっと手で掴まれてガシガシと捏ねられた。
「全く!赤い粉出しちまうし!危ないから使うなって言っただろうが!」
「殿下は命を狙われてるんだったら、本当に危険な時のために一応持ってた方が良いかもって思ったんだよ」
脳裏で見た光景では、ネイサン殿下が呪いの毒がついたナイフで襲い掛かられて、殿下を庇ったレオノールさんがナイフで刺されてしまった。
レオノールさんに光水や解毒治癒玉を渡しておいたけど、それは刺された後の対策だ。
ナイフを持って襲いかかってきた奴ごと跳ね除けて欲しい。元々ブローチの魔法はその状況を考慮して作ったものだけど、
更に協力に防御できないかなって思ったんだよ。
「あのスパイスに興味を持たれてもっとよこせって言われても困るだろう」
「スパイス料理のことは言ってないよ? あのスパイス売りの人って王都では売ってないの?欲しかったら行商人の人から買って貰えば良いんじゃないのかな」
「……あの商人が王都まで行っているかは、知らないけどさぁ……」
兄上はふぅーっと大きく息を吐いた。
ちょっと疲れたみたいな呆れたみたいな感じだ。
「……ごめんなさい……」
「うん?」
「赤い粉は危ないって兄上が言ってたのに。殿下に渡して良いか兄上に訊かなかったから」
「ん」
トンっと僕の背中を兄上が掌で軽く叩いた。
「……殿下は、無事に王都に帰れると良いね」
「うん……。多分、一旦、辺境伯領に向かったんじゃないかな」
「そうなの?どうして知ってるの?」
「いや、知らないけど。そんな案も出てたみたいだからさ。
各家バラバラで帰るとか。王都まで揃っていくかとか。ここからだと辺境伯領が一番近いから、まずは辺境伯領に向かったんじゃないかと思う」
「じゃあ、父上も辺境伯領に一緒に行くの?」
父上もゲンティアナの騎士と一緒に同行して行ったんだ。町外れまで見送るのかなと思ってたんだけど、もしかして辺境伯領まで一緒に向かったのかと思ってしまった。
「父上は、領境まで同行してるんだろう。ゲンティアナ領内で何かあっても対応できるようにさ」
「そうなんだ。あ!じゃあ、「お話」魔道具がどこまで繋がるか試せるかな」
父上がゲンティアナ領の端っこまで行くんだったら、その途中に何度か「お話」魔道具で連絡をしてみたら、どこまで繋がるかが確認できそうな気がする。
「なるほど……。そんな暇ないとか言われそうだけど……。ちょっと繋げてみるか」
兄上は早速「お話」の魔道具を繋げたらしい。
「もしもし?遠くまで行くなら、この会話の魔道具がどこまで繋がるか試したいって、クリスが提案したんです。
会話しなくても良いから、時間を開けて何回か連絡しても良いですか?はーい。じゃあ!」
兄上が「お話」の魔道具で父上に連絡を取ってくれたようだ。会話を切ってから、僕の方を見て親指を立てた。
「今、町を出るところらしい。周囲にわからないように、場所名だけ呟いてくれるみたいだぞ」
「やった!どこまで繋がるのか確認できるね!」
父上が「お話」の魔道具の性能検証に協力してくれそうなのでほっとしていたら、僕の「お話」魔道具が振動した。
『クリス兄様?朝食は召し上がらないの?ローレン兄様も……』
「あ!メイリ!もうこの魔道具使いこなしてる!朝食、今向かうよ!」
メイリからの連絡だった。直接使い方の説明をしていないのに、もう使いこなしていて凄いなあ!
朝食って聞いたら、急にお腹が空いてきた。
朝食前にすごく沢山のことをした気がする。
朝食を食べたら、また狩りに行くかな?ああ、もうそんなに大量の肉は必要ないんだった。
黎明の泉に毒耐性のある魔獣を狩りに行くのも、終わり?いや、毒耐性はまだまだ必要だよね。
それでも、ここ最近、狩りをしまくっていた要因のお客様が、今日帰られたんだ。
そう思うと、ちょっと寂しいような気もしてきた。
辺境伯領に寄った後は、ネイサン殿下達は王都や領地にそれぞれ戻るんだろうけれど、
学園入学の時期になったら皆王都に集まるんだよね。
王都が怖そうなところなのはおいておいて、皆無事、王都に着くと良いなぁ。
道の先にはもう殿下達が乗った馬車は見えなくなっていたけれど、彼らの無事を願いながら、道の先を見つめてからメイリと一緒に朝食を食べる為に離れに引き返した。
「……ふぅ~……。大騒動だったけど、最後はあっさりだな」
「あっという間だったね……」
「ああ……」
ふぅーっと兄上がもう一度深く息を吐いた。
兄上はお食事も一緒にしたりして気を遣ってたりしたから大変だったよね。
「兄上、お疲れ様でした」
「おう……。クリスもお疲れさん……、って言いたいところだけど」
頭をぐわっと手で掴まれてガシガシと捏ねられた。
「全く!赤い粉出しちまうし!危ないから使うなって言っただろうが!」
「殿下は命を狙われてるんだったら、本当に危険な時のために一応持ってた方が良いかもって思ったんだよ」
脳裏で見た光景では、ネイサン殿下が呪いの毒がついたナイフで襲い掛かられて、殿下を庇ったレオノールさんがナイフで刺されてしまった。
レオノールさんに光水や解毒治癒玉を渡しておいたけど、それは刺された後の対策だ。
ナイフを持って襲いかかってきた奴ごと跳ね除けて欲しい。元々ブローチの魔法はその状況を考慮して作ったものだけど、
更に協力に防御できないかなって思ったんだよ。
「あのスパイスに興味を持たれてもっとよこせって言われても困るだろう」
「スパイス料理のことは言ってないよ? あのスパイス売りの人って王都では売ってないの?欲しかったら行商人の人から買って貰えば良いんじゃないのかな」
「……あの商人が王都まで行っているかは、知らないけどさぁ……」
兄上はふぅーっと大きく息を吐いた。
ちょっと疲れたみたいな呆れたみたいな感じだ。
「……ごめんなさい……」
「うん?」
「赤い粉は危ないって兄上が言ってたのに。殿下に渡して良いか兄上に訊かなかったから」
「ん」
トンっと僕の背中を兄上が掌で軽く叩いた。
「……殿下は、無事に王都に帰れると良いね」
「うん……。多分、一旦、辺境伯領に向かったんじゃないかな」
「そうなの?どうして知ってるの?」
「いや、知らないけど。そんな案も出てたみたいだからさ。
各家バラバラで帰るとか。王都まで揃っていくかとか。ここからだと辺境伯領が一番近いから、まずは辺境伯領に向かったんじゃないかと思う」
「じゃあ、父上も辺境伯領に一緒に行くの?」
父上もゲンティアナの騎士と一緒に同行して行ったんだ。町外れまで見送るのかなと思ってたんだけど、もしかして辺境伯領まで一緒に向かったのかと思ってしまった。
「父上は、領境まで同行してるんだろう。ゲンティアナ領内で何かあっても対応できるようにさ」
「そうなんだ。あ!じゃあ、「お話」魔道具がどこまで繋がるか試せるかな」
父上がゲンティアナ領の端っこまで行くんだったら、その途中に何度か「お話」魔道具で連絡をしてみたら、どこまで繋がるかが確認できそうな気がする。
「なるほど……。そんな暇ないとか言われそうだけど……。ちょっと繋げてみるか」
兄上は早速「お話」の魔道具を繋げたらしい。
「もしもし?遠くまで行くなら、この会話の魔道具がどこまで繋がるか試したいって、クリスが提案したんです。
会話しなくても良いから、時間を開けて何回か連絡しても良いですか?はーい。じゃあ!」
兄上が「お話」の魔道具で父上に連絡を取ってくれたようだ。会話を切ってから、僕の方を見て親指を立てた。
「今、町を出るところらしい。周囲にわからないように、場所名だけ呟いてくれるみたいだぞ」
「やった!どこまで繋がるのか確認できるね!」
父上が「お話」の魔道具の性能検証に協力してくれそうなのでほっとしていたら、僕の「お話」魔道具が振動した。
『クリス兄様?朝食は召し上がらないの?ローレン兄様も……』
「あ!メイリ!もうこの魔道具使いこなしてる!朝食、今向かうよ!」
メイリからの連絡だった。直接使い方の説明をしていないのに、もう使いこなしていて凄いなあ!
朝食って聞いたら、急にお腹が空いてきた。
朝食前にすごく沢山のことをした気がする。
朝食を食べたら、また狩りに行くかな?ああ、もうそんなに大量の肉は必要ないんだった。
黎明の泉に毒耐性のある魔獣を狩りに行くのも、終わり?いや、毒耐性はまだまだ必要だよね。
それでも、ここ最近、狩りをしまくっていた要因のお客様が、今日帰られたんだ。
そう思うと、ちょっと寂しいような気もしてきた。
辺境伯領に寄った後は、ネイサン殿下達は王都や領地にそれぞれ戻るんだろうけれど、
学園入学の時期になったら皆王都に集まるんだよね。
王都が怖そうなところなのはおいておいて、皆無事、王都に着くと良いなぁ。
道の先にはもう殿下達が乗った馬車は見えなくなっていたけれど、彼らの無事を願いながら、道の先を見つめてからメイリと一緒に朝食を食べる為に離れに引き返した。
354
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる