転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第254話 「メッセージ」の魔道具お披露目

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「川が気になるんだったら、実際に見に行った方がクリスも安心するだろ」
「うん!ありがとう!」

兄上が一緒に川の様子を見に行ってくれる。
脳裏で見た川の光景が、この町に流れている川の上流とかでないと分かれば少し安心できるかな。
自分のところじゃなければ良いって訳じゃないんだけど、家族が危険に晒されているかどうかは大きな問題だと思う。

朝食の席、母様は普段よりゆったりと紅茶を飲んでいた。
僕が書いた河原と黒ローブの人物の絵を見せると、少し表情を曇らせた。

「高い山のようだから、この付近ではなさそうね。でも、小瓶は状況的には毒ね……。最近その話題が多いわね」
「どこだが場所……、分からない?」
「そうね……。この絵の場所の特定より、毒そのものの心配をした方が良いんじゃないかしら。
冒険者ギルドに持ち込まれた毒の元となる木の実の件もあったわね」
「紫の木の実!」

パープルヴァレートレントの木の実。呪いの毒の元になった木の実だ。冒険者ギルドに持ち込まれていたし、ゴーシュさんが飲んだ酒にも含まれていてゴーシュさんの目がチカチカしていた。
ゴーシュさんに盛られた毒については、ネイサン殿下が狙われていることと関係しているかもしれないけど、紫の木の実が冒険者ギルドに持ち込まれたという事を聞いて気になっていた。
ギルドに持ち込まれただけで町に被害があったわけじゃないけど、呪いの毒の元にもなる木の実が、ネイサン殿下のこととは直接関係ない場所でやり取りされていたんだよね。

町が狙われている可能性はあるのかな。理由はわからないけど。

「……もしも町が狙われていて、飲み水とかに毒が混ぜられているんだとしたら……。毒耐性!毒耐性の飲み物を広める?」
「そうね……。対策は少し考えましょう」

母様が優雅な手つきで水の入ったグラスを置いた。グラスの中で水面が揺れたのを見て、ちょっと思いついた。

「川に一定間隔に毒耐性の魔石を沈めておくのはどう?」
「魔石一つ辺り、どの位の効果がみこめるのかが分からないけれど、検討の余地はあるわね。でも、相当な数の魔石が必要となるわよ」
「今あるのは……」

「収納」から毒耐性の魔石を取り出した。数えてみると十五個。兄上は十八個持っていた。全部で三十三個だ。

「結構数があるのね」

テーブルの隅に積み上げた魔石を見て、母様が何か考えている様子だった。
毒の心配があるなら毒耐性魔石は沢山あった方が良いよね。

「また泉に行かないとね」

兄上を見て言うと兄上が頷いた。

毒の対策をするんだったら、この町だけじゃなくてゲンティアナ男爵領内の他の村や町にも対策が必要になってくる。
具体的にどうするかは父上が帰ってきてからの相談になるけど今出来ることと言ったら、川の様子を見に行くことと毒耐性の魔石を獲りに行くことかな。

ブブブと兄上の腕輪が音を立てた。

「おはようございます!はい、はい!……承知しました!お気をつけて!」

兄上はまた壁に向かって頭を下げながら話をしていた。癖なのかな。それとも兄上には僕に見えない何かが見えているんだろうか。
兄上は会話が終わると振り返って、僕達に笑顔を向けた。

「父上はこっちに引き返し始めてるって!戻るのは夕方かそれより早いだろうって」
「わあ、父上と一緒に夕食が食べられそうだね!」
「唐揚げにしましょうよ!」

僕が夕食の事を言うと、メイリが唐揚げをリクエストした。
父上は唐揚げ好きだからね!

「唐揚げにするなら、肉のストックがあるかジャックに確認しないと……」

兄上はチラリと本館の方に目をやった。

「……こう言う時に、すぐ連絡がつく魔道具を使えると便利だね」

ボソリと兄上が呟いたのを聞いて、僕は「メッセージ」の魔道具の事を思い出した。

「そうだ。昨日の魔道具をちょっと改良したんだけど……」

「メッセージ」の魔道具を「収納」から出したら、母様とメイリがなんだか神妙な顔をして魔道具を凝視していた。

「これ……『ちょっと』の改良に見えないけど……」
「まだ大きいかな。持ち運びしにくい?」

「メッセージ」の魔道具に恐る恐ると言った様子で手を伸ばしたメイリに尋ねた。

「ううん。凄い。本当に凄い!十分手に持てる大きさよ!」

両手で持ってゆっくりと顔に近づけてじっくりと見つめた後、パッと顔を上げて屈託のない笑顔を見せた。可愛い!
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