転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第270話 分身魔道具の使い道

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でも、今持っているもう一つの乳白色の魔石は分身魔法に使ってみたいんだよね。

小さい乳白色の魔石を手の中で転がして暫く眺めて考えて、雷魔石に分身の魔法陣を刻んでから乳白色の魔石に魔法陣を写すことにした。
雷魔石を経由すると表面には魔法陣が見えにくい上に魔石が小さくてもちゃんと転写できるというメリットがある。
白い蛇魔獣が使っていた魔法の魔法陣を思い出しながら雷魔石に魔法陣を刻んだ。
分身魔法のうち、イメージしたものを表すっていう機能の部分は「位置表示」の魔道具に使っている魔法陣で利用している。
分身の魔法陣の機能は大まかに三つ。

自分の輪郭をトレースしてイメージを作る。
作ったイメージを立体にして表示する。
作ったイメージに動きを与える。

結構複雑な魔法だ。
白い蛇魔獣が放った魔法の魔法陣は、色は単色とか簡略化している部分もあるように思う。白い蛇魔獣が作り出した分身白一色で近くで見たら、細かい部分が全然なくてのっぺりしていたからね。

このまま魔法を使うと真っ白な分身の僕が出来上がりそうな気がする。それに小さい魔石では、等身大の分身を作るのは魔力が足りなさそうだ。
少し魔法陣を弄って、表示する「分身」を掌に乗るくらいの大きさにした。動きの指定はサンプルが少なくてよくわからないから蛇魔獣が使っていた指定をそのまま使ってみた。

雷魔石に魔法陣を刻んで、乳白色の魔石にパシッと映しとる。どんな風になるのかドキドキするなぁ。

乳白色の魔石に魔力を通してみたら、魔法陣が浮かび上がってきた。

ピョン

掌を広げたくらいの大きさの白い人影がぴょんと飛び出した。床に着地してもピョンピョンと飛び跳ねる。

「わ!待って!」

ピョイン!ピョイン!

跳ねながら壁に向かっていった。

ピョイン!ピョイン!

壁に体当たりを続けて暫くしたら分身は自然に消えていった。

「……動きの指定が難しそうだな……」

白い蛇魔獣は「跳ねる」とか「真っ直ぐ向かっていく」とかの動きを指定していたんだろうと思う。
せめて「走る」とか指定したいなぁ。
いや、跳ねながら壁に突進していくくらいなら、止まっていた方が良いかな。

魔法陣の動きの指定部分の仕組みがまだイマイチよくわからなかったから、何回か見た蛇魔獣の魔法陣のうち少しずつ違う部分を弄ってみた。
結果的には、魔法陣一個では、人間が走るみたいな動作は難しいようだ。そもそも、蛇魔獣は二本足で走らないからね。

走る動作は一旦置いておいて、直立した状態でくるくるとゆっくり回転する動作を作ることができて使い道を思いついた。

「位置表示」の魔道具の追加機能で、「緊急連絡」の魔道具から連絡があった人を小さい分身の姿でポンと出すんだ。
地図の上でくるくると回ってたら、その人から連絡が来たってすぐにわかるんじゃない?

「……緊急だったら、様子がわかった方が良いか……」

実際に使っているところをイメージしてみた。例えば、強い魔獣に遭遇してしまって
怪我して必死で逃げ回っているような時、「位置表示」の魔道具には、連絡をしてきた人がクルクルと回って見えるのって、ちょっと緊張感がないんじゃない?
いっそ、その場の様子がわかった方が良いよね。

最初に考えたのは、連絡をする人の立体イメージをあらかじめ登録しておいて、「位置表示」の魔道具に連絡が来たら、設定されているイメージを使って連絡してきた人の小さい分身をくるくると回し見せるというものだった。

でもクルクルと回るのってちょっと楽しそうだし、「緊急」な時に合わないので
クルクル回るのは別で使うことにした。

どちらかというと緊急の連絡が来たら「何があったの?」って思うだろうから
倒れているのかとかその場の状況が少しでもわかる方が良いんじゃないだろうか。

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