転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第271話 「緊急連絡」魔道具の実演

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「緊急連絡」の魔道具にもう一つ魔石をつけて、位置の情報だけじゃなくて、その場の状況を送るようにしたら良い気がする。

「風魔石をもう一つ使って……」

風魔法は得意な属性だからか、魔法陣のアレンジがしやすい。それに魔力効率が良くなっている気がする。
風魔法一つで、森の位置だとか、かなり広範囲に情報を集められるし、連絡する速度も早く出来てる。
その場の状況を把握する魔法陣は、位置情報を取得する魔法陣を狭い範囲に限定して、周囲の状況の輪郭を切り取る。

魔石を中心にして周辺の人や物の輪郭を取得したら平面に圧縮。周りに木とかが多いと平面に圧縮した時に連絡した人の姿が見えなくなっちゃうから、平面に圧縮する範囲を調整する。
圧縮したイメージ絵を、試しに「位置表示」の魔道具に繋げて見てみた。

黒地に白い細かい線で絵を描いたみたいになっている。
文机の前に腰を下ろしている僕。ベッドやクローゼットも見える。顔ははっきりとは描かれていなくて、僕だということがかろうじてわかる程度だけど。
周囲の状況を切り取る範囲を狭くしたら、顔とかもっと細かく映し出せるかも。

「……うーん、一度には見られないのがなあ……」

ボードには「位置」を表示するか「状況」を表示するかのどっちかになってしまう。
あとから送られたイメージを表示してしまうんだ。
緊急の時には両方必要な情報だよね。

僕は手にしていたボードを置いて、立ち上がった。
乳白色の魔石をもう一つ使わせてもらえないか訊いてみよう。

コンコンコン

兄上の部屋の前まで行って、ノックをしたら兄上が出てきてくれた。

「会話の魔道具で呼べば良いのに」
「あっそうか。でも乳白色の魔石欲しかったし」

兄上の方が「お話」の魔道具を活用している気がする。父上や母様とも気軽に連絡しているし。
僕は自分で魔道具を作ったわりに、まだ使い慣れていないのかな。
実際、兄上に保管してた乳白色の魔石を分けてもらいたかったから、直接会いに行くのが一番だったけど、魔道具で連絡ということが選択肢に思い付いてなかったよ。

「乳白色の魔石?また何か魔道具作ってるのか?」
「うん!試してたら魔石が足りなくなっちゃって」
「……見せてみろ」
「乳白色の魔石、使っても良い?」

僕が魔道具を作っていると聞いた途端、兄上の眉間に皺が寄った。「見せろ」と言われたけど、見せたら魔石がもらえなくなっちゃうということはないか
ちょっと不安になってしまった。

「……何の魔道具を作ってるんだ」
「緊急連絡用の魔道具だよ」
「……緊急の時に光らせるとかか?」
「あ!それ良いね!」

乳白色の魔石は光属性だから、光らせることができるはずだ。魔法陣さえ分かればだけど。

「光らせるんじゃないのか」
「だって、魔法陣がわからないから」
「じゃあ、何を作ったんだよ……」

兄上が深く溜息をついた。どうやら、乳白色の魔石自体は光水を作る用に用意した分の予備があるから分けてもらえるらしい。
魔石は使っても良いから、何を作ったのか早く見せろと、兄上に急かされて僕の部屋に二人で向かった。

「……それで、『緊急連絡』の魔道具からは、魔石を中心にした周囲の状況と、位置の情報の両方を送ることができるんだけど
『位置表示』の魔道具からは、どちらか一つしか表示ができないんだ。だから、表示するところをもう一つ作るのに
魔石が足りないんだよ」

「待て待て、ちょっと待て」

「緊急連絡」の魔道具を実演して見せたら、兄上が戸惑ったような声を上げた。

「説明が分かりにくかった?離れたところでやってみた方が良いかな。
『位置表示』の魔道具を兄上の部屋に持って行ってもらって、僕がこの部屋から『緊急連絡』の魔道具を発動させてみようか」
「いや、機能自体は大体わかったんだが……」

いきなり複数の魔道具を連動させて使って見せちゃったから、伝わりにくかったかなと思ったんだけど兄上は僕の説明で理解してくれたようだ。流石兄上。

「……一晩で十年、いや二十年くらい進化してないか?」
「どういうこと?」
「会話の魔道具だけでも、この国では相当画期的な魔道具なのに……、
これ、ドラレ……、いや、GP……」

兄上が難しい顔をしてブツブツと呟き始めた。
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