272 / 334
第2章
第272話 紙に写す
しおりを挟む
「緊急連絡」の魔道具を見せたら、兄上が難しい顔をしたので、何だか不安になってきた。様子を伺うように訊いてみる。
「……使えなさそう?」
「いや、便利だよ。あったら凄く!……ただ、便利すぎて、人に知られたら欲しがって殺到しちゃうと思うよ」
あまり役に立たない魔道具だと思われたのかなと不安になって聞いてみたら、兄上は首を横に振った。
他所の貴族とかに知られたら大量に作れって言われちゃうかもってことみたいだ。
それは困る。でも、ちょっと疑問ではあるんだよね。
「蛇魔獣が使っていた魔法を元にしているだけだよ?それに風魔法を合わせてみてさ。
光魔法と風魔法が使える人がいたら、魔道具なしでできちゃうでしょ?」
一応、「緊急連絡」の魔道具を指輪の形にしたり、「位置表示」の魔道具をボードの形にはしているけど基本的に魔法陣魔石の魔法を発動させているだけだから、魔法を発する人なら魔道具は不要だ。
「王都に行ったらこんな魔法をバンバン使う人がいるんじゃないかな」
「王都はどんな進化都市だよ……。……まあ、僕も王都がどんなだか知らないけどさ……」
「ね。だって王都だよ。もっと凄い魔法や、魔道具を使ってそうだよ」
「……どうだろうな。まあ、他は知らないけど、少なくともこの辺りではない道具だと思うよ」
「……辺境伯様が欲しがったり?」
「そうそう」
兄上の話を聞いていて、辺境伯様が治癒魔石のブローチを欲しがったことを思い出した。
治癒玉だって、売られているものだから買おうと思えば買えるのに、それより小さい治癒ませきの魔道具を欲しがるくらいなんだから、便利そうなものだと、沢山作って寄越せって言われそうな気がする。
緊急の時の魔道具だから、人の役に立てた方が良いけれど、他にも作りたい魔道具が沢山あるのにひたすら同じ魔道具を作らされるとかって状況になったら嫌だな。
「……まあ、この魔道具に限った話じゃないんだよな……。今更というにはこれは突飛すぎるんだけど……。父上と母上に相談だな」
「乳白色の魔石、使って良い?このボードを二つにしたいんだ」
「……そうだな。じゃあ、本みたいにするか」
兄上の提案で、「位置表示」の魔道具は見開きの本みたいな構造にすることにした。
普段は閉じた状態で、開くと片側に位置情報が表示されて、もう片側に緊急の連絡をした人の様子が表示されるようにするんだ。
「手紙」の魔道具の機能もつけたから、文字も送ることができる。
「本の形だと、紙は間に挟むようにするのが良いのかな?」
「……どういう意味だ?」
「魔力に反応して色が変わる紙だよ。『メッセージ』を受け取った時に紙に写し出せると便利そうでしょ?」
「それファッ……」
「ファ?ほら、こうやって上に乗せたら絵が写し取れたよ」
僕は魔力に反応する紙をボードの上に置いてみた。置いた途端、ボードに表示されていた位置情報の地図を写しとるように紙に線が描かれていく。思った以上にしっかりと写し取ってくれるようだ。
「……あー、これはボードとボードの間に挟んだら、両方の絵が重なって写っちゃうか」
ボードに描かれた絵が写し出された紙をペラっと手に取ると、紙の裏面からの魔力で表の色も変わっている。
本を見開いたみたいな両方のページに「絵」を映し出す魔道具だと、間に魔力に反応する紙を挟んだら両方の「絵」が重なってしまうことになる。
「挟むのはダメだね……。でも紙をしっかり固定しないと、ペラペラしたところがちゃんと写らないし……」
試しにボードの上に置いてみただけなので、紙の端っこが少し丸まっていて、端っこの方は絵がブレている。
「上に板を乗せるとか……。何か載せられるようなもの……」
「ああ……、紙に写し出せるのは分かったから……」
絵を描くのに使っている板の中でちょうど良い大きさのものがないか探そうとしたら
兄上が止めた。
「とんでもない機能の魔道具なのは分かった。何度も言っているけど、もう一度言うぞ……」
魔道具を作ったら必ず父上、母様、兄上に見せることとか許可なく家族以外に見せることは禁止。ボブやジャック、マーサに見せる時にも、ちゃんと許可を得てからにすることとか色々注意を聞かされた。そして、やっと予備の乳白色の魔石を貰うことができた。
「……使えなさそう?」
「いや、便利だよ。あったら凄く!……ただ、便利すぎて、人に知られたら欲しがって殺到しちゃうと思うよ」
あまり役に立たない魔道具だと思われたのかなと不安になって聞いてみたら、兄上は首を横に振った。
他所の貴族とかに知られたら大量に作れって言われちゃうかもってことみたいだ。
それは困る。でも、ちょっと疑問ではあるんだよね。
「蛇魔獣が使っていた魔法を元にしているだけだよ?それに風魔法を合わせてみてさ。
光魔法と風魔法が使える人がいたら、魔道具なしでできちゃうでしょ?」
一応、「緊急連絡」の魔道具を指輪の形にしたり、「位置表示」の魔道具をボードの形にはしているけど基本的に魔法陣魔石の魔法を発動させているだけだから、魔法を発する人なら魔道具は不要だ。
「王都に行ったらこんな魔法をバンバン使う人がいるんじゃないかな」
「王都はどんな進化都市だよ……。……まあ、僕も王都がどんなだか知らないけどさ……」
「ね。だって王都だよ。もっと凄い魔法や、魔道具を使ってそうだよ」
「……どうだろうな。まあ、他は知らないけど、少なくともこの辺りではない道具だと思うよ」
「……辺境伯様が欲しがったり?」
「そうそう」
兄上の話を聞いていて、辺境伯様が治癒魔石のブローチを欲しがったことを思い出した。
治癒玉だって、売られているものだから買おうと思えば買えるのに、それより小さい治癒ませきの魔道具を欲しがるくらいなんだから、便利そうなものだと、沢山作って寄越せって言われそうな気がする。
緊急の時の魔道具だから、人の役に立てた方が良いけれど、他にも作りたい魔道具が沢山あるのにひたすら同じ魔道具を作らされるとかって状況になったら嫌だな。
「……まあ、この魔道具に限った話じゃないんだよな……。今更というにはこれは突飛すぎるんだけど……。父上と母上に相談だな」
「乳白色の魔石、使って良い?このボードを二つにしたいんだ」
「……そうだな。じゃあ、本みたいにするか」
兄上の提案で、「位置表示」の魔道具は見開きの本みたいな構造にすることにした。
普段は閉じた状態で、開くと片側に位置情報が表示されて、もう片側に緊急の連絡をした人の様子が表示されるようにするんだ。
「手紙」の魔道具の機能もつけたから、文字も送ることができる。
「本の形だと、紙は間に挟むようにするのが良いのかな?」
「……どういう意味だ?」
「魔力に反応して色が変わる紙だよ。『メッセージ』を受け取った時に紙に写し出せると便利そうでしょ?」
「それファッ……」
「ファ?ほら、こうやって上に乗せたら絵が写し取れたよ」
僕は魔力に反応する紙をボードの上に置いてみた。置いた途端、ボードに表示されていた位置情報の地図を写しとるように紙に線が描かれていく。思った以上にしっかりと写し取ってくれるようだ。
「……あー、これはボードとボードの間に挟んだら、両方の絵が重なって写っちゃうか」
ボードに描かれた絵が写し出された紙をペラっと手に取ると、紙の裏面からの魔力で表の色も変わっている。
本を見開いたみたいな両方のページに「絵」を映し出す魔道具だと、間に魔力に反応する紙を挟んだら両方の「絵」が重なってしまうことになる。
「挟むのはダメだね……。でも紙をしっかり固定しないと、ペラペラしたところがちゃんと写らないし……」
試しにボードの上に置いてみただけなので、紙の端っこが少し丸まっていて、端っこの方は絵がブレている。
「上に板を乗せるとか……。何か載せられるようなもの……」
「ああ……、紙に写し出せるのは分かったから……」
絵を描くのに使っている板の中でちょうど良い大きさのものがないか探そうとしたら
兄上が止めた。
「とんでもない機能の魔道具なのは分かった。何度も言っているけど、もう一度言うぞ……」
魔道具を作ったら必ず父上、母様、兄上に見せることとか許可なく家族以外に見せることは禁止。ボブやジャック、マーサに見せる時にも、ちゃんと許可を得てからにすることとか色々注意を聞かされた。そして、やっと予備の乳白色の魔石を貰うことができた。
318
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる