転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第272話 紙に写す

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「緊急連絡」の魔道具を見せたら、兄上が難しい顔をしたので、何だか不安になってきた。様子を伺うように訊いてみる。

「……使えなさそう?」
「いや、便利だよ。あったら凄く!……ただ、便利すぎて、人に知られたら欲しがって殺到しちゃうと思うよ」

あまり役に立たない魔道具だと思われたのかなと不安になって聞いてみたら、兄上は首を横に振った。
他所の貴族とかに知られたら大量に作れって言われちゃうかもってことみたいだ。
それは困る。でも、ちょっと疑問ではあるんだよね。

「蛇魔獣が使っていた魔法を元にしているだけだよ?それに風魔法を合わせてみてさ。
光魔法と風魔法が使える人がいたら、魔道具なしでできちゃうでしょ?」

一応、「緊急連絡」の魔道具を指輪の形にしたり、「位置表示」の魔道具をボードの形にはしているけど基本的に魔法陣魔石の魔法を発動させているだけだから、魔法を発する人なら魔道具は不要だ。

「王都に行ったらこんな魔法をバンバン使う人がいるんじゃないかな」
「王都はどんな進化都市だよ……。……まあ、僕も王都がどんなだか知らないけどさ……」
「ね。だって王都だよ。もっと凄い魔法や、魔道具を使ってそうだよ」
「……どうだろうな。まあ、他は知らないけど、少なくともこの辺りではない道具だと思うよ」
「……辺境伯様が欲しがったり?」
「そうそう」

兄上の話を聞いていて、辺境伯様が治癒魔石のブローチを欲しがったことを思い出した。
治癒玉だって、売られているものだから買おうと思えば買えるのに、それより小さい治癒ませきの魔道具を欲しがるくらいなんだから、便利そうなものだと、沢山作って寄越せって言われそうな気がする。

緊急の時の魔道具だから、人の役に立てた方が良いけれど、他にも作りたい魔道具が沢山あるのにひたすら同じ魔道具を作らされるとかって状況になったら嫌だな。

「……まあ、この魔道具に限った話じゃないんだよな……。今更というにはこれは突飛すぎるんだけど……。父上と母上に相談だな」
「乳白色の魔石、使って良い?このボードを二つにしたいんだ」
「……そうだな。じゃあ、本みたいにするか」

兄上の提案で、「位置表示」の魔道具は見開きの本みたいな構造にすることにした。
普段は閉じた状態で、開くと片側に位置情報が表示されて、もう片側に緊急の連絡をした人の様子が表示されるようにするんだ。
「手紙」の魔道具の機能もつけたから、文字も送ることができる。

「本の形だと、紙は間に挟むようにするのが良いのかな?」
「……どういう意味だ?」
「魔力に反応して色が変わる紙だよ。『メッセージ』を受け取った時に紙に写し出せると便利そうでしょ?」
「それファッ……」
「ファ?ほら、こうやって上に乗せたら絵が写し取れたよ」

僕は魔力に反応する紙をボードの上に置いてみた。置いた途端、ボードに表示されていた位置情報の地図を写しとるように紙に線が描かれていく。思った以上にしっかりと写し取ってくれるようだ。

「……あー、これはボードとボードの間に挟んだら、両方の絵が重なって写っちゃうか」

ボードに描かれた絵が写し出された紙をペラっと手に取ると、紙の裏面からの魔力で表の色も変わっている。
本を見開いたみたいな両方のページに「絵」を映し出す魔道具だと、間に魔力に反応する紙を挟んだら両方の「絵」が重なってしまうことになる。

「挟むのはダメだね……。でも紙をしっかり固定しないと、ペラペラしたところがちゃんと写らないし……」

試しにボードの上に置いてみただけなので、紙の端っこが少し丸まっていて、端っこの方は絵がブレている。

「上に板を乗せるとか……。何か載せられるようなもの……」
「ああ……、紙に写し出せるのは分かったから……」

絵を描くのに使っている板の中でちょうど良い大きさのものがないか探そうとしたら
兄上が止めた。

「とんでもない機能の魔道具なのは分かった。何度も言っているけど、もう一度言うぞ……」

魔道具を作ったら必ず父上、母様、兄上に見せることとか許可なく家族以外に見せることは禁止。ボブやジャック、マーサに見せる時にも、ちゃんと許可を得てからにすることとか色々注意を聞かされた。そして、やっと予備の乳白色の魔石を貰うことができた。
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