乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

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第二十二章 前を向く為にも

透明になる呪い

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 私はとある違和感に気付いた。

 それは、自身の手が時々消えるように見えなくなる事だ。

 不安になり鏡を見ると、手だけじゃなく全体が消えかかっているようだ。

 困ってしまった。これだとアレン様に相談する前に完全に見えなくなってしまう。

 突然見えなくなってしまったら学園中が混乱するだろうし、また変な噂になるかも知れない。

 早退して女子寮の自分の寝室に閉じこもっているのだけども……。

「これって、あれよね。ゲームの中盤ぐらいに悪役令嬢がヒロインにかけた呪い。しかも厄介な事に透明になった自身を相手に気付かれたら死んでしまうという……」

 もうすぐでゲーム終盤になろうとしていたから忘れてた。
 ゲームとのストーリーが変わってるから、もしかしたらあべこべになってる事も視野に入れとくべきだった。

 ヒロインの死亡エンドは悪役令嬢とのルートになる訳だし、呪いでは死なない。

 確か、ゲームでは呪いで途方に暮れているヒロインは不思議な空間に迷い込み、そこで『聖なる乙女』と出逢うのよね。

 そこで呪いをかけたのが悪役令嬢と知り、悪魔との契約してる事も知った。

「呪いを解く方法もそこで教えてくれるのよね」

 呪いを解く方法は、悪魔と等価交換する。但し、契約者に悟られてはいけない。

 交換するのは決まってるのよね。悪魔が好きそうなモノを。

 決行は今夜。先延ばしにしてしまえば私はどうなるか分からないし、契約者の命も危ういかもしれない。

 私を恨んでるのなら、ちゃんと逃げずに聞いたい。何となくの想像はつくんだけどね。

 自分の幸せを見つけてほしいと心から思う。

 ーーーーーーーーー

 夜……深夜にもなるとほとんど薄く透明に近くなっていた。目を堪えて見れば何となくそこに誰がいるかなというレベルだと思う。

 アイリスに心配かけちゃうといけないから羊皮紙と羽根ペンが持ててた時に書き置きしてある。

 次の朝にまで戻ってこれるか分からないからね。念の為に。

 透明になればなるほど、物は持てなくなる。また壁もすり抜けられるようになって……幽霊になった気分でちょっと複雑。

 姿も見られなくなるだろうから、私の存在が気付く人は居なくなる。寂しい。

「……あ」

 ふと、流星群を見た庭園の事を思い出して学園内に入ると思わず声を漏らした。

 深夜なのもあって人の気配は一切ないが咄嗟に口を抑える。

 姿が見えなくなって触れられなくなっただけで声は第三者の耳にも届く。

 …………アレン様は、寝てるのかな。深夜なのだから寝てても不思議じゃない。

 そんな事を考えていたらいつの間にか庭園前についていた。

 綺麗な花が咲き誇る庭園を見たくて私は中に入る。

 もしかしたらアレン様がいるのかもとか、変な期待はしていない。

 していないのに、していないはずなのに……庭園のガゼボに備えてある椅子に腰を下ろしているアレン様と、背後で書類を持っているキースさんがいた。

「ここで作業してるとお風邪を引きますよ?」
「いや、ここがいい。ここは……癒されるからな。疲れを感じた度に来るよりも最初っから癒されながら作業した方が仕事も捗るだろ」
「許可とってるとはいえ……ここで度々作業されるとこちらとしても困るんですよ。ここは少し肌寒い」
「それは、キースが暖かい場所に行きたいだけだろ。悪いな。俺はここで作業する。それが嫌だったら部屋で待機してな」
「出来ないの、知っててそんな事言ってるんですか?」

 そんな二人のやり取りを辛うじて聞き取れるか聞き取れないかの場所で聞いていた。

 声をかけたい気持ちを抑えて、庭園を出ようとしたら突然アレン様の手から何かが落ちた。

 何事だろうかと私は歩みを止める。

「しまった。無くしてしまったか」
「探します。何を無くしたんですか?」
「いや、たいしたモノじゃないさ……そうだなただのお守りだから。クロエ様から貰ったのだが、俺には不要だったからな」

 ……お守り。

 私は目で探すと紫色の宝石がキラッと光った。

 花壇の方に転がってしまったらしくアレン様の位置からだと花に隠れて見つけにくいだろう。

 私は気になって花に触れないように宝石を手に取ろうとした。

 が、私の手はするりと宝石からすり抜けてしまう。……忘れていた。

 元に戻ったらもう一度来てみようかな。アレン様と一緒に。

 庭園は王族の許可が必要だからね。

 ため息をついて歩き出そうとしたら宝石が消えてしまった。

 何で!?

 と、混乱してしまったが……早くしないと夜明けになってしまうと思った私は気になったが、やるべきことがあるので立ち去った。




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