乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

文字の大きさ
220 / 240
第二十一章 悪魔は嗤う

探してみるしかない

しおりを挟む
 見渡せないほどの霧。

 真っ直ぐ進むと大きな樹がある。幻影樹と呼ばれているその樹はとても懐かしく、温かい気持ちにさせてくれる。

 周りには光が私を警戒しながらもふよふよと飛んでいた。

 私は、この空間を知っていた。

「良かった……無事に元気になったようで」

 人影が見えたのでその人物に話しかける。その人物は私の方に向かって歩いてくる。姿がはっきりと見えた時に「無事に元気かは分からんよ」と、シーアさんは苦笑した。

「元気ですよ。だって魔力が安定してるんだから」

 私がそう言うと、シーアさんは嬉しそうに目を細める。

 姿勢を正して、真剣な表情になる私を見るシーアさんは何かを察したような顔付きになる。

「悪魔を封印する円盤ってご存知ですか?」
「知っている。それがなんじゃ?」
「……その円盤に悪魔だと間違えられて襲われました。私の中にある闇属性が悪魔に近いんだとか。それに……悪魔ってなんなのですか?」

 単純に負の感情が好物ってだけではなさそうな気もする。

 悪魔にしか分からない何かがあるのかも知れないけど、私は知りたいと思った。クロエ様に聞いても良かったんだけど……、悩みどころよね。アイリスの件でお世話になったばっかりなのに。

 それを言うならシーアさんもそうなんだけど……。

 シーアさんに相談しようと思ったのはクロエ様はゲームでしか悪魔を知らない。けど、シーアさんはゲームでは知らされてない事を知ってそうな気がしたんだ。

 シーアさんは私の質問に悩んでから答えた。

「闇は負の塊みたいなものじゃ。気を張らないと闇に呑み込まれる程の。悪魔も負なのじゃよ。人の負の感情から生まれた。だからこそ、人の感情に触れたいと常に願っておる。それが……人の心を蝕む結果となっても」
「負の感情があるからといって、何故触れたいと願うんですか? 普通なら心を閉じてもいいと思います」

 負には色んな感情があると思う。怒りや憎しみ、寂しさや孤独感……その現実から目を逸らし自分で逃げ道を作ったり。人嫌いになったりしてもおかしくないと私は思う。

「寂しさが強いのじゃ。愛情を常に求めている赤子と同じ」
「寂しさ、ですか。私は以前に悪魔に会いました。ただ……本当の姿ではありませんでしたが」
「うむ。本来、悪魔は異界にいる存在じゃ。それが何故か現れるというのは異例じゃな」
「誰かが呼び寄せた……とか?」
「……その可能性があるのぉ」

 ふと、マテオ様の顔が浮かんだが、きっとマテオ様では無いと思うのでその考えを否定するように首を左右に振った。

 マテオ様は悪魔に魅入られた人だと思う。けど、悪魔を呼び寄せる……つまり召喚だとすれば、強い恨みの念が必要になる。

 禍々しいオーラは見えたけど、まだ弱かった。召喚した人物ならばもっとオーラに呑み込まれてもおかしくはないのよ。

 多分、マテオ様は……悪魔の放つ負の気に当てられた……だけ。

「探してみるしかない、かぁ」

 呼び寄せた人がいるのなら、探してみるしかない。そう思って呟いた何気ない一言だったけど、シーアさんは険しい表情になった。

「ワシの力を少しだけ貸す。無茶だけはするでないぞ」

 諦めたようにため息を吐かれ、シーアさんの手が伸び私の手を握る。

 ゆっくりと目を閉じる。

 次に目を開けると、辺りは明るくなっており、ベッドに横になっていた。

 もう朝になっていたんだ。私は夢から覚めた憂鬱感になりながらも上半身を起こした。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。 その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。 そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。 その数日後王家から正式な手紙がくる。 ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ! ※ざまぁ要素はあると思います。 ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

乙女ゲームで婚約破棄をリアルに体験するのはごめんだ

いつき
恋愛
身近に最上の推しがいたら、例え結ばれなくても人参をぶら下げた馬にでもなると言うものですよね? 両親を喪い平民から貴族になると同時に、前世で見た乙女ゲーム系アニメの最推しが義兄になったレンファラン 貴族の子女として家の為に婚姻? 前世の記憶で領の発展に貢献? 推しの役に立ちたいし、アニメ通りの婚約破棄だけは避けたいところだけれど…

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

処理中です...