乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

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第二十一章 悪魔は嗤う

恋愛ってよく分からない

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 朝、寮を出て学園に向かいながらも私は思考を巡らせる。

 何やらアイリスが嬉しそうにしていた気がするけど、今はそれどころでは無い。

 ゲーム内での悪魔は確か、悪役令嬢が呼び寄せたのよね。流れるように契約した。

 その際、術式と詠唱をしていた。

 だったらどこかに術式があるかも知れない。

 それを探してみる?

 気が遠くなる作業だから、無理だろう。

「ご機嫌よう。ソフィア様」

 不意に話しかけられ、肩が跳ねた。考えに集中しすぎてしまった。

「ご、ご機嫌よう。イリア様」

 イリア様はふふっと笑い、私の耳元に唇を近付けると小声で話しかけた。

「何故、教えてくれなかったのですか。殿下とお付き合いしているのでしょう」

 それは、どこ情報だろう……。
 どうしてそんな話が。

 困惑しているとイリア様はすかさず続けた。

「本当はお兄さ……いえ、恋バナならばいつでも聞きますわ」
「……はい、ありがとうございます?」

 状況が整理出来なくて首を傾げた。どういうこと??

「昨夜、影が薄かったですが殿下がソフィア様を横抱きしながら女子寮のエンドランスに入った所をお見かけしまして……お二人はもうそんな関係にあったなんて……ソフィア様の友人として何も聞いていなかったので寂しかったです」

 イリア様が爆弾発言をしていて、一瞬、思考が停止してしまった。

 え、誰と誰が……??

「どういうことでしょう?」
「二人は逢い引きしていたのでは?」
「逢い引きって……いやいや、何も無いですから!」
「そうなんですの?? ……ということはまだ手を出されてない。意外と小心者なのですね。助かりますけど」

 イリア様は呟いてたけど、聞き取れなかった。
 さっきまでしおらしかったというのに、いきなり満面の笑みになって私の両手を握ってきた。

「ソフィア様はまだ婚約者はいませんよね? でしたら、是非お兄様を推薦致しますわ」
「気持ちは有難いのですが……私はまだ誰とも婚約する気には」
「ソフィア様は公爵令嬢ですわ。これから沢山の縁談が来ると思いますし、それらを断り続けたら良い貴族はもう既に結婚してるか婚約者がいるかですわ。そうなると、縁談に来る殿方は訳ありになってくると思います。学園卒業前には婚約者は作った方が良いと私は思いますわ」
「そうは言っても……それならイリア様も婚約者はいませんよね」
「私は、お慕いしている殿方がいますし、なかなか振り向いては下さらないのですけどね」

 イリア様は困ったように、だけどその相手の顔を思い浮かべたのか頬を染めて薄く笑う。

「い、いるのですか!!?」

 イリア様が既に心に決めた人がいるとは思っていなくて驚いて食い気味に聞いてしまったが、恥ずかしそうに頷くイリア様は小動物を見ているようでとても可愛らしかった。

 誰なのかを聞くのは野暮な気がして、これ以上の追求はしない。気にはなるんだけどね。

「あっ、わ、私の事は良いんですわ。考えてくださいね」
「は、はい……」

 ずいっと身を乗り出すイリア様の勢いに負けて思わず頷くと、満足したのか「では、私はこれで」と言い、歩き出した。

 一人残された私は深いため息をする。婚約者、もうそろそろ決めていかないとダメなのかな。

 政略結婚もあるだろうけど、なるべくなら知らない人よりも知っている人が良いし……それに、

「恋愛ってよく分からないのよね」

 現実な恋愛や恋ってした事ない。全て乙女ゲームの知識だし、実際に私が恋をすることなんて一生無いだろうと思ってたけど、恋に悩まされる日が来るとは思わなかった。

 白い結婚は嫌だし、出来るなら私が心の底から好きになった人と結婚したい。

 確かにイケメンや美形にはドキドキするけど、それは恋としてではなく、イケメンへの耐性が無かったからだろうし。

 あれ、そういえば……、

 イリア様、アレン様が私を横抱きにしてたって言ってたけど……。

 イケメンといえばと思考をめぐらせていたら、昨日の夜の事を薄らと思い出した。

 頭を撫でられて気持ちが落ち着いてきたら途端に眠くなってそのまま眠ってしまったのだけど、まだ意識はあった。

 宙に浮く感覚がしたのを覚えてる。というか思い出した。

「……全く、俺以外の異性にこんな無防備な姿を晒さないでくれよ」

 呆れたような、だけどどこか優しめな口調で呟くアレン様。額に柔らかな感触。そして、そっと甘く囁く。

 その事を思い出して、額に手を当てて胸が高鳴った。
 顔を真っ赤にするぐらい熱を帯びる。

 感触がまだ残ってるよう気がした。

『……愛してる。誰よりもキミを、だから早く俺の元においで』

 そう言って再び額には柔らかな感触。

 それは何よりも甘い言葉で、色っぽい声だった。私は何故今まで忘れていたのだろうと自分を責めたが、それよりも何よりも……、全身から熱を帯びてるのがわかる。

 足元がふらつき、よろめいて壁に手をついた私は呟いた。

「……こんなの、反則だわ」

 乙女ゲームでは何回もアレン様に甘い言葉を囁かれて悶絶したけど、実際に言われてしまうと、悶絶所の騒ぎでは無い。

 気を抜くと、心臓が止まる!!

 昨日は多分眠さのあまり、スルーしちゃっただろうけど……思い出すと、破壊力が……しかも恥ずかしい。

 未だに高鳴る胸を抑え、自身を落ち着かせるのだった。



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