無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定

文字の大きさ
18 / 21

お披露目会。

しおりを挟む
 王城のパーティールームには国王陛下を筆頭に、第一王妃殿下、第二王妃殿下、王太子殿下、第二王子殿下、第三王子殿下、第一王女殿下、第二王女殿下、各貴族家の当主や夫人と、十歳になる王侯貴族の令息、令嬢達のお披露目会が催されている。
 勿論ミーシアお嬢様もお披露目会に参加している。
 ヒューブの今夜の仕事はミーシアお嬢様の護衛だ。各貴族家も護衛の騎士を配置しているので、ヒューブがいても悪目立ちする事はない。ないのだが、ワインに酔った五人の令息達が、

「貴様はどこの家の者だ?」

 とかなり上から目線で訊ねるのへ、

「ミルティナンド伯爵家の者です」

 と答えると、

「そうか。俺様はドバルツ侯爵家のガイル様だ。さあ、俺様の足元に跪け、平伏せ!!」

 と訳の分からない事を喚き散らし始めたので、

 ゴッ、ガッ、ガゴッ、ゴンッ、ガッ!

 それぞれの頭に拳骨を喰らわした。
 痛みに悲鳴をあげて蹲る令息達を見下ろしたヒューブは言葉でザックリと斬り捨てた。

「無位無冠のクソガキ共が生意気言うんじゃない。首を刎ねるぞ」
「だ、黙れ無礼者!俺様はドバルツ侯爵家の「馬鹿者が!!」ち、父上!?」

 ドバルツ侯爵家のガイルが父上と呼ぶからにはこの男性がドバルツ侯爵なのだろう。
 ドバルツ侯爵はヒューブよりも強い拳骨をガイルに喰らわした。
 鈍い音とともにガイルが悲鳴をあげた。

「馬鹿者が!命の恩人に対して何という無礼を働くのだ!恥を知れ、恥を!!」
「い、命の恩人?この者が?」

 ガイルの疑問は尤もだ。
 何故ならヒューブも何の事か覚えがなかったからだ。
 それを察したのだろう、ドバルツ侯爵が苦笑いを浮かべた。

「今から五年前にオーガの群れに襲われていたところを助けてくれただろう」

(五年前?オーガの群れ…ッ!!)

 思い出した。
 ロッド村に住んでいた時に山で狩りをしていた時、街道のほうから悲鳴と怒号が混じり合った声と獣の唸り声が聞こえてきたので駆けつけると、貴族の馬車が27体のオーガの群れに襲われているのに出会した。
 護衛の騎士達が奮戦するも、劣勢なのは明らかで、既に討ち死にしている騎士もいた。
 これはマズいと思って弓矢で援護する。放たれる矢はオーガの目に吸い込まれるように突き立ち、眼球を貫き、脳にまで達したようで矢を射るたびにバタバタと斃れていった。
 弓矢の援護に勇気付けられたのか、劣勢だった騎士達が勢いを取り戻してオーガに斬り込んでいった。
 暫くして全てのオーガを斃しきると、安堵のあまりに騎士達はその場に座り込んだ。
 馬車から降りてきて深々と頭を下げて礼を言う貴族の名前は覚えていなかったが、あの時の貴族がドバルツ侯爵だったようだ。

「あの時の貴族様がドバルツ侯爵様だったのですね」 
「ああ。久しぶりだね。うん。あの時も強かったが、更に強くなったみたいだね。それに比べて家のバカ息子は本当に馬鹿者だ。命の恩人に対してこのような無礼な真似をするとは…その徽章を見るに君も貴族になったようだね」
「はい。名誉爵位ですが、ミルフィナンド伯爵家の寄り子で騎士爵です」
「そうか。名誉騎士爵家の当主か。それなら尚更謝罪しなければならないな。クライスト卿。申し訳ない。ミルフィナンド伯にも謝罪を申し上げる」

 ヒューブとミルフィナンド伯爵は謝罪を受け取り、「子供のした事だから」と問題視しないと伝えた。
 ドバルツ侯爵は、

「感謝する。それにしてももう一度教育が必要みたいだな」

 感謝しつつも、息子のガイルをギロっと睨みつけた。
 ヒューブはと言えば、あの時の聡明で大人しかった少年の性格がこうまで捻れてしまうとは、どこで教育を間違えたのかと不思議で仕方なかった。
 うんうんと小さく唸りつつ周りを見たその時、ミーシアお嬢様に王城メイドが近付いていくのが目に留まった。そのメイドはグラスを持っている。ミーシアお嬢様がワインのお代わりでも頼んだのかと思ったが、ミーシアお嬢様のグラスにはまだワインが半分以上残っている。
 不審に思って密かに【鑑定】してみると、

『アネッサ・バグラー。シンドリア帝国諜報部隊スコーピオンの工作員。帝国陸軍大将ローマン・フォン・ビット・ネガシー侯爵から、ミルティナンド伯爵家の縁者への暗殺命令を受けている。グラスの中のワインにはデポネタの毒が入っている』

 瞬間。

「【チェーンマナバインド】!!」

 ヒューブの手から魔力の鎖が放たれ、アネッサ・バグラーを縛り上げた。
 パーティールームにいた近衛騎士達や各貴族家の護衛騎士達が何事かと剣の柄に手をかけたが、

「その者はシンドリア帝国諜報部隊の工作員だ!ワイングラスにはデポネタの毒が入っている。近衛の騎士よ、その者を拘束せよ!!」

 その叫び声を聞いた国王陛下が近衛騎士に拘束するように命じたが、その工作員の口からゴポゴポという音とともに大量の血が溢れ出した。
 しまったと思っても後の祭り。
 どうやら口の中に自決用の毒を仕込んでいたようだ。
 これでは尋問のしようもない。
 何のためにミーシアお嬢様を暗殺しようとしたのかも分からずじまいとなり、この怒りの捌け口が無くなったので、更にイライラする結果となってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラストダンジョンで勇者パーティーに捨てられたから、あたしお家に帰りたいです。

黒巻雷鳴
ファンタジー
天上界と地上界、そして魔界を大崩壊から救うため、勇者マルス一行は長き冒険の末に異次元空間エレロイダへと続く《禁忌の扉》をひらいた。 だがここにきて、運命の歯車がふたたび動きだす。 大邪神ダ=ズールとの最終決戦を間近にして新しく仲間になった暗黒騎士ヴァインの加入により、黒魔導師の少女ロアがパーティーから外されてしまったのだ。 闇の力が蔓延るラストダンジョンで、たったひとりぼっち──絶望と悲しみのなか、果たしてロアは、最凶クラスの魔物たちの巣窟から無傷で生還できるのだろうか? ※無断転載禁止

異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです

青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。 混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。 もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。 「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」 思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。 その時、見知らぬ声が響く。 「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」 これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語

社畜だった俺、最弱のダンジョンマスターに転生したので、冒険者を癒やす喫茶店ダンジョンを経営します

☆ほしい
ファンタジー
過労死した俺が目を覚ますと、そこは異世界のダンジョンコアの前だった。 どうやら俺は、ダンジョンマスターとして転生したらしい。 だが、与えられた俺のダンジョンは最低ランクのF級。魔力を生み出す力は弱く、生み出せる魔物もスライムやゴブリンといった最弱クラスばかり。これでは、冒険者を呼び込んで魔力を得るなんて夢のまた夢だ。 絶望する俺だったが、ダンジョンの創造機能を使えば、内装を自由にデザインできることに気づく。 「……そうだ、喫茶店を開こう」 前世で叶えられなかった夢。俺は戦闘を放棄し、ダンジョンの入り口に木造の喫茶店『やすらぎの隠れ家』を作り上げた。メニューは、前世の知識を活かしたコーヒーと手作りケーキだけ。 ところが、そのコーヒーには異常なまでの疲労回復効果が、ケーキには一時的な能力向上効果が付与されていることが判明。噂を聞きつけた訳ありの冒険者たちが、俺のダンジョンに癒やしを求めて集い始めるのだった。

凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜

小林一咲
ファンタジー
「普通がいちばん」と教え込まれてきた佐藤啓二は、日本の平均寿命である81歳で平凡な一生を終えた。 死因は癌だった。 癌による全死亡者を占める割合は24.6パーセントと第一位である。 そんな彼にも唯一「普通では無いこと」が起きた。 死後の世界へ導かれ、女神の御前にやってくると突然異世界への転生を言い渡される。 それも生前の魂、記憶や未来の可能性すらも次の世界へと引き継ぐと言うのだ。 啓二は前世でもそれなりにアニメや漫画を嗜んでいたが、こんな展開には覚えがない。 挙げ句の果てには「質問は一切受け付けない」と言われる始末で、あれよあれよという間に異世界へと転生を果たしたのだった。 インヒター王国の外、漁業が盛んな街オームで平凡な家庭に産まれ落ちた啓二は『バルト・クラスト』という新しい名を受けた。 そうして、しばらく経った頃に自身の平凡すぎるステータスとおかしなスキルがある事に気がつく――。 これはある平凡すぎる男が異世界へ転生し、その普通で非凡な力で人生を謳歌する物語である。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。  睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?  そんな男の二重生活の冒険譚です。  毎週水曜日午後8時に投稿予定です。

処理中です...