無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定

文字の大きさ
19 / 45

王家応接室にて。

しおりを挟む
 ミルフィナンド伯爵家令嬢ミーシア嬢が王城パーティールームでシンドリア帝国の工作員に毒殺されそうになるという大事件が発生したため、パーティールームからマリオン・フォン・バルンザ・ルーベック宰相侯爵、ミルフィナンド伯爵家一家とライズ・フォン・ドバルツ・ローデンス侯爵とヒューブが王家応接室に呼ばれた。
 怖い物無しのヒューブだが、さすがに一国の国王陛下の御前というので直立不動でミルフィナンド伯爵の後ろに立っていた。

「ブライ伯よ。何か心当たりはないか?」
「…やはり、十五年前の事かと」
「それしかないか。帝国もしつこいと言うか執念深いと言うか…はぁ。面倒な」

 ドバルツ侯爵も溜め息をついた。
 今から十五年前、フューネン王国は隣国のシンドリア帝国と戦争をしていた。当時辺境伯であったドバルツ侯爵と共に当時、ドバルツ辺境伯家の寄子子爵だったミルフィナンド伯爵家が死に物狂いで戦い、シンドリア帝国陸軍三万の内、一万二千を討ち取り、帝国陸軍の侵攻を喰い止め、撤退していく帝国陸軍将兵に追撃までかけて討ち取った将兵の数は実に二万六千を超えていた。
 ドバルツ辺境伯領軍兵とミルフィナンド子爵家領軍兵を合わせてもやっと一万の将兵で帝国陸軍将兵三万の内、二万六千を討ち取ったのだから武勲一等ものだろう。
 ドバルツ辺境伯とミルフィナンド子爵は、その時の功績を讃えられて、ドバルツ辺境伯は侯爵へ、ミルティナンド子爵は伯爵へと陞爵し、ドバルツ新侯爵の推薦によって、ミルティナンド伯爵はドバルツ侯爵家の寄子貴族から独立して直接王家に仕える直臣貴族へと叙されたのだとか。
 まあ、二万六千もの将兵を討ち取られたのだがら、恨み骨髄、何年経とうとしても忘れられるわけがない。
 分かってはいるが、それならドバルツ侯爵かミルフィナンド伯爵本人を暗殺すれば良いだけなのに、何の罪咎も無いミーシアお嬢様を暗殺しようとは…。
 戦場に立ち、相手を殺そうとするのなら、当然殺される覚悟はあったはず。それに戦場における討った討たれたは武人の習いであるので、今回の事は武の道を歩む者としては到底看過する事はできない。この仕返しをどうするか、いっその事帝国を滅ぼしてしまえば後腐れなくお終いだろう。
 そう考えていたら、

「ヒューブ!!」

 ミルフィナンド伯爵が真っ青な顔で叫んだ。
 何事かと見ると、応接室にいる者全員が顔を真っ青にしながらカタカタと震えていた。
 どうやら無意識のうちに殺気を放っていたようだ。

「申し訳ございません。つい、うっかり」

 さすがに国王陛下をも震え上がらせるくらいの殺気を放ってしまったので、何らかの処罰が下されるのだろう。
 自分一人だけなら逃げ切るだけの力はあるが、それをすればミルフィナンド伯爵様に迷惑が及ぶ事になるのだけは絶対に避けたい。

「畏れながら申し上げます。只今の事は私個人の不始末にございますれば、ミルフィナンド伯爵様にはお咎めなきようお願い致します」

 ヒューブはあくまでも自分一人の責任であると強調した。
 すると、ダニエル国王陛下が笑った。

「ブライ伯よ。中々に面白い者を飼っているようだな?」
「はい。申し訳もございません。この者は元は冒険者でして。ゴブリンキングとゴブリンジェネラル率いる三百六十匹の群れを一人で討ち滅ぼした程の者でございまして、私が頼み込んで名誉騎士爵に叙爵させてもらったのです」
「ゴブリンキング率いる三百六十匹の群れを一人で滅ぼしたと申すか。其の方、名は何と申す」
「はい。ゲーゲンヒューバー・フォン・クライストと申します」
「ふむ。ゲーゲンヒューバーか。其方ならばこの度の始末をどうつけるな?」
「帝国との国境にある砦を潰します。やられたからには、それ相応の仕返しをするのは当たり前かと存じます」
「まあ、間違いではないが、砦を潰すとなると、かなりの将兵が必要になるな」

 どの部隊を投入すべきかと悩んでいる国王陛下は次の瞬間、耳を疑った。何があったのかというと、ヒューブが一人で砦を潰すと言い出したからだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス全員が転生して俺と彼女だけが残された件

兵藤晴佳
ファンタジー
 冬休みを目前にした田舎の高校に転校してきた美少女・綾見(あやみ)沙羅(さら)は、実は異世界から転生したお姫様だった!  異世界転生アプリでクラス全員をスマホの向こうに送り込もうとするが、ただひとり、抵抗した者がいた。  平凡に、平穏に暮らしたいだけの優等生、八十島(やそしま)栄(さかえ)。  そんな栄に惚れ込んだ沙羅は、クラス全員の魂を賭けた勝負を挑んでくる。  モブを操って転生メンバーを帰還に向けて誘導してみせろというのだ。  失敗すれば、品行方正な魂の抜け殻だけが現実世界に残される。  勝負を受ける栄だったが、沙羅は他クラスの男子の注目と、女子の嫉妬の的になる。    気になる沙羅を男子の誘惑と女子の攻撃から守り抜き、クラスの仲間を連れ戻せるか、栄!

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

超能力者なので、特別なスキルはいりません!

ごぢう だい
ファンタジー
 十歳の頃に落雷の直撃を受けた不遇の薫子は、超能力に目覚める。その後十六歳の時に二度目の落雷により、女神テテュースの導きにより、異世界へ転移してしまう。ソード&マジックの世界で、薫子が使えるのは超能力だけ。  剣も魔法も全く使えない薫子の冒険譚が始まる……。

ダンジョンで同棲生活始めました ひと回り年下の彼女と優雅に大豪邸でイチャイチャしてたら、勇者だの魔王だのと五月蝿い奴らが邪魔するんです

もぐすけ
ファンタジー
勇者に嵌められ、社会的に抹殺されてしまった元大魔法使いのライルは、普通には暮らしていけなくなり、ダンジョンのセーフティゾーンでホームレス生活を続けていた。 ある日、冒険者に襲われた少女ルシアがセーフティゾーンに逃げ込んできた。ライルは少女に頼まれ、冒険者を撃退したのだが、少女もダンジョン外で貧困生活を送っていたため、そのままセーフティゾーンで暮らすと言い出した。 ライルとルシアの奇妙な共同生活が始まった。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

処理中です...